4話 初装備に初図書館

 朝目覚め顔を洗い今は朝食を取っている。


「今日のパンは昨日の夕食の半分くらいの大きさだ、それでもでかいけど」


 朝食も食べ終わり、女将のエリーさんに挨拶をし、街をちょいとブラつこうと思う。


「昨日は気にしてなかったけど、地面が土だな、ん? めっちゃめちゃ硬いし、よく見ると平らだ」


 これはどうやって作ってるんだろう?普通の土の地面にしてはあまりに整いすぎていて、硬すぎる。

 そう思ってると、


「なんだ兄ちゃん、地面になんかあんのかい?」


 いかにもな冒険者風の、ガタイのいいスキンヘッドの男が話しかけてきた。


「いえ、この地面ってどうやって作ってるんだろうと思って」

「なんだ、これ見たことないのかい、てことはあんた田舎から出てきただろう?」


 よし、田舎から出てきたら常識知らずだって通用するって事だよな、使わせて貰うか。


「そうなんですよ、ここまで硬くて綺麗な地面見たことなくて」

「この地面はな、それなりの土魔法の使い手の魔法使い様が作ったものなんだよ、硬くて真っ平らだろ?」

「ええ、ひとつもデコボコしてないですね」

「ある程度の強度がないと、馬車とかで地面がすぐダメになっちまうからな」


 なるほどね、確かに普通の地面を慣らしただけだと、すぐボッコボコになるもんな、それが一切無いから、不思議に思ってたんだ。

 なるほど、これも魔法の力なのか。


「教えてもらってありがとうございました」

「なーにいいってことよ、俺も田舎から出てきたからな、最初はあまりの綺麗さに驚いたもんだ、いつまで経ってもボコボコにならねぇからな」


 そう言い残して、男は去っていった。


「これも魔法か、たしかに、強度で言えばコンクリートと同じかそれ以上か?」


 いちいちセメントを流したりしなくても、魔法で出来るのか。

 まぁその魔法を使える人はあんまりいなさそうだけど、出来るなら材料とかもいらないだろうから、かなり便利な魔法だな。

 いるのは魔力だけってか?


「他にも色々魔法が使われてそうだな」


 ちょっとワクワクしながら街の中を歩いて見て回る。


まずは、どうするかね、武器関係も見たいんだよな、どんな武器があるかな。

 てか、ここに来るまで魔物に会わなかったけど、冒険者はどこで、狩りしてんだ?

 ふと、疑問に思い、見つけた武器屋で聞くことにした。


「すいませーん」

「はいよー、いらっしゃい」


 出てきたのは50歳を超えたあたりだろうか、そこそこガタイの良いおっさんだ。

 このおっさんが武器を作ってそうだな。


「ちょっと武器を見たいんですけど」

「あいよ、好きに見ていきな」

「あ、そういえば、この村に来たときに魔物がでなかったんですけど、冒険者の人たちはどこで狩りしてんですか?」

「あ~、知らないのか、麦畑の方から来たのか?」

「はい、そっちから来ました」

「あそこらは小さな集落と湖しかないから、魔物もほとんど出ないからな、冒険者もいないわな」


 え? 集落と湖しかない? ……あ~、だから畑が広がってたのか、その水で麦を育ててたんだな。

 魔物が居ないのも、湖から上がってこないからか?


