六、フラッシュ!
暫く時間が経過したが、少女は戻って来なかった。
日が暮れてから時間も経つだろうし、今日のところは終わりって感じなのかな?
タロウも付いて行ったから、晩御飯を済ませてお風呂に入って寝るのだろう。
だとしたら、これからは自由時間とも言えるのだけど、このお腹の満腹感をなんとかして欲しかったなぁ。
少しは慣れてきたけど、いつまでも消化しないこんにゃくを食べてるみたいだ。
あー、暇だし。ちょっくらステータスでも見てみるかな。
そう思って開いたステータスは、意外な事実を私に教えてくれる。
名称 『 』
種族 『空き瓶』
属性 『光』
耐久値 12/12
MP 20/20
スキル 【万物操作】【無機物ボディ】『精神耐性Lv1』『光魔法Lv1』『硬化Lv1』
何度か見直しても飽きたらず、ステータスを開けたり閉まったりを繰り返してみるも、そこには
どうして? 今の今まで表示されていなかったのに。
何が変わったの?
スキル欄を見ても新たなスキルを習得した形跡はない。
そもそも習得する時は、頭の中にお知らせしてくれる便利仕様だ。
耐久値を回復してもらった時か?
いや、その時もステータスを開いて確認したけど、
では、一体なにが原因で覚醒したのか。
まさか、あのタロウの唾液に特殊な成分が……。
そんな訳あるかーい。原因はこのお腹を満たす液体ね。
腹の皮が突っ張ったような気分にさせられる、満タンどどめ色の液体。
これはもしや、ポーションというものではなかろうか?
空のポーション瓶に注ぐ液体といえば、そう、ポーションなのである。
しかし、このどどめ色の液体がポーションか……そうじゃなくて。
なぜポーションを注いだら
うーん、そんな異世界の法則分かる訳ないでしょ。
それも、ポーションの空き瓶に押し込められた人の魂だなんて、こちらの世界の中でも異質な存在。
最初から常識が通用しないと考えていいだろう。
ここは発想の転換を。
そんな存在だったら、なにが起こっても不思議じゃないって事で、開き直っちゃおっかなー。
ポーション瓶の身体を持つ私がポーションを得た。
それは、燃料を得たのも同然。
然り、私は魔法が使えるようになったのだー!
うおぉー、今こそヘソを曲げた『光魔法Lv1』さんの機嫌を取る時よー!
光魔法さんよ、光れー!
━━ピカッ!
突如として発生した真っ白な光が、私の意識を刺激した。
ほっ? なんか光ったー!
光ったっていうか、よく分かんないけど光ったー!
げふんげふん。落ち着こう。
私の身体は、目を通して脳で見てる訳じゃない。
どんな
その感覚でもって、今、私の身体から光が照射されたのが分かった。
それによって、部屋が照らされたということも。
魔力の波動とでも言うべきだろうか。とりあえず、全身からなんか出たわ。
半ば確信を持ってステータスを開くと、
私の
ばんざーい、バンザーイ!
この世界で魔法を使う事ができたわよー。
ポーションの空き瓶にされて苦節一日……短いな。やっとこさ、異世界生活の一歩を踏み出した気分だ。
それは本当に喜ばしい事だけど、どうして魔法が使えたのだろう?
なんの魔法を使ったのかすら分からないけど、そんなんで魔法って使えるものなのかしら。
理由はともかく、魔法が使えたんだからいいじゃーん勢が脳内で騒いでるけど、私はしっかりと原理から理解しておこう勢に軍配を上げたい。
どうせ考える時間はあるんだから、この世界の法則を紐解いてやるわ。
魔法が使えたという事実は、ポーションを
その供給方法は少し特殊だけど、ポーションの空き瓶という私の特性を考えれば、そこまで不思議ではない気がしてくる。
それはいいのよ、それは。
問題は、誰がポーションを補給してくれるかよね。
自力で動けぬこの身体では、補給は全て外的要因任せだ。
本来は自身の持つ
かと言って魔法を使わず
魔法を使わずして、事態の進展はあり得ないだろう。
とりあえず、なんの魔法を使ったのか確認する
今のところ分かってるのは、
うーん、ステータスではないかな。
魔法を使った履歴とか残ってないかしら。着信履歴みたいに……ないですか。そうですか。
じゃあ、魔法リスト。
電話帳のように魔法が登録されてるリストも……ないですよね。そうですよね。
ちっ、デジタル化が進んでいないわね。脳内に文字列を浮かべられるってのに。
そーいうスキルでもあるかしらねー。
それとも『光魔法Lv1』のスキルとしてモヤッと定義されているだけで、あとはご自分でどうぞってなもんなのかな?
賢者の残した魔法書から、自発的に習得するしかないとか。
権利を売っぱらったら、遊んで暮らせるわねー。
じゃあ、魔法って作れるの?
作った魔法は誰が認めるの?
そして、私が放った魔法はなんだったの? 教えて、偉い人。
━━リーリーリー、コロコロ。
天に向かって問い掛けても、部屋の外から虫達の奏でる合唱が聞こえてくるだけだった。
これで、女神に反応されても困るんだけどね。
アイツはステータスの名称が『
ふぅ、スッキリした。
そもそもステータスも魔法も、女神が作ったって確定した訳じゃないしね。
単に、神様専用ツールとかで、色んな世界の神様もそれを使って自分の世界を管理してるのかもしれない。
前世にはなかったけど。
地球でそれを作り出したのは、なにゲイツとかよ多分。
さてと、そろそろ真面目に検証するか。
光魔法━━光れ。
闇に落ちた部屋の中を、一拍の光が埋め尽くす。
ふふふ……この魔法の名前は『フラッシュ』よ!
━━魔法『フラッシュ』を習得しました。
脳内のどこかに届いたステータスのお知らせに、私は確信を持ってドヤ顔を浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます