第4話

「他にはどんな話があるのですか?」

 杏子は向田さんの話を聞き終わるとそう尋ねた。

「おっぱいを揉まれた話、孫の写真をとってきてほしいという依頼、後は墓を掃除しておいてほしい、なんてのもありましたね。」

「他の話も聞きたいです。お願いします。」

「いいですよ。面会時間いっぱいまで話ましょう。」

 僕はそう答えた。次は、三枝さんの話をしよう。孫の写真を見た三枝さんの顔は当分忘れることはできない。


 杏子に今まで受けた死神家業を話ていたら、面会時間の終わりが近づいてきた。

「何か参考になるものはありましたか?」

 僕は杏子に問いかけた。

「参考?ああ、楽しくって忘れていました。おっぱいを揉まれた話なんかは不思議な落ちで聞き入っちゃいました。」

 杏子は楽しそうに答えた。

「こんな話で良いのなら、また休みの日に話に伺います。先代から伝わっている話もありますし、まだまだネタはありますよ。」

「それではまた今度もお願いします。」

 面会時間も終わり僕は杏子の病室を出ていった。


 明くる日、ホスピスの清掃を行っていると医者や看護士達が慌ただしく動き回っていた。

 また誰かの迎えがきたのかな、と僕は思った。ここではそう珍しい事ではない。患者の家族や葬儀屋がこの後出入りしてくるのだろう。その後、僕の仕事が待っている。清掃を一旦切り上げて準備に取りかかった。

 慌ただしい時間も過ぎ去り、死体洗いに取りかかる。寝台の上には杏子が寝ていた。今まで見てきた死体達と変わらず、安堵しているような、それとも未練を残しているような、なんとも言えない表情をしている。

 僕はいつも通りの作業に取りかかった。体を洗い防腐剤の入った特殊な液を杏子に塗る。また、表情を明るく見せる為の化粧を施した。


 仕事が終わり一休みしていると看護士長から手紙を渡された。曰く、杏子から私宛の手紙らしい。

 拝啓、神田様。から始まったその手紙に何が書かれていたかは僕だけの秘密だ。

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あなたの願いを叶えます あきかん @Gomibako

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