「畑の方は魔物がいなかったんですけど、何か理由あるんですか?」

「そっちは森林を伐採して畑にしたからね、水に棲む生物以外はあらかた片付けちまったし、湖からは上がってこないからな、ずいぶん畑周辺は平和になったよ」

「へぇ~そうだったんですか、通りで動物すらいないと思いました」

「動物はそれなりにいるんだがな、道には魔物払いの魔法が掛けられてるから、弱い動物はほとんど姿を見せないんだよ」


な~るほどねぇ、だからウサギ1匹くらいしか見なかったわけか、そのウサギも道に出てこずに、すぐ木の中に入っていっちゃったしな。


「じゃあ、狩りするとしたらどこら辺になるんですか?」

「この村の西から北、東だが、主に北と東がメインだな、西は山が近いからあんまり魔物はでないんだ」

「へー、山が近いと魔物が出ないのはなぜですか?」

「ああ、山が近いと食いもんが沢山あるから、わざわざ人里に下りてこないんだよ」

「そうなんですか」


 なんか魔物っていうと、なんでもかんでも人を襲いたくなるなんて思い込んでたな。

 別に人間を襲いたくて襲うんじゃなくて、食いもんが無かったり、たまたま歩いてたら遭遇したからって感じなのかな。


「わかりました、ありがとうございます、それと武器を持ったことすらないんですが、オススメってありますか?」

「武器使ったこと無いのによくこの村に来たな、何も無いぞこの村は、というかこの周辺はだな」


 なんて言おうかね、飛ばされて来ましたなんて通じるかね?馬車でってのはダメか、畑方面にはなんも無さそうだ、さてどうするか・・・


「今、旅をしてるとこなんですよ、それで世話になってた人が用事で帰ってしまったので、これからは自分で身を守らないといけないので」

「あんた、どっかのボンボンだったのか?ずいぶん気楽な旅だな」

「別にボンボンじゃないですよ、ただこの世界を見て回りたいと思ってるだけです」

「なるほどね、護衛いなくなっても旅をしたいと、そんな感じか」

「まぁ、そんな感じです、それで、武器は何がいいですかね」


 そうだなぁ……と考え込む男、あ、名前まだ聞いてなかったな、まぁいっか。


「おまえさんは、あまり筋力ありそうに見えねぇから、バスタードソードあたりだろうな」

「これですか、確かに片手では重いけど両手ならいけますね」

「ああ、片手で使うのはまだ筋力足りないだろうが、そのうち片手でも使えるようになるだろ、切れ味より頑丈さのこっちのがいいか」


 確かに攻撃力あげるより、使ったことないから刃こぼれしない頑丈なのがいいかもしれない。

 ミスって地面や木や岩に思いっきり当てそうだしな……


「それでお願いします、いくらですか?」

「これは丈夫なだけだから、金貨1枚でいいぞ」


 高いのか安いのかわからんな、10万ゴルドだろ?武器だからそんなもんなのかね。


「そっちの切れ味がいいのは、いくらですか?」

「これは、切れ味良くする為に手間かかるから、金貨2枚と大銀貨5枚だな」


 25万か、ならこっちはかなり安いな、まぁその分切れ味が悪いだろうけど、いきなり大物は狩らないからいいか。

 自分の実力もわからんしな。


「わかりました、じゃあ丈夫なのでお願いします」

「あいよ、金貨1枚ね、毎度あり」


 布袋から金貨1枚取り出して渡した所で、こんな事言われた。


「今時、硬貨使うなんて珍しいな、大銀貨より上はみんなカードで払うんだけどな」


 なんですと!? ……こりゃ有意義な事聞いたな、正直200万近く持って歩くの不安だったんだよ。

 やっぱりステータスカードには電子マネーみたいな機能があるのか、安心した。


「街カードもなくて、今作ってもらってるんですよ、後2日くらいはかかるみたいで」

「おまえさんはどんな所から来たんだよ、旅してるわりにカードがないないんて」


 うおっ!? もう設定に綻びが出てしまった!! や、やばいな、なんて言おうか。


「ど田舎から出てきたもので、地理も何もわからないんですよ、だから今まで行ったことがあるのはみんな、田舎とか街カードのいらないとこばっかでして」

「旅初めたばっかか?なら連れだった奴もその田舎の知り合いって感じか、なら街カードないのも頷けるな」


 ふぅ~……勝手に都合の良い解釈してくれて助かったぜ……まぁ、これからは街カードも貰えるしだいじょぶだろ。


「あいよ、鞘とベルトはおまけしといてやる、ダメになったら無料で研いでやるから持ってきな」

「ありがとうございます、お世話になりました」


 こうして初めての武器を手に入れた、でもまだ服が普通の服だ……と思ったら、

 この服俺の服か? こんな服着てなかったぞ? 転移の時に服くれたのかね、確かあのときゃパジャマってかジャージで寝てたはずだしな。

