17話 いざ、アリ退治へ

 迷宮に来て5日ほど経った。狩りは順調とは言えない。なぜなら魔物が極端に少ないからだ。

 キラーアントが大量にいた場所にはあれから近寄っていない。今もいるか分からないが周りの冒険者の話だと、未だにあの付近に大量にいてあの場所まで行った者は帰って来ることが少ないそうだ。

 腕に自信がある者達が行ったらしいがそれでも帰って来ないか怪我して帰って来る事があり、今では誰も行かなくなったらしい。その為に迷宮の1/4程度しか潜れず、そこまでに出た魔物を冒険者達が取り合いをしているのが現状だ。そんな事態になっている為に俺も魔物にはあまり出会えておらず、魔石も今の所4つしか獲得できていない(1つを除いて残り3つは融合させて1つの大きな魔石にしちゃったけどね)。


 そんな理由で俺は一旦街へ戻りアリが大量に出るポイントへ狩りをしに行こうかと思っている。期間は1・2週間を目処に長期の狩りはどうかと模索している所だ。もちろん迷宮で寝泊りするわけではなく神庭(かんば)で寝る予定だ。これは神庭がある俺だから出来るやり方だろうから他のやつらは泊まりこんでアリの駆除なんて出来ないだろうな。もしあの場所で寝たらアリに一気に食われちまうだろう。

 ただでさえアリの所まで行くのに7時間は掛かるだろうし、そこからアリの駆除したらすぐにクタクタだ。

 それから数日アリの駆除なんて出来るやつはあの迷宮に来てないだろうからな。だから誰もアリの出る所までは行かないようにしてるんだろう。


「なら俺がアリの駆除をしてもいいだろうな、きっとあそこから先へは誰も来ないだろうし」


 まぁその分誰かの助けも期待できないという危険はあるのだが、いざという時は神庭に逃げりゃいいので大丈夫だろう。   と、この時は考えていた。






 今日は街で食料と武器屋のオヤジに魔力剣に魔石が使われてるのか聞いてみて、それから出発だな。

 食料は30食……いや、40食くらいでいいか、1日3食は食べたいし動きまくるだろうから足りないかもしれないからな。まぁ危険すぎて食べられない可能性もあるがアイテムボックスがあるから足りないよりはマシだ。

 そう思い食料を買い込みアイテムボックスに放り込んだら次は武器屋だ。ちょうどオヤジさんがいるな。


「こんにちは~、お久しぶりです。ちょっと聞きたい事あるんですがいいですか?」

「おう、いらっしゃい、どうした?」

「今日はこの剣の事を聞きに来たんですよ」

「おう、何が聞きたい、その前に見せてみろ」

「はい、どうぞ、全く刃こぼれしてませんよ」


 俺から剣を受け取ったオヤジはジーっと剣を眺めるとうんうんと頷いていた。


「おう、まぁまぁ手入れもされてるな。若けぇやつは血が付いても拭かないですぐダメにしちまうからな、おめぇさんのはしっかり出来てるが1回研いでやろう、もちろんタダでいいぞ」

「ありがとうございます」


 そう言って少し奥に引っ込み2分ほどしたら出てきた。そういや2分程度で研げるもんなのか? と思ったが、手じゃなくて魔力でヤスリを回す研磨機を使ったそうだ。確かにちょっと甲高い音がしてたな。


「ほら、研ぐ必要はなかったが念の為だ。ところで聞きたい事ってなんだ?」

「ありがとうございます、ええ、この剣って魔力剣ですよね? なら魔石でも使ってるのかと思いまして」

「ああ、確かに魔石を使ってるぞ。それがどうした?」

「魔石の事を知らなかったもので、魔力剣にも魔石混ぜ合わせて作ったのかなと思ったんですよ、それにこの魔力剣に魔石いくつくらい使ってるんだろうって」

「なるほどな、魔石知らなかったか。そこら中に魔石は使われてるぜ、街灯にも使われてるし魔導具ならほぼすべてに魔石が使われてる。その剣には魔石10個ほど使ってるな」


 なるほど、確かにこの街はでかいだけあって街灯が普通に使われてる。前の村では見かけなかったからどういう仕組みかわからなかったが、魔石が配合されてたのか。

 それに魔力剣には魔石が10個使われてる、ということは大金貨2枚も払ったのは材料費ってより技術料ってことだろうか?


「じゃあこの剣は材料費自体はそんなに高くないんですか?」

「ああ、そうだな。魔導具っつーのは大抵技術料が高いんだ、その剣も魔石が使われるから作る難易度が一気に跳ね上がる。それを加工すんのが難しくて高額になっちまうというわけだ。俺もそれを作るのに3週間くらい掛かったからな」

「そうだったんですか」


 確かに剣1本作るのに3週間じゃ儲けは出るだろうが手間が掛かりすぎるな。

 それにしても魔導具は作るのが難しいのか、だから高額で村に街灯という名の魔導具がなかったわけか。でもこの街には街灯があちらこちらに置かれている。税収とかの規模が全く違うんだろうな。


「そういえば、魔石が何個か取れたので売る時はどうしたらいいですかね?」

「どこでもいいんじゃないか? 俺もでも良いしギルドの買取場でも良いし、後は魔石商とかでもいいだろうな」

「なるほど、普段は魔石はどこで買ってるんですか?」

「そうだなぁ、大体は魔石商だな。鑑定持ってるやつらがいるから値段にバラつきが少ねぇのさ」


 魔石商っていうのがあるのか、たしかに結構な需要があるみたいだからそういう商人というか組合があってもおかしくは無いな。

 ならその魔石商に直接持っていくのもいいだろうし、面倒だったらギルドの買取場でもいいか。


「わかりました、俺も何個か取れたんで売る時参考にさせてもらいます」

「ああ、大抵は大銀貨1枚くらいだが、中には質がよかったり大きさがでかかったりするからな。そうしたら値段が跳ね上がるぞ」

「なるほど、そういえば杖で魔力が増幅するやつがあるみたいなんですけど知ってますか?」

「ああ、知ってるぞ。あれは迷宮の中ボス以上が落とす魔石を使うらしいな。まぁ落とす確率がすごい低いらしいから持ってるやつはあまりいないらしいが」

「中ボス以上が落とす魔石ですか……」


 たしか魔石は100匹に1個程度らしいじゃないか。なら中ボス以上が落とす魔石ってとんでもなく確率低くないか? それなら持ってる奴が少ないってのも頷けるな。


「色々ありがとうございました、これから迷宮行ってくるのでまた寄らせて貰いますね」

「おう、いつでも来い」


 オヤジさんは杖の事はあまり詳しくないらしいのでお礼を言い武器屋を後にして次は魔導具屋のお婆さんの所へ話を聞きに行くことにする。ちょうど店先にいたので魔石の事を聞いたのだが、やはり魔力増幅の杖の魔石は相当希少なようだ。値段は金貨数枚から。これは中級魔法が使える属性の杖と同じ値段であり、威力は1.2倍程度上がるらしい。俺に紹介しなかったのは滅多に入荷できる物ではないので言って期待を持たせてもいけないと思ったらしい。


「たった1.2倍で数十万ゴルドもするのか……やっぱ魔法関連は高すぎるわ……」


 それにダンジョンボスの魔石は威力が1.5倍ほどになり、価値は数百万以上になる。そして上級ダンジョンのボスになると威力が2倍になり、もし買うとしたら数千万から時には数億以上にもなるとの事。


「さすがに2倍にもなったら価値がやばいな……でも2倍なら十分買う価値があるか」


 たださすがに数千万や数億をポンと出せる人は少ないらしく、持ってるのは大抵貴族のボンボンか超一流の冒険者くらいらしい。もちろん王族は代々受け継がれる物があるみたいだが。


「俺も欲しいとは思うけど魔法の威力が多分強い方だろうから、別にいらないっちゃいらないか」


 もし俺がボスを倒す事が出来て、なおかつ魔石を落としたら使いたいね。売る事も選択肢に入れたいけど、今は砂時計のお金がたっくさんあるからな。下手したら数年は何もしなくても生きていけるくらい持ってるから、もしボス級の魔石をゲットしたら焦らずじっくり考えたいね。


