第14話
次の日、ジョシュアが着替えと食事を持ってきた。人攫いである彼はリアという商品を一番良い状態にさせ値が少しでも上がるようにと躍起になっているようだ。食事は栄養のある食材が使われている。簡易ベッドや毛布、クッションそして退屈しないように本まで与えられた。本は王子様が惚れた女を助けに行く話だった。
「何日ほどここにいるのですか?」
素朴な疑問をジョシュアにぶつけた。ジョシュアはソファに寝転がり本を読んでいて視線はそのままに答えた。
「四日後にオークションがある。それまで少しでも太ってもらう。痩せすぎだ」
お金のために嫁いだのだから今のモラレス家は資金難である。栄養のある食材は兄たちに回されるのでモラレス家の女たちは痩せすぎなのだろう。アルガナントは大体男が優先される。
「一応貴族だから心配ないと思うが、礼儀作法忘れんなよ。優しいお方なら許してもらえるが鞭で打たれる場合もある」
それはためになることを聞いた。鞭で打たれるのはごめんだとリアは思った。わかりましたと返事をしようと顔をあげるとジョシュアが寝転んでいるソファの後ろに真っ黒で仮面をつけた人間が二人居た。リアはびっくりして声を上げ身構えた、その声にジョシュアは後ろを見た。
「何者だ!?」
懐の魔法石を取り出し構える。今まで気づかなかった時点で相当の魔法使いだろうとジョシュアは考えたがどんな相手だろうとも関係ない金のためには戦わなければならない。
「君の商品を奪いに来た訳ではない。ただオークションにかける前にその少女を買おうと思って訪ねた」
「はぁ?今買わなくてもオークションで競り落とせばいいだろ?」
「もしオークションにその少女を追う者が居たら、我々の身元がバレてしまう可能性もある。それは避けたい。勿論満足する値で買い取ろう」
仮面の人たちは何かをジョシュアに見せ、鞄を手渡した。するとジョシュアは深々と頭を下げて仮面の人たちにごまをすり始め、それを見たリアは自分に相当な値段がついていると確信した。仮面の人たちはこちらへ来て仮面をとった。微笑んでいるが感情が読めないただならぬ雰囲気の初老の男性とまだ若い大きな身体の無表情の青年がこちらを見た。
「商談は成立した。君は今から私が育てる。ついてきなさい」
声だけでこんなに威圧感がある人間を初めて見てリアは縮こまった。大きな身体の青年はため息をついて縮こまっているリアの目線の高さにしゃがみ込みこう言った。
「これからこの方が君の父上だ」
初老の男性もしゃがみ、リアに笑いかけた。今度は怖がらせないように気を遣ってくれていることが分かり少し安心する。初老の男性はリアに言い聞かせるように
「そうだ。これから私は父上に、そしてこの子はジークリート。君の兄上だ。そして私はダリアステラの宰相のグレゴール・ブルツェンスカだ」
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