6話 ステータスカード

 朝に目覚め、朝食を取り、さっそくステータスカードを受け取りに行った。


「おはようございます、ステータスカードを受け取りに来ました」

「おはようございます、ハルトさんでしたよね、街カードはできてますよ、こちらです」


 そう言って門番が渡してきたのは、乳白色したスマートフォンよりは小さなカードだ。

 これが街のステータスカードか、ちょっと大きいんだな。


「これにハルトさんの魔力を流せば、もうハルトさんの物になりますよ」

「わかりました、ちょっとやってみます」


 昨日、宿に帰ってからちょっと練習したからな、多分できるだろう。


 お? できたっぽいな、なんか色々浮かんできた。


「はい、ちゃんと文字が浮き出して来ましたね、これで正式な街カードになりました」

「これでいいんですか、色々文字が出てきてますね」

「ええ、名前にステータスが出ております、後は、犯罪歴となってますね」


 そう言われてカードに目を移す、するとこんな感じで液晶っぽい画面から、文字が浮かぶような感じで出ていた。


名前 ハルト (猪熊 春斗)(いのくま はると)

性別 男

年齢 18

種族 人間


体力  160

魔力  120


攻撃力 23

防御力 18

精神力 35

素早さ 15

器用さ 20

運   89


お金  なし


スキル

異世界文字・異世界言語理解、

無属性魔法、魔力操作(巧)


称号 なし



 こんな感じで出てた。

 スキルをよくよく見てみると、言葉と文字は普通に話せるし読めてたな、まったく不思議に思わなかったわ!

 ラウル様のおかげかな?まぁ、わかるんだからいいよね、気にしたら負け。


「これがステータスですか」

「ええ、名前や種族、年齢などは隠せませんが、スキルと称号の部分だけは隠す事ができます、隠したい場所に指を置いて、隠したいと念じていると、次第に消えていきます」


 へーじゃあ異世界文字とかそういうのは消しとこうかね。

 指を置いてっと、隠れろ隠れろ、隠れろーー……


 すると、文字がだんだんと薄れてきた、真っ黒だったのが、今は色が薄れて灰色っぽい色になっている。


「これで隠れたのかな?」

「確認いたしましょうか?」

「ええ、お願いします、スキルの部分消したので、何が出てるか読んでもらっていいですか?」

「はい、見てみますね、え~と……無属性魔法に、魔力操作とだけですね」

「じゃあだいじょぶですね、ありがとう御座います」

「また何かわからない事があったら、いつでも聞いてください」

「はい、ありがとう御座いました、また利用させていただきますね」


 どうやら無事隠れてたみたいだな、でも……無属性魔法って言った瞬間悲しそうな目をこっちに向けてきてたぞ、

 ちゃんと見てたんだからな!


 どうやら無属性魔法ってことで差別とかはされないみたいだが、かわいそうって思われるみたいだ。

 まぁ、馬鹿にされたりしないだけマシか、強さはそれだけじゃないしな。


 なんて自分を勇気付けながら、今日は何するか考えていた。


「まずは、街の外に出てみるか、これから外に出たいんですけど、カード確認の機械に入れますか?」

「出るときは別にしなくていいですよ、入るときは毎回お願いしますが」

「わかりました、ではちょっと街の外行って来ます」

「はい、気をつけて行って下さい」


 よし、街の外でちょっと無属性魔法を使って、色々やってみよう。

 まぁ、身体強化に魔力操作くらいしかやることないけどさ!