「よし、街でやる事は終わったかな。なら迷宮に出発しますか」


 街の用事も終わり馬車に乗ろうと思ったが、身体強化で走ったらどのくらい掛かるのかと思い、走って迷宮へ向かう事にした。

 馬車で行ったら8時間かかる道のりだ。はたして走ってどのくらいで着くのか楽しみだな。


「魔物があまり出ませんように……」


 なんて祈りながら絶対に馬車より早く行ってやると意気込んだ。


 途中で魔物がいたが無視したり、こっちに気づいて街道の中にまで入ってきたやつらには、走りながら魔法をぶちかまして歩みを止めることなく迷宮へ駆けていく。

 そうして5時間ほどだろうか。


「ふぅー……そろそろ迷宮だな。やっぱり走った方が速いじゃないか」


 馬車で8時間の道のりを5時間で走破した。さすがに走りっぱなしで疲れたが、やはり身体強化はとんでもないな……馬も身体強化が使えればもっと速くなるんじゃないのか? と、思ったが荷台が持たないかもしれないな。

 とりあえず迷宮に着いた所で少し休憩してから探索を開始しますかね。


「周りのやつらの話を聞くとアリが結構増えてるかもしれないって言ってたな……」


 俺が魔物探しを苦労してるのはアリのせいみたいだから、なんだか腹立ってきたぞ。

 まぁアリ自体は魔力剣を使えば甲殻は苦もなく切れるからいいんだけど、大群できたらちょっと危ないかもしれないな。せめて相手にする時は2匹、できても3匹くらいまでだろう。それ以上は引いた方がいいな。1回で片をつけるわけじゃないから、撤退しても何回でも挑戦すればいいよね。


「よし、十分休憩できたな、それじゃいっちょ行きますか!」


 気合を入れて暗い迷宮へ魔力ランタン片手に入っていく。しかし案の定魔物は一切出てこない。そうして10分以上歩いて行きようやく出てきたのが……


「またうざったらしいコウモリ野郎かよ……」


 このコウモリは真っ黒な上に素早い動物だ。そうなんだよ動物なんだよ、魔物じゃないの。だからいくら倒しても魔石を落とさない。ほんとこの迷宮のお邪魔虫第一位だわ……


「まぁでも聴覚を強化出来る様になったからいいんだけどね」


 そう、このコウモリのおかげで魔力を耳に集中させ聴覚を強化させる事が出来るようになったのだ。

 初めはこいつをどうやって倒そうかと考えてたんだけど、気づく頃にはもう目前まで迫られ先制攻撃を受ける、なら離れてる時に気づけないかと思い超音波はどうだ? と、思ったが魔法が使えないもんで却下。なら聴覚を強化出来ないか試したらこれが出来たのだ。どうやら身体強化というのは、体の各部位を個別に強化することが出来るみたいで、嗅覚も強化できるし、腕だけ、足だけという強化も出来た。

 ただまぁ個別に強化するなら全体を強化した方が楽だし使い勝手がいいので、俺は辺りを注意する時は全部強化してるんだけどね。なのでこのコウモリもこっちに飛んでくる音ですぐ判断できる為、今では先制される事なく倒せるようになっている。

 それにクモも糸で先制される事無く倒せるようになった。そうそう、クモの鑑定をしたらシルクスパイダーって出たんだ。こいつは魔物で、なんでも口から出る糸はその名の通りシルクの糸を出し、その糸を集めて作る服が結構な高級服になるらしい。

 なのでこいつを飼う事ができる魔物使い、いわゆるモンスターテイマーだな、この人らは結構重宝されているらしい。


 それにモンスターテイマーっていうのは数が少ないみたいだ。簡単なモンスターをテイムする事はそこまで難しくはないらしいが、そこそこ強い魔物になると途端にテイムする難易度が跳ね上がる。

 なのでシルクスパイダーを飼う事が出来るやつは王都でも10人いるかどうかといった所だという話だ。俺も出来ないか試したがそもそもどうやってテイムするか分からないから試しようがなかった。


「ほんと、俺って何の才能があるんだろうな……?」


 魔力操作は上手いらしいがそれだけだ。属性魔法は使えない、テイムも出来ない知識もない。こうやって考えるとほんと何が出来て何が出来ないのかまだまだ分からない事だらけだ。


「焦っても仕方が無いのはわかってるんだが、ほんとなんにもこの世界のこと知らないんだな俺ってば」


 ある程度は図書館の本で読んだが、実際に見て聞くのと本だけを読むのだと全く違うって事に気づかされる。やっぱり俺がこの世界を旅したい、色々見て回りたいってのは理に適ってるし一番大事な事かもしれないな。


