七、魔法は創るもの
ほーっほっほっほ! 魔法が使えたわ、魔法を創り出すことができたわー。
ステータスを見るとキッチリ
光魔法『フラッシュ』の
効果は、ただ光るだけ。
……ちょっと、待てぇい!
魔法を確立できたのは嬉しいけど、なんの役に立つのこれ? 天津飯に技を借りたい時だけじゃない?
うむむ、喜んだのも束の間。
より実践的な魔法を開発しなくてはならないわ。
━━スキル【魔法の才能】を習得しました。
あら? あら、嬉しい。私ってば、魔法の才能があったのねー。
なんでここにきて、習得ラッシュ?
魔法についてあーだこーだ考えたのが、功を奏したのか?
魔法について考えていると、ステータスと同じように文字列が思い浮かぶ。
光魔法
Lv1 『フラッシュ』MP2
ほわ? シンプル。そうじゃない。
これで、魔法が分かるってことじゃない? 魔法リストあったわ!
どうやら【魔法の才能】によるものみたいね。
自身の作り出した魔法の一覧が見れるスキル……いや、紙に書いとくわ!
本当にこれだけの効果なのかしら?
紙とペンを用意するだけでも一苦労する今の身体からすれば、そこそこ有用な気もするけど、もっと他に効果があると信じたい。
魔法の創造に補正が掛かるとかね。
魔法名と消費
別に名前付けなくても一回発動したしな、光魔法。
この難易度で魔法の権利売れんだろ。
例によって、ステータスに認められるかどうかってとこかしら。
他人が一から魔法を創造するよりは、確立した魔法を覚える方が遥かに楽とか?
それこそ呪文を唱えるだけで、誰でもその魔法を使う事ができる。
……でも、私ってば呪文の詠唱してなくね?
光れ! とは念じたけど、それが詠唱だったのかなぁ。
口頭詠唱じゃないし、勢い付けるために念じただけなんだけどな。
じゃあ、光れとか言わなくていいのかな━━ぬん!
あ、普通に光りましたね。これ詠唱いらないっすね。
なにせ、私が既に『フラッシュ』は光を放つ魔法だって知ってて、それを発動させようとする意思を明確にしてるから。
魔法自体は詠唱なしでもいけるな。無詠唱とか必要なかったですわー。
最後に検証として━━フレッシュ! もいっちょ、ファイア!
しーん。なにも起きません。
これは面白い結果だわ。
ぬん! で魔法が発動するのなら、フレッシュと言ったところで問題ないと思ったけど、言葉が紛らわし過ぎて意思が揺らいだ気がする。
ファイアに関しては覚えてもいない魔法であり、火の魔法というイメージが強すぎるので、引っ掛かりもしなかった感じだ。
魔法を使うにあたって、詠唱する意味が全くないってことではないのね。
適切な魔法を使用するための助け船となるのが詠唱なんだ。
ふむふむ、大体分かりました。
この世界での魔法は、呪文の詠唱が絶対に必要な訳じゃない。
ただし、設計図も無しにいきなり構築するような荒業になる。
それを補ったりガイドするのが、呪文を詠唱する意味。
普通に考えて、その為の呪文詠唱だものね。なんの不思議もなかったわ。
『フラッシュ』が詠唱なしでもいけるのは、恐らく簡単だから。
『光魔法Lv1』でも扱える魔法であり、『フラッシュ』を使った時に感じた「なんか出た」という感触も、全身から単に魔力的なものを無造作に放出しただけっぽかった。
もっと魔法レベルが上がれば、詠唱に頼らざるを得ない複雑な魔法も出てくるのだろう。
試行錯誤だな。こんがらがってきた。
それらを上手くこなすためには、【魔法の才能】も効果を発揮して欲しいものである。
むはー! ちょっと頭使ったかも。
生身の身体だったら、知恵熱出てたなこれ。私がんばった。
なんも考えずに、こんにゃくの上に寝転がりたいわー。
でもこれで、大分前進できたでしょう。
魔法を解明した事は、私の女神復讐大作戦の進行度合いを大躍進させたわ。
魔法を創るの楽しいしね。
このままバンバン作って光魔法のレベルも上げていきたいとこだけど、ステータス上の
この数値が回復するには、私の
ふと、自分のお腹のポーションに意識を向けてみると、どどめ色だった液体が橙色へと変化していた。
不思議と色が変わっているだけで量自体は変わっていなかった。
ははーん? 最初から疑問に思ってたけど、これは読めたわ。
魔女っ子が最初に用意したのは赤、黄、青の三色の液体。
それをわざわざ混ぜてから私に注いだ訳だけど、そのうちのどれかを消費したということ。
色合いから考えて、消費したのは青のポーション。
つまり、青のポーションが
それに、ポーションとは薬草を粉末にして水に溶かしたもの。
人間はそうするとことで薬草の効果を効率的に摂取するんだろうけど、
薬草の成分だけを吸収したので、水が残ったんだろう。
━━『薬学Lv1』を習得しました。
おお。オマケでスキルも覚えたぞ。
色の配分でポーションの効果を予想しただけなのに、薬学とか覚えるもんなんだね。
なんか得した気分。
あまり役に立たなそうなスキルだけど、あって損はないわよね。
考えるだけで有用かもしれないスキルを覚えられるのは、
スキルをたくさん覚えていけば、ポーションの空き瓶という状態でも自由に動き回れる時が来るかもしれない。
だって、物に意思は宿っていないんだから。
この意思は、世界の管理者たる女神にも届く刃とな……。
ガチャリ。
「どれどれ、どーなったかな?」
何度目か分からない私の女神復讐スローガンを、扉を開けて入ってきた魔女っ子に遮られる。
あら、いつの間にか朝になってたのね。
感覚を広げてみると、確かに朝の鳥達がチュンチュン囀ずっている声が聞こえる。
ふむ。この身体、時間の経過も曖昧かもね。
思ったよりも長い間考え事をしてたようだ。
その分、まんじりとも動けない精神的苦痛からは、回避しやすいのかもしれないけど。
「おや、ふーん。これは、どういう事だろう?」
台座から私を持ち上げた少女は、橙色になった中のポーションをかき混ぜるように振り回す。
ぐええ、三半規管はないだろうけど、なんとなく気持ち悪いわ。
揺すられたというよりは、お腹の中のポーションがちゃぷちゃぷいうのが気持ち悪い。
まるで、腹に詰め込まれたこんにゃくが暴れているようだ。
一頻り液体をかき混ぜたり、じーっと眺めてみたりとした後に、少女は中のポーションを捨ててしまった。
はー、スッキリした。
って、これダメじゃない!?
慌ててステータスを確認すると、案の定表示されていた筈の
おーまいごー! 私は異世界の迷子です。
せっかく魔法を使えるようになったと思ったのに、こんな致命的な弱点があったなんて。
考えてみれば、当たり前である。
胃の中が軽くなったような錯覚に見舞われると同時に、中身がなくなった喪失感もちょっとあるわ。
私ってば、まじポーション瓶。
「もう一度、見てみよう」
そう思ってたら、おかわりきたー!
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