 後は剣を買ったから、試しに剣に魔力を注いだら威力がどの程度上がるかやってみるか。


 てことで街から10分くらい離れた森にやってきた。


「ん~、ここらでいいかな?さてと、まずは剣に魔力を注いだら、どれだけ威力が上がるかやってみるか」


 最初は普通に木に剣を振るってみる。


「ふんっ!」


 ダンッ! てな具合で3・4cmくらいしか刺さらなかった、

 まぁこんなもんか、斧で木を切ったことあるけど、同じくらいだったもんな。


 お次は、魔力を通して切ってみることにする。


「手のひらに魔力を集めて、それを剣に通す感じでっと」


 お、なんか流れる感じがする、

 やっぱり流した瞬間から霧散してるんだろうか、いくら流しても魔力が溜まる気がしない。

 ちょっと思いついた事があるので、街カードでステータスを確認してみる。


「あれ? 数値が変わってないな、魔力使えてないのかな?」


 見てみると数値が全く変わってなかった。

 魔力が使えてないのかと思い、もう一度、剣に魔力を注いでみるが、やっぱり魔力が流れている感触があるし、溜まる気配も無い。

 そしてもう一度、ステータスを確認してみる。


「やっぱり変化なしか……」


 考えられるのは2つ、魔力が流れてないか、ステータスは最高値から変動しないかだ。

 たぶん魔力が流れてないってことはないから、ステータスは最高値だけが表示され、現在値は表示されないのかもしれない。


「ん~、現在値が表示されないのは痛いなぁ……」


 まぁ仕方ないと、諦め……られないので、ちょっと街カードをいじってみる。

 色々見てみた結果、スキルと称号を隠す事以外、特に何もできないみたいだ、

 ただ、お金の欄があったので、武器屋のオヤジさんが言ってた、街カードにお金を入れられる事を思い出した。


「お金の事すっかり忘れてたな、返ったらお金を入れてみよう」


 確か大金貨1枚に金貨と銀貨が数枚あったはずだ、大金貨1枚だけ入れてみようかな。

 そう思って、他に何かできないか、また弄ってみる。


「ん~、せめてステータスが現在値を見れるようになればいいんだけどなぁ、どうにかならないかな」


 そう思って、どういう風に見れたら良いか、頭に思い浮かべてみた。


 たとえば体力、160だけしか見えないが、

 160/160  こういう風に見えないもんかね。


 攻撃力なんかも、

 23+10  というような感じで武器の分もほしいもんだ。

 あれ? 武器の分が入って23なのかな? まぁそこら辺はわからんけど。

 どうにかして見れるようにならないかなぁ。

 なんて思ってると、


「お? そうそうこんな感じで見れたらいいんだよねぇ……あれ? これ想像じゃなく実際に表示が変わってないか?」


 一瞬想像と現実のカードかどうかわからなくなった、なんだこれ?


「……うん、変わってるな、確実にこれは街カードのはずだ、なんだ?現在値が出てるぞ、何したんだ今?」


 今見えてるステータスはこんな感じに見えている。


名前 ハルト (猪熊 春斗)(いのくま はると)

性別 男

年齢 18

種族 人間


体力  160/160

魔力   89/120   (神力 ∞)


攻撃力 15+13

防御力 12+6

精神力 35

素早さ 15

器用さ 20

運   89


お金  なし


スキル

異世界文字・異世界言語理解、

無属性魔法、魔力操作(巧)


称号 なし


 こんな感じで表示が変わっていた。

 まぁよくわからんけど、現在値が出てきたってのは、わかりやすくなったから、いい事だ。


「きちんと魔力も減ってるな……ん? 神力だ? なんじゃこりゃ?」


 何やら現在値の他に、神力なんて物が出ている、なんだろうこれ?

 神力? 神力ってのは神様の力か?

 それとも一般人でもこの世界の人間は元々持ってるのだろうか?

 ん~、よくわからん、本にはそんなこと書いてなかったけどなぁ……


「まぁよくわからない事を悩んでても答えなんて出ないから、今はやる事やっちゃうか」


 うじうじ悩むのは嫌いだ、なので今は剣の威力と身体強化を試そうかね。


「魔力の残りがわかるようになったから、これならどの程度魔力使ったかわかるね、便利になったわ」


 カードが変わった事に喜び、さっそく魔力を剣に流し込んでいく。

 すると、ステータスの魔力も結構な速さで魔力が減っていっている。

 魔力には限りがあるので、さっさと魔力を流し続けたまま木に切り付けてみる。


「おりゃっ!」


ザンッ!!


