第6話


 淵から渓谷の入り口に戻ると、昨晩話をしたお爺さんが居た。

「これからどこへ行くと?」

「わかりません、でも」

 何かが解決した訳では無かった。だけど、この旅に出て少し、自分のことを知れた気がする。

 それをお爺さんに伝えたかった。

「どこへ行っても、何をしていても、道は続いてるんだなってわかって」

 我ながらちょっと詩的な表現すぎるかなと思い、照れ臭くて笑ったら、お爺さんも笑顔になってくれた。

「良かった」

 お爺さんは、私の目を真直ぐに見て言った。

「きっとそこで止まってしまったら、間違いを間違いのまま、責め続けてしまう」

 お爺さんは今度は少し寂しそうに笑った。そんな思いはして欲しくない、そう言ってくれている気がした。

「歩けるうちは歩きなさい。いつか、そんなこともあったなと笑えるように。それがあったからこそ、今の自分があると、思えるように」

 素敵な言葉だ。きっとこの先の人生において、宝物になる言葉だと思った。そう思える自分が嬉しかった。

 私はお爺さんにお礼を言って、次の美しい景色を探すために、また歩き始めた。

(完)

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(仮) 香坂翼 @kousaka_tubasaa

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