第12話

兼倉に勝利した次は横浜学院。

強豪に次ぐ強豪との対決となった風上高校。

一方その頃、神城は・・・


―ブルペン―

快音を鳴らすエース草薙、鋭く曲がる変化球を操る藤堂。

更に1年生ながらそのポテンシャルを存分に発揮した姫矢。

しかし・・・


「っ!悪ぃ!」

「駄目だな、まだ制球が安定してない。肩に力が入ってる、リラックスだ。全身の力を抜け」

キャッチャー田中の構えたミットよりも大きく逸れた球を連発。

やはりコントロールの悪さがこの男の最大の弱点なのか。


その分、変化球も多種多様に操れるほどの制球力を持つ姫矢。

ピンチでも一切そのテンポを崩すこと無く安定した投球を見せる藤堂。

そしてこの2つを兼ね備えたかのような草薙。


1軍で活躍する日は、まだまだ遠いのだろうか・・・


―準々決勝―

『横浜学院!風上高校に8-2と大きくリードを広げています!やはり怪物とはいえ、1年生にこの試合の先発は厳しかったか!先発姫矢・・・』


『4回2/3、7失点の大炎上!!』


「お、おい...姫矢・・・大丈夫かよ」

「いやいや...すげぇわ...これが強豪ね、中学の強いトコとは全く違いますよ...」

(姫矢の変化球が・・・あんなまともに弾かれんの初めてみたぞ...認めたくはないけど...こいつで打たれるんなら、俺じゃあ1回を抑えることすらできねえ...)

神城は改めて神奈川の高校野球のレベルの高さ、己と姫矢との実力の差を痛感した。


しかし、中継ぎで出た藤堂が1失点、まだ打線を抑えていた。


6回表、2番立花が出塁し、上水流の進塁打で一死二塁。

そして4番の鈴木。

真芯で捉えた打球は、センターのバックスクリーンへ入る本塁打。

水谷―山本と連続ヒットで続くも、後続が倒れた。


そして7回表、1死から1番杉浦がセーフティバントで出塁。

更に2番の立花がヒットエンドランを仕掛け一死一三塁。

ここで今日3タコ(3打数0安打のこと)の上水流を迎える。


(こいつは脅威とはいえ、まだうちのエースにタイミングがあっていない...)

(まずは外に逃げるシンカーだ!)


横浜学院、捕手のリードに投手が頷く。

ここまでこの風上を阿吽の呼吸で4点まで抑えてきたのだ。

キャッチャーのリードに応えるかのように、外へシンカー。


これを上水流は空振り。

「やっぱあのシンカーだよな・・・上水流先輩が全くタイミングを外されてやがる」

「おい、田中。シンカーってなんだ?」

「なんだ、知らないのか。シンカーっつーのは投手の利き腕の方に曲がりながら落ちる変化球だ」

「なんだそれ・・・すごそう」


そして1-2から迎えた4球目。

内角高めの球を振り抜き、レフト前へ。

これで一死一二塁となり、1点を返した。

続く鈴木は敬遠、迷うこと無く満塁策を選んだ。


そして5番の水谷。

外のシンカーを引っ掛け、ホームゲッツー。

7回裏、8-5と巻き返した風上だったが、藤堂が相手打線に捕まり2失点。

なおも無視一三塁と大ピンチを迎えた。

ここでベンチが動き、草薙がマウンドへ。


8番打者を3球で三振に仕留め、1アウト。

更に9番打者は初球から釣り球を打たせてサードフライ。

最後に1番打者を内角のストレート勝負で見逃し三振。


圧巻のピッチングでピンチを何事もなく抑えきってみせた。

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真っ向勝負! せいちゃん @Sei_chan

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