第3話
目を覚ますといつもの白い天井だった。
眠い目をこすりながら身体を起こす。
「ふぅ・・・」
窓の外の景色は清々しいほどの青空で、
昨日まで満開であった桜も少しずつ散っている。
「桜の花が散るのってある意味命が散っているのよね」
一瞬風が吹いたと思えば
開いた窓の間から桜の花弁が入ってきた。
彼女の手のひらに導かれたように花弁が舞い落ちてきた。
「沢山の花を咲かせるけれど散る時は一瞬」
「私もそんな風に散りたい」
桜の花弁を大切そうに本に挟み、
太ももの上に置くと
日課の日記を書く為に机の上にPCを置く。
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〇月〇日 〇曜日
昨日まで満開だった桜も散り始めました。
夏になれば桜色に染っていた木々も緑色に染まるのかなぁと思ったら、とても楽しみです。
夏になれば、体調も少しは良くなるかな。
7月には七夕もあるし、身体が少しでも楽になりますようにとお願いしようかな。
病室から天の川が見えたらいいな。
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タイピング音が病室に響く。
胸の中では「夏までもつのだろうか」と
不安が募る。
担当の先生は、”あと3年”と言っていたけど
正直、自分の体力がそこまでもつのか自信が無いのだ。
明らかに、出来ることが減ってきている。
だからこそ、手が動くうちに。
意識があるうちに。
生きている証を、残さねば。
この鼓動が動いてるうちに
胸の中にある言葉を残さなければ。
「書き終わった・・・」
また一眠り。
夢の中でまた幸せな夢を見よう。
「空白」 紅月 @kazh0604
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