第2話
〇月〇日〇曜日
今日は体調のいい日でした。
窓の外は桜が咲いていて私は
ベッドに寝ているから下の景色は見えなかったけど、子供達の元気に遊ぶ声が聞こえて
何だか私まで元気を貰えた日でした。
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日記を付け終えた彼女は、深呼吸をした。
微かな胸の違和感も入退院を繰り返した彼女にとってはもう慣れっこだった。
PCのフォルダをクリックしてみると日付順に並んだ書式が現れた。
入退院を繰り返した数だけ、彼女のPCに
日記が追加されていく。
最近の彼女の体調はあまり良くなく、
退院出来ても、直ぐに体調を崩して病院に
戻ってきてしまっていた。
「またこの景色かぁ・・・」
「また良くなったらお家に戻れるよ。元気出して。」
ふと声がして顔をあげると、彼女の担当看護師である”土屋 ”がいた。
「そうだといいけどね・・・。もうこのPCにあるフォルダ、だいぶ数が増えてきた」
「でも、気分転換にはなってるんでしょ?それ。」
「なってるよ。でもさ。やっぱり外に出られないと、何書いたらいいかなぁってなる時があるよ。今日のご飯とかかいてみるかぁ・・・笑」
「いいんじゃない?今日のご飯は、ハンバーグでした・・・!とか?」
「ハンバーグかぁ。おろしポン酢がいいなぁ、大根おろしがたくさんのってるの!」
「また、食べられるよ。点滴替えるね。」
「はーい。お願いしまーす。」
担当看護師である土屋とは幼い頃からの付き合いだった。
入退院を繰り返す度に、小児病棟でいつも遊んでくれていたのは土屋だった。
今の病棟に変わってからも、
よく話しかけてくれていて彼が担当看護師になってからは彼女の良き話し相手となっている。
「はい。点滴替え終わったよ。」
「ありがとう。」
「最近体調はどう?」
「うーん・・・。最近はなんだか眠くてさ。」
「うん。」
「このまま目が覚める事無いんじゃないかなぁって思う時がある。」
「うん。」
「夢を見るんだけどさ。」
「どんな夢・・・?」
「とっても幸せな夢。身体が軽くてさどこも痛くないの。周りの皆みたいに遊んだり走ったりしてるんだ。」
入退院を繰り返すようになるまでは、
学校にも行けていたが病弱なのは変わらずで周りの同級生のように走り回って遊んだり、体育をすることは出来なかった。
そんな彼女にとっては夢の中で走り回ったり遊んだり出来ることは幸せな夢。
「退院してできるようになれたらいいね」
「皆みたいにしてみたいな。」
「きっと出来るよ。大丈夫。一緒に頑張ろうね。」
「お話してたら少し眠くなってきた。」
「少し寝るかい? ゆっくりおやすみ。」
「おやすみなさい。」
今日はどんな夢が見れるのかな。
幸せな夢が見られますように。
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