「こういう時インターネットがあったら便利なんだろうね」


 改めて元いた世界の便利さを痛感させられた。でもまぁ考え方によってはネットの情報は画面を通してだけで、実際に目で見るのとは違う訳だからこの世界にネットがなくてよかったかもしれんな。

 だってネットみたいのがもしあったら、それ見て満足して1箇所にずっと留まってたかも知れないしな。それは面白くない、だからそういうのがこの世界になくてよかったかもしれない。


「そう思う事にしとこうじゃないの。それにネット中毒者じゃないから無くてもなんともないし」


 何かの中毒になるほど俺は何かにハマったことがない。スマホ中毒やSNS中毒なんてのもあるな。

 俺は全くその手のやつは興味を持たなかったからこの世界でも全く苦にならないのが救いか。もしそれらの依存症を患ってたらこの世界来たら発狂してたんじゃねぇか? なんてふと思ってしまった。


「でも慣れるもんだよなきっと。現にこうやってこの世界の事で不満に思う事なんか一つもなくなってるしな、唯一あるとすれば魔法が自力じゃ使えないって事くらいか」


 なんてことを考えてしまうのは狩りをしているのにほとんど魔物が出ないせいだな。魔物が出ないからこんな事を考えながら歩いてるんだろう。


「はぁ……ほんとなんも出ないわ。この鬱憤(うっぷん)、アリで晴らさでおくべきか~~……」


 なんて事を呟きながらアリを狩りまくってやろうと気合を入れなおした。




「もう歩いて6時間以上は経ったな、もうちょっとしたらあの場所に着くな」


 そろそろアリが来そうだなと思っていたら前から2匹、いや3匹のアリがこちらに向かってくる足音が聞こえた。


「ようし、アリを倒して倒して倒しまくってやる、そりゃもうギッタンバッタンにな」


まずはリュックから火魔法の杖を抜きファイアボールを2つ飛ばす。小爆発の後、1匹が動かなくなりもう1匹はかなり動きが鈍くなる。予想では3匹まとめて倒したかったが仕方ないか。こんな調子で魔法を使ってたら魔力がすぐ底を突くからやっぱり剣で斬った方がよさそうだ。

 そう思い杖をリュックに戻し魔力剣を鞘から抜きすぐさま魔力を流したら、生き残っている2匹の動きが鈍い方から斬っていく。そいつを斬った所でその死体を乗り越えて元気な1匹が襲い掛かってくる。その動きを余裕を持って交わし試しに触角を両方落としてみる。これはどこを斬ったら無力化できるか試してみたのだ。

 やはり触覚が弱点というか様々なセンサーの役目を負っている様で、触覚を失なったら方向がわからないのか出鱈目(でたらめ)に動き始めた。さっきまでは一直線でこっちに向かってきていたのにね。


「観察してる間に他のアリが消えたな、魔石は~……出てないっぽいな」


 一応1発で弱点を当てたのでもういいかと思い触覚を失ったアリを絶命させる。そして消えるまで待って魔石が出ないか確認した後にまた奥を目指し歩いて行く。


「もう少し魔石のドロップ率がよかったら殺る気が出るんだけどなぁ……あ、殺る気じゃなくやる気だった」


 まぁどちらも似たようなもんなのでいっか。そう思っているうちにまたアリの兵隊さんがやってきた。

 やっぱり他の冒険者の言っているようにアリの数が増えてるんだろうか。まだ第2休憩ポイントまでは1時間ほどあるはずだ、なのにこのアリの遭遇率は結構増えている証拠になるだろう。


「こりゃ相当アリの駆除が大変そうだなぁ、どんだけいるんだか……」


 この先きっとアリだらけだろうと予想しつつ迫り来るアリ共を切り払っていく。魔力剣に魔力を注げば甲殻など気にせず切り裂ける。なので安全に斬れる所から斬っていき届くのであれば触角も斬っていく。

 触角を斬ると無力化したようなもんだ。一気に楽になる。そうなると複数匹いても余裕を持って戦える……なんて思ってたら油断してしまった。こいつらのスキルの1つをすっかり忘れていたのだ。