 ってな感じで木の中ほど、20cmくらいまで剣が食い込んだ。


 おお、結構威力上がってんじゃねぇか、これなら一瞬魔力を注ぐとかで、威力高められるんじゃないか?

 まぁ難しいだろうけど、やってやれないことはないな。


 同じ力で同じ木に場所を数センチずらして振ったからまず間違いなく威力は魔力通した方があがっている。

 てことは、これの逆で、防御も当たる瞬間に、当たる部分に一瞬だけ魔力を通せば、威力が減るんだろうな。

 大体道具に対する物はわかった、後は、身体強化を試しますか。


 神力が未だ気になるけど、気にしないで修行とは名ばかりの魔力の使い方を訓練していく。


「身体強化は、全体に魔力が行き渡る様にして、それを維持する感じと」


 血液に流す感じで全身に魔力を通す様にしてみるか。

 すると、


「お? 体が少し熱くなったか?」


 微々たる差だが、ほんの少しだけ体が熱を帯びた気がした、これが魔力が通ったって事だろうか。

 ステータスを見てみる。


「お? 5だけ減ったな、剣を振った後に見たときより5減ってるから、これで身体強化できてるってことかな」


 この身体強化がどの程度続くか試すために、ちょっとランニングしてくる事にする。


 いっくぞ~~~!!


 バビュンッ!!!


 っと、今まで感じた事の無い弾け飛ぶ様に体が風を切り裂いていく。


「なんじゃこりゃ~~~!? はっや!!」


 景色がとんでもないほどの速さで流れて行き、まるで自動車で高速道路を走ってるが如く、どんどん景色が変わっていく。

 ……が、


「すっげー痛い! か……風が~~!!」


 そう、早すぎて風が痛いのだ、これはどうするか、体の前面の風が特に当たる部分に、魔力を通してみる、ステータスの魔力がまた5減った。

 ちょっと流しすぎたかな?でもまだ慣れてないから仕方ないよね!

 てな感じで魔力を流したら、風の抵抗がかなり少なくなった。


 さっきまでは、目も開けられない感じだったのだが、今は普通に風が強いなー程度に落ち着いた。

 その間はもちろん速度は緩めていない。


「なるほど、魔力をうまく使えば、色々と便利そうだなこりゃ」


 なんて思っていると、走る速度がかなり落ちてきた。


「身体強化が切れたかな? ステータス見ても変化なしか」


 身体強化が切れても勝手に追加で発動はしないか、それにカードに継続時間は表示されないと。

 まぁ体感だけど、4・5分くらいは走ってた気がするな。

 魔力5でこれなら悪くない気もするな、他の魔法を使ってないからどの程度かわからないが、今の俺にはこれしかできないから、そこそこの効率じゃないかと思う。


 後は、どの程度強化するかによるのかね、もっと強化出来たら出来るのか、それとも、限界値があり、それより強化するとぶっ壊れるのかね。

 そこら辺をちょっと調べていきますか。


 これからの方針が決まり、まずは金稼ぎより、今の自分にできる事をよく調べようと決めた。


 ここはゲームじゃない、現実だ、命は1つ、慎重に慎重を期すくらいが丁度良いだろう。

 そう決めたら少し心に余裕が出てきたな、やっぱりちょっと異世界だって事で、無意識に力んでたのかもしれない。

 まぁ確かに、いきなり瞬時に違う国に飛ばされてもビックリするしな、それが異世界だ、正常な判断が出来ないのも仕方ないか。


「よし、急いでも仕方ない、お金はラウル様が少し多めにくれたし、1ヶ月2ヶ月くらいはゆっくりと、何が出来て何が出来ないか調べますか。もちろん金稼ぎもできる物はやらないとな」


 そう改めて心を落ち着けて、そして意気込んでみた。

 意気込んだら台無しじゃないかと思ったが、心が逸るんだ、仕方ない、あれ? まだ冷静じゃないのかな?


「まぁ、ようやくここからスタートって感じでいいじゃない!」


 そんなこんなで、改めて第一歩を踏み出した気がした瞬間である。

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