第20話 初依頼
目を覚まし、冒険者ギルドに向かう。ミアさんは既に準備を終えているようだった。
「遅いよ~。早く出発してささっと依頼を終わらせよ~」
「お待たせしてしまって申し訳ありません。それで、今日は何をするんですか?」
まだ依頼内容を知らない僕はミアさんに依頼内容を尋ねる。
