第3話
title:2日目
戦争初日〜
(*´ω`*)今日は前線の補給するとこに出た♪
布作りとかしたくらいで横になってる人の顔に布被せる作業してたー
あれなんの意味があるんだろう?
──────────────────
状況は最悪と言ってもいい
魔物の軍勢が前線を押し上げており、人類…見たところ勇者候補の人達が疲弊と不満を上げていた
私こと、
私は前線補給所にて支援を
仲良し3/5人組は他の勇者候補と合流し、前線の押し上げに貢献するという名目で出陣した
作戦はお粗末だった
”とりあえず前に出ろ”
そういったものだった
偵察し、他の戦場の状況を見て援護に回ったりするものだと思ったが、勇者候補以外の人類はほとんど居ない
無双してやるー!とかいった他の勇者候補は無惨な姿に晒され地に還ったりしてた
正直いって、100人もいない
鬼ヶ島くんの言ってことは正しかったのだ
「布100枚作りましたー」
「お疲れさまです月光花さん、あぁ、この人はダメだな…この人に1枚かぶせておいてー」
私は戦場に廃棄予定となる物資から布を制作し、チクチク縫っては被せる作業の繰り返しをしていた
たまにベッドのシーツ作りもしていたがその頻度は少ない
また、地面に敷いて寝床を増やし、けが人を運んだらいいのでは?と疑問をぶつけても
「そんなことするなら折れた骨の補強に使った方がマシ」
と返ってきた
物資が枯渇寸前となっていたのだ
次に後方から補給が来るのは2日後になるらしく、昨日出発した補給部隊は魔物の軍勢に襲われたらしい
なんでも、運んでいた物資で休息を取っている途中で奇襲されたようだった
なにやってんのこの国の人?
前線に運ぶための物資を勝手に使う挙句、警戒もせずに物資が襲われて無駄死に
その物資は魔物に取られるというオチ付きだ
こんなことでキレても仕方ないが、前の世界ならクビになるところだ
責任賠償も必要となるだろう
死んでしまっては元も子もないが
「言われるがままでいいのかなぁ…なんだか『アルタイ国』の人は勇者候補に頼ってばかりな気がする」
”勇者召喚にて召喚された人間は能力を持っている”
その言葉を思い出すと余計に他人頼りな思考しか思い浮かばなかった
しかしそのボヤキは、忙しなく動く周りの人間には聞こえず、虚空に消え去った
「はあー…鬼ヶ島くん元気かなぁ。良いよねぇ拘置所…拷問とか痛いのは嫌だけど言葉巧みに操れば死ぬことないじゃん…」
ふと、車のエンジン音が聞こえた
自衛隊で言う10人乗りの高機動車が近くに止まると、簡易な武装を着た兵士が次々と降りて、周辺を固める
要注意人物でも来たのだろうか?偉い人ならここに来る理由は見つからないが…
だが、最後に降りた人は見知った人だった
「んぁ!?鬼ヶ島くん!!」
見間違えることがない赤毛を鼻先まで隠した顔立ちは正しく鬼ヶ島くんそのものだった
しかし、服装が変わっていた
こちらに来た時のようなワイシャツに黒いエプロンと、ジーパンの姿のはずが、何故か今はジーパンだけとなっていた
靴も履いていないその姿は、全裸で拷問された後にジーパンだけ履いて来たようなものだった
オマケに臭い
アザが残る体から発する匂いは風呂に2週間入らないと臭ってきそうな程で、汗臭さと泥と土、糞尿などの匂いが混じっていた
「あなたは…月光花様ですか?」
「あっはい」
「あなたの知り合いかもしれませんが、彼は重罪人です。ですが我が国王は慈愛に満ちたお方、罪状を”前線放置”にする決定がなされました」
放置────っ!?
「ほ、放置って…戦わせずに魔物の餌になれと!?」
「左様、彼のような”毒”ならば食べた魔物が毒で死ぬこと間違いないと作戦本部も嬉々揚々としていました」
ど、毒なわけが無い
そりゃ不思議と彼の個人情報は知らされていないが、酒は私より強いし、異世界に来ても怯えないし…
意外と彼は毒なのかな?
でもやっぱり否定しなきゃ、彼が何も出来ずに死ぬなんて意味がわからない
「彼は────」
「月光花さん、もういいですよ」
簡素な手錠をした赤毛が答えた
鬼ヶ島くんだ
「でも────」
「いいんです、俺は……いいんですよ」
何か言いかけたが、諦めた鬼ヶ島くんは笑って歩み始めた
「勇者候補達に伝えろ、この場一帯から離れ、他の救援に迎えと」
簡単な武装した兵士がそう言うと、伝令が走り出し、この場一帯を隔離させる
私はただ見守ることしか出来なかった
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森の中を歩く赤髪の男は呟いた
「仕事の時間だな」
青空を見上げながら、適当な作りの手枷をぶち破る
それと同時に糞尿の匂いに釣られてか、魔物が湧く
「優しく食らってくれよ?」
複数の獣型魔物は一目散に赤髪の男へ飛びかかる
肩、脇腹、腕、ふくらはぎ
牙が皮膚を貫き、血が噴出する
肉に到達すると噛む力も強くなり、骨へ骨へとえぐろうとする
しかし、いくら経っても骨まで行かず、上顎と下顎は閉じる
『グルル…?』
疑問はあれど、咀嚼を続ける魔物たちは赤髪の男を見定める
こいつは────なんだ?と
普通の人間のように骨がなく、血と肉しかない存在
そして腹は膨れるも、未だ残る口内の異物混入感
魔物は思う、何を食べたのかと
その疑問は、すぐに晴れた
腹は腫れ、破裂したからだ
「転移憑依術式発動・
赤髪の男がそう唱えると、破裂した複数の臓物を垂らし息絶えた魔物は一点に集中する
すると、そこに現れたのは獣
血のように真っ赤な獣は、赤髪の男に近づき、撫でて撫でてと頭を差し出す
「やる事やってからだ」
赤い獣は唸るも、元々指示があったのかすぐさまその場から走り去った
「…なんで求めたがるのかね」
赤髪の男は溜息をつき、呟きをこぼす
「まぁいい、俺は俺のやることをするか…」
女性の特異点への変化の監視、それはいつもの仕事とは一味違い、何が起こるかわからない未来に赤髪の男はほくそ笑んだ
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仕事だからな、世界を救うことも 黒煙草 @ONIMARU-kunituna
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