第2話

『アヒャヒャヒャヒャ』

特徴的な笑い方。いかにも悪魔という感じがする。

「おはよう」

『ゴホッ。おはよう。今日もオレのおかげて快適な目覚めだな』

不快な目覚めの間違いでしょ。

「わざわざ起こしてくれなくても目覚ましのアラームで起きられるわよ」

『アヒャヒャ…ゴホッ。まあそう遠慮するなよ。もっと仲良くしようぜぇ?』

ヒヒッと悪魔は笑って見せた。

悪魔と仲良くするなんて、悪いことが起きそうでならない。どちらかといえば天使と仲良くしたいものだ。

「そろそろ学校行かなくちゃ」

『遅刻してもいいじゃねーか。ゆっくり行こうぜ』

「まったく…いいわけないでしょ。怒られるの私なんだからね」

今日の授業の持ち物を確認して、鞄を持って階段を下りる。悪魔は私の周りをふわふわと浮遊しながらついてくる。

1階はとても静かだ。まるで誰もいないかのような…。

『ケーラ』

悪魔の声でハッとした。最近、家にいるとぼーっとしてしまうことがある。

「お母さん、いってきます」

返事がないのはわかっているものの、聞こえていれば、返事があればいいなと思っては部屋の前で声をかけてみる。

『遅刻するぞ』

「…わかってる」

靴を履いて、鍵を閉める。そして速足で学校へ向かった。

いつからだろう。母の声を、姿を、もうずっと見聞きしていない気が…。

『ケーラ。立ち入り禁止だってよ』

「あ、ほんとだ」

学校の登下校でいつも通り抜けする大きな公園は、入り口の小さな柵に立ち入り禁止と書かれた張り紙があった。

「何かあったのかな」

『…さーな。ヒヒッ入ってみるか?』

「何のための張り紙よ。遠回りするわよ」

『アヒャヒャ、ケホッ。そういうと思ったぜ』

学校に着いた頃、今にも雨が降りそうなほど空が暗かった。

「けいら!おはよう」

靴箱でちょうど私を見かけたのか、手を振って声をかけてきたのは、幼馴染の伊吹だ。

「伊吹、おはよう。今日はすごい曇り空だね。雨降らないといいけど」

「あれ、傘持ってこなかったの?明日は雨だって、昨日話したじゃない」

「昨日…あー、うん。そうだったね。うっかりしてた」

「もう、あんたってば本当に忘れっぽいんだから。土砂降りになるかもって言ってたよ!朝から連絡してあげたら良かった。この前もさー」

しまった。本当に雨が降るのか。朝から天気予報見ればよかったな。

昨日の話か…全然覚えてないな。今度からメモして玄関に貼っておこうか…。

「こらけいら!伊吹の話聞いてる?」

「ごめんごめん。いつもながらお説教は私の耳を通過していくみたいで」

「ちょっと~その言い方だと伊吹がいつもお説教してるみたいじゃない!」

「あら、違いましたか」

「違うわ!」

「そこ2人~笑ってないでさっさと教室いけー。予冷なってるぞ」

廊下をのんびり歩いていた私たちに、後ろから先生が声をかける。

全く時計を見ていなかった。

「はーい」

「急ぎまーす」

私たちは適当に返事をして教室に入った。

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優しい天使は悪魔にかわる @tomiusagi-momo

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