第19話

 会議が始まった。まずはアロイジウスの魔法研究から始まり、ジークリートが国境付近の治安やソティアラとアルガナントの情勢を報告した。そして昔から花を育てるのが好きだった過去を汲んでもらい野菜の苗の品種改良を任されたリアはその報告をする。


「今回の品種改良には降水量が少ない土地でも育つように乾燥に強い植物の遺伝子を組み込んでみました。先日配ったばかりでまだ報告はありませんが、いい結果が見込めると思います。地域別に違う遺伝子を組み込んだので完成が遅くなり申し訳ございません」


 宰相が頷き、リアの資料を読みこう言った。


「地域により寒暖差と土の状態が違うことを考えれば地域ごとに違う植物を配るのは妥当だろう。問題はさまざまな植物の特性を調べて遺伝子操作をするのは苦労したようだな。よくやり遂げてくれた。これはダリアステラの食糧問題を解決する第一歩だ」


「もったいなきお言葉。さらに精進いたします」


「仕事がひと段落したらナーティアの視察を新たに頼む。詳しくはジークリートに聞きなさい」


「かしこまりました」


 リアはすべて報告したので椅子に座る。宰相が会議の終了させようとしたその時、会議室の扉がバンっと乱暴に開けられた。


「皇帝のこの私を差し置いてなぜ会議を終わらせようとしている?」


 会議室にいる全員が跪き冷や汗を垂らす。現皇帝セルゲイ・D・モンタナードは残酷な暴君と恐れられている。下手したら首と胴体が泣き別れになる。そうやって三大将軍はころころ変わる。だからリアは三大将軍の一人になれたのだ。


「ダリアステラの太陽、皇帝陛下にご挨拶申し上げます」


「新参者のマグノリアという女はいるか?」


 リアはビクッと震えた。なにかやらかしたか?粗相をしたか?と冷や汗が背中を流れた。生きた心地がしない。皇帝はこう告げた。


「マグノリアよ。ナーティアへ赴きソティアラの騎士や警備状況、そして攻め込むならどこからがいいか調べてこい。欲しくなった」


 なんと自分勝手な理由だと思いながらその任を受けた。口答えは宰相であっても許されない。宰相は拳をぎゅっと握り怒りに耐えている。そして皇帝は会議室を出る直前にリアを指さし言った。


「おっと忘れていた。皇太子が貴様を探していた」


 皇帝は嵐のように去っていった。会議室にいるすべての者が安堵したがリアはそれどころじゃない。休暇は表向きで完全な仕事じゃん!!と心の中で悪態をついた。ジークリートはリアの肩をポンとたたいた。


「視察が終われば休暇だ。あんまり気を張るなよ」


 リアは頷き、宰相は会議を終わらせた。冷や汗をかきすぎて気持ち悪いが皇太子が探していたとなると早く行かねばと皇太子宮に急いだ。

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君は花のように 恋華 @renka-m

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