 作業の如く斬っていたらいきなり壁の中からアリが飛び出してきた。しかも左右だけじゃなく上下からも一気にやってきた。もうここら一帯がアリの棲み家になっていたのだ。


「うおっ!? なんだなんだ!? こいつらどっから出てきてんだよ!!」


 上下左右に計10匹はいるだろうか、壁から一気に俺を仕留(しと)めようと一斉に襲い掛かってきたのだ。完全に油断していた。まさか壁から来るとは……そういえば以前も壁から襲われたな、あの時は逃げるのを優先してたからなんとか交わせたが今回は戦いながらだった。しかも作業のように緊張感がなくなっていた。だからかこいつらが土を掘り進める事をすっかりと忘れてしまっていたのだ。


 さすがにこの数を相手にするのはキツイだろう、いくら狭い洞窟とはいえ壁の中から次々来られたら堪ったもんじゃない。ならここは一旦引くべきか。

 幸いなのは後ろから襲われてないのが何よりの救いだろう。なので来た方向へ急いで神庭(かんば)への扉を出して逃げ込む事にする。しかしキラーアント達も逃がすまいと一直線に俺の所までやってくる。


「意外と早いな!? 追いつかれるぞこれ!!」


 なんとかドアノブに手を掛け扉を開け中に入るが閉めようとした瞬間にアリの顎が扉の間に挟まってきた。


「うわ、やべっ! このまま閉め切れるか!?」


強引に身体強化を施した力でもって無理やりに閉める。扉が持つかどうか心配したがかなり頑丈な扉のようでそのままキラーアントの顎をバキバキッと粉砕しながら完全に閉める事ができたようだ。


「ふぃ~…… これは危なかった…… 扉を突き破ってくるかと思ったけど扉から音もしないとなると、閉じた瞬間に扉が消えたと見ていいのかな?」


 もし消えてなければ音なり振動なりが来るだろうからきっと閉めた瞬間に消えたと見ていいだろう。

 しっかし危なかった。さすがにキラーアントを10匹以上相手にするには場所がやばいし、なにより上下左右の壁という壁から次々と襲い掛かってくるのは分が悪いなんてもんじゃない。後ろの逃げ道が塞がれなかったのが幸運だったな。

 それに扉も危なかった。もう少し耐久性が弱かったら壊されてたかもしれん。まぁ扉のサイズがアリと比べて小さいので入って来れなかったかもしれないが、壊れたら危険だったのは間違いないな。あそこにどれだけのアリがいたのかすらわかってない事から、延々と沸いてくる可能性もあったはずだ。そうなるといつかはこの神庭にまで入って来る事もあるだろう。


「こりゃ扉の形を変えなけりゃだめだな……どういう形がいいかねぇ……?」


 どこでも○アみたいな扉にしたのだが、いちいちドアを開ける手間が掛かっていざ危険が襲い掛かった時ドアを開けてるのは遅いってのがわかった。ならどういう形がいいのか。


「ん~……ドアノブで開けるのではなく普通に歩いてても入れる形はないのかな?」


 そう考え1つ思い至った物があった。それは次元の裂け目みたいな形だ。あれはどんな形にも出来るだろうし時間で、もしくは人が通った後にすぐに閉じる事ができる。そういう事でさっそく試してみようとしたのだが、まだあの場所にはアリ共がたくさんいるから試せない。


「一応どういう扉にするかは決まったからいっかな、多分できるだろう。危ない時はサーカスの火の輪っかをくぐる様に飛び込んでここに逃げるようにしようかな」


 俺の体より少しだけ大きい、余裕を持って飛び込めるような丸い形の裂け目を意識すればきっといけるはずだ。

 裂け目の色はそうだなぁ……黒がいいな、うん。 だって紫やなにやら色々と色が変わる裂け目って気味が悪いじゃん。だから黒い丸っこい扉にしよう。後は普通に入る時は自分の大きさの「U」の逆の形の扉でいいかな。これならドアを開けて入る手間が省(はぶ)ける分、人に見られる事も少なくなるだろう。


「よし、案は決まったな。あとは試してみて出来たら今度はそうやって入ろう、まぁたまにはちょっと豪華なドアにしたりと変えたりしてもいいけどね」


 扉の案が決まった所でアリへの再戦を誓う。


「待ってろよぉ~……絶対狩ってやる! そして魔石も貰うぜ!!  本命は魔石ではないがついでにほしいじゃん」


 そんな事を考えながらキラーアントにリベンジをする為、少しだけ仮眠をする事にし熱くなる頭を冷やしながら布団の中でまどろんでいった。

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