 今まで服を指摘されなかったから気づかなかったわ。


 悪目立ちしないように、ラウル様が気を利かせたのかね、それとも肉体以外は世界を飛び越えられないとかそんな感じだったりして。


 その頃、創造神ラウルはいや~なクシャミをしていたという。


「まぁ、この服しかないのも問題だし、服と防具も買っとくか」


 こうして防具も購入して、似たような服も数着買い、後はバッグというか道具袋ほしいなと思い、道具屋に行ってみた。

 ちなみに、防具は胸当てだけ買って、銀貨5枚ほどだった。


「全身鎧も着てみたかったけど、見るからに動けなそうだからやめといてよかったな、着て動いたら速攻こけそうだったもんな……」


 さて、道具屋に付いた、やっぱ定番は魔法袋みたいな、容量が見た目以上に入るやつがほしいな。


「ここかな? 道具屋は、すいませーん」


「は~い、いらっしゃいませ」

「すいません、道具見させてもらっていいですか?」

「はい、ごゆっくりどうぞー」


 さて、何買うものあるかねぇ、回復薬と、毒消しも一応持っとくか、あとは……

 道具袋はどこだ?


「すいません、回復薬と毒消しのオススメありますか? あと道具袋ほしいんですけど」

「はいはい、ポーションセットがありますよ、回復ポーション2つで銀貨3枚に毒消し1つ銀貨2枚です」

「5千ゴルドか、道具袋はいくらしますか?」

「道具袋は魔法袋でいいですか? 小さいのから大きいのまでありますよ、小さいのだと、容量が縦横1メートルほどの大きさで金貨1枚になります」


 10万かよ、やっぱたけーな、さすが魔法袋って感じだ。


「中くらいのはいくらですか?」

「3メートル四方で、今は金貨5枚でいいですよ」

「今はって事は、いつもは高いんですか?」

「ええ、たまたま買い取ってほしいって4個くらい安く仕入れられたので、いつもなら金貨10枚近くしますねぇ」

「半額ですか、いいんですかそんなに安くて?」

「いいんです、ここら辺はなかなか魔法袋は売れないので、多少安くても売れた方がいいので」


 まぁ、田舎の道具屋に来るなんて、地元の人か、都市からやってきた人くらいか、そういう人らはもう魔法袋持ってそうだしな。


「じゃあ中くらいので、ちなみに大きいのだといくらします?」

「大きいのだと大金貨4枚から5枚はしますよ、容量は10M四方より上ですね、正直もっと大きいのですと、いくら掛かるかわからないですね、無制限とはいかないまでの大きさのは龍金貨が何枚も必要とか」


 4・5百万ゴルドか、んで、もっとでかくなると無制限に価値が上がっていくと、龍金貨って確か1億だろ? んじゃ数億必要か……家何件も買えんじゃねぇか?家いくらするか知らんけど。


「結構高いんですねぇ、じゃあ中くらいのでお願いします、ポーションセットは3つで」

「はい、金貨5枚に銀貨5枚になります、こちらが商品です」

「これが魔法袋ですか、ちょっと大きめのポーチみたいだな」

「そうですね、取り出し口から魔法が掛かっていますので、その口よりも大きいものでも、容量が余っていれば入りますよ」

「へぇ~、容量がいっぱいならどうなりますか?」

「普通に入らなくなります、たとえば生き物は無理みたいですけど、死んでいれば牛1頭が体の真ん中までしか入らないとかになりますね」

「やっぱ生き物無理なのか、どんな理由があるのかな」

「なんでも、生き物を入れられる用にしたら、犯罪が物凄い増えたとかで禁止になったみたいですね」


 なるほどね、確かに誘拐だったり、違う大陸にしか居ない有害生物を持ち込んでとかできそうだもんなぁ、よく理解できました。

 でも生き物も入れる何かはほしいなぁ、緊急用とかにね。


「わかりました、ありがとうございました」

「またお待ちしてますね~」


 よし、とりあえず用事は終わったな、後は色々見て回るか。

 何があるかな~。


 おっ、本屋っぽいのあるぞ。


「すいません、ここ本屋ですか?」

「いらっしゃいませ、ここは図書館みたいな所ですよ」

「え? 村に図書館ってすごくないですか?」

「ここは私の趣味のような物ですからね、確かに珍しいと思いますよ、ただ図書館ってよりは小さな本屋って感じですけどね」


 そう言っている受付だと思った男性は、お爺さんになりかけの真っ白な髪をした人だ。

 この人、館長だったのか、しかし趣味で図書館ってすごいな、何冊あるんだろ。


「館長さんでしたか、ここって本は何冊あるんですか?」

「そうですねぇ、本は高価なのが多いので、3千冊は4千冊くらいですかね」


 この世界でその本数はすごいんじゃなかろうか?


「結構ありますねぇ、利用させてもらってもいいですか?」

「ええ、喜んでどうぞ、9時から12時だと銀貨2枚、12時から夕方までは銀貨3枚、1日だと銀貨5枚ですよ」

「わかりました、今まだ午前なので、午後から来てもいいですか?」

「ええいいですよ、お待ちしております」


 そう言って午後にまた来ることにした、やっぱり世界のことを知るのは図書館に限るな。

 閉店時間はその日の客がいるかどうかで決まるみたいだ。

 しっかし、個人で図書館みたいなのしてるって何者だろうな、国の重役やってた人だったりして。

 まぁ、昼飯食うまでちょっとうろつきますか。


 村としては大きいかもしれないが、やはり村は村なので、そこまで見る物もなくなって来た所だった。

 と、ふと気になる建物があった。


「ん? ここは冒険者ギルドっぽいな、ちょっと中入ってみるか」


 冒険者ギルドが村にあるとは、やっぱそれなりに大きいのかなって思う。

ちょっと見てみよう。


「入ったはいいけど、あんまり人いないな」


 受付の人は声を掛けてこず、こちらから話さないとダメかね、まぁ依頼書とか中の様子見てみるか。

 あんまりジロジロこっちを見てくる人もいなく、みんなのんびりしているみたいだ、サボってる感じではないな。

 やっぱり村だからそこまで殺伐としてるってわけじゃないんだな。


 あ、依頼書だ。


「ん~、そんなに依頼ないみたいだな、どれどれ、雑用に村の東側の魔物討伐か、ゴブリンとウルフがちょっと増えたから討伐してくれか」


 あんまり難しい依頼はなさそうだな、討伐以来も強敵とかそういうのはいなさそうだ。

 ちょっと受付の人に聞いてみるか。


「すいません、ちょっといいですか?」

「はい、なんでしょうか?」


 そこそこの多分平均的な容姿をした女性だ。


「ここは冒険者ギルドでいいんですよね?」

「ええ、そうですよ、初めての方ですか?」

「はい、少しギルドの説明とか聞いてもいいですか?」

「わかりました、ギルドカードはお作りになりますか?」

「ん~、まだ街カードが出来上がってないので、まだいいです」

「わかりました、では説明だけさせて頂きますね」


 そう言って説明をしてくれた、まぁ要するに依頼をこなすだけで、何でも屋に近い感じだな。

 まぁお金には困ってないし、何より素材買取はギルドカードがなくても、何らかのステータスカードがあれば、買い取り価格は正常にしてくれるらしい、まぁ身元がわかってればいいという感じか。


「説明ありがとうございます、また用があったら来ますね」

「はい、ご利用お待ちしております」


 そうして、ギルドを後にした。

 ん~、なんか思ってたのと違うな、もっとバンバン魔物を狩るかと思ってたのにな。

 場所によるのかね、これなら別に冒険者にならんでもいいや。

 街カードありゃ十分と思ったので、冒険者にならないことにした。


「さてと、そろそろご飯かな? そういえば、時間ってどうやってわかるんだ?」


 ふと疑問に思って近くの人に聞いてみた。

 なんでも、24時間らしく6時9時12時と鐘がなるみたいだ、そういえばさっき鳴ったっけ?

 その後は18時に1回鳴って終わりらしい。

 結構午後は大雑把だな、まぁ何時までというよりも、仕事が終わったら終わりとか、そういうのが多いのかね。


「よし、たぶんさっきの鐘が昼だろうから、飯食って図書館行くか」


 近くの露天でホットドッグみたいなのを買い、図書館へ向かう。

なかなか美味かったな、2つも食べちゃった。


「すいませーん、図書館利用させてもらいにきました」

「いらっしゃい、さっきの方ですね、お待ちしてました」

「午後からだと銀貨3枚でしたっけ?」

「はい、そうですよ、持ち出しはできませんのでお気をつけください、閉店時間は最大19時までは伸ばせますので」

「はい、では利用させていただきますね」


 さってと、何見ようかねぇ。

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