第4話 さぁ。なんでも指示を出しなさい。おっぱいが見せてほしいの?
「好きって十回言わせなさいよ!!! 好き! 好き! 好き! 好き! 好き! 好き! 好き! 好き! 好き! 好き! じゃあ私の目の前にいる人は!? そう! 魚谷愛也くん!!! あ~好き! この気持ち、どうしてくれるの!? 責任取りなさいよ! これ以上好きになったら、鼻血が止まらなくなって、出血多量で病院送りだわ! あぁ~それでも好きなの!」
助けてくれ。
校門の前で、鳥山さんに掴まった。遅刻寸前である。というか、このやりとりの間に、チャイムがなってしまったので、遅刻確定に変わった。
「鳥山さんも遅刻だけど……」
「そうね。あなたのせいだわ。あなたとたくさんお話したくて、校門で待っていたのに、全然来ないんだもの。でもいいわ無事来てくれたから。さぁ、ここに座って?」
ここに。そう鳥山さんが指を差した場所には、ブルーシートが敷かれていた。
「なにこれ」
「場所を確保しておいたのよ。魚谷くんと会話するためにね」
「花見じゃないんだから」
「確かに魚谷くんを眺めながら酒を飲むのもいいわね」
「委員長?」
「冗談よ」
この人が言うと、どんな冗談もマジに聞こえてくるから怖い。
とりあえず、遅刻も決まってしまったし、諦めて、ブルーシートに座ることにした。
「たまらないわね。好きな人と、二人っきりで……」
「それはよかったよ」
「なによその冷たい反応は! 私ばっかり楽しんでるみたいじゃない!」
だって実際そうだもんな……。校門の前で座っていて、楽しいと思えることは一つも無い。当然の話だ。
「全くしょうがないわね。じゃあ、王様ゲームをやるわよ?」
「……鳥山さんって、馬鹿なの?」
「私は学年首席よ。高校二年生にして、三年生の受ける模試で、東大A判定なの。今受けても受かる自信がある。そんな私に向かって、馬鹿なの? とは随分な質問ね」
「ごめんなさい」
「あ~今のちょっと申し訳なさそうな顔かっこいいから写真に収めたいけど実物をこの目に焼き付けておくことも大事だと思うからこれでいい!」
「息継ぎしないと死ぬって」
「大丈夫よ。魚谷くんが近くにいれば、勝手に生き返るから」
「特殊な生物だ……」
なんて話しているうちに、王様ゲームでよく見る、割りばしが登場した。二人しかいないので、袋から出したものをそのまま使う形になる。
「赤色の印をつけた方を取った人が王様よ。いいわね」
「……うん」
「じゃあいくわよ? 王様だ~れだ!」
どうしてこんなハイテンションでやれるんだ……。
そして、王様を引き当てたのは、俺の方だった。
「さぁ。なんでも指示を出しなさい。おっぱいが見せてほしいの? それとも足の付け根? あるいは脇……。そうね。私のおすすめはうなじよ」
「結構です……」
「あぁん!?」
「シンプルに恫喝するのやめてくれる?」
「そんなすました態度取っても、わかるのよ?魚谷くんは、あえて私のおっぱいを見ないようにしてるわね?」
わかるものなのか……。だって、チラチラ見るわけにもいかんだろうに。
「いいのよ見ても。ていうか、なんで見ないの?見なさい!ほら!」
自分の胸を強調するように、両腕で抱え上げる鳥山さん。状況を今一度確認してほしいんだけど、ここは校門だし、この人は委員長だ。
「全く。見ないわね。こうなったら、奥の手を使うしかないわ」
何を企んでいるんだろう。ていうか、王様ゲームはどこ行った?自分が王様を引けなかった時点で、多分忘れたんだろうな。
「その前にあなたに質問があるわ。おっぱいを見ない言い訳として、相手の目を見て話すのがマナーだから。そう言った逃げ方があると思うの。あなたもそうでしょう?」
「そうだね。人の目を見て、ちゃんと会話する。そう教えられたから」
「じゃあ、これならどうかしら」
鳥山さんは、マジックペンを取り出し……。
自分の両方の鎖骨辺りに小さい丸を書いた。
「……なにしてんの?」
「これが私の目よ」
「は?」
「はい。こっちの目は閉じました。これからはこの鎖骨のあたりの目が私の目です。だからこっちを見て会話するのがマナーです。わかった?」
「そんな強引な方法ある?」
「しまった! これでは魚谷くんが私のおっぱいに釘付けになっているかどうかがわからないじゃない! 罠にハメたわね!?」
自分で勝手にひっかかったくせに、鳥山さんは顔を真っ赤にして怒りだした。
「もう許さないわよ。あとであなたのスマホを遠隔操作して、待ち受け画面を私に切り替えてやるんだから」
「ちょっと待った。俺のスマホを遠隔操作? そんなことできるのか?」
「できるわね。実はこっそり、あなたが目を離した隙に、スマホを改造させてもらったの」
普通に犯罪じゃないか……。
「勘弁してよ」
「あなたが私をバカにするからよ! あと、全然虜になってくれないから!自業自得じゃない!」
「……」
「なんで黙るのよ」
「疲れてきた……」
「失礼ね!!! こんな美少女と二人きりで会話できて、疲れることなんてあるの!? 意味がわからないわ本当に。理解不能。でもあなたのそういう一筋縄でいかないところが本当に好きだから抱きしめても良い?」
「そろそろ生徒指導室に行って、謝って来るよ」
「何言ってるのよ。あなたの遅刻なんて私が消してあげるに決まってるじゃない。だから今日は、気が済むまでここで、二人きりで過ごしましょう?」
結局俺は、そこから六時間程度拘束された。
……あれ。学校って、こんなことをしに来る場所でしたっけ?
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