第5話


 迷う葉が、星よりも重く落ち葉になった。景色が小さく区切られているガラス越しの、店の奥にあたる廊下の端。咳のする静かな奥が、日々の底だった。冷たく翻る夜の町には、一つのガラスが一つのしおりに、一人の人は砕かれて一冊の本になっていた。枕と布団を重ねた温かな部屋で、日記は埋め尽くされる。月、日、天気、他の日ではない今日を書いて、開くごとに揺れるひらがなの印象。薄ら笑う輪郭の中では、雲が向かう余白の世界が、ずっと近くに思えている。閉じることの無いように、短い筆記のあとだけは、変えようもなく色褪せてゆく。

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然灯書店 フラワー @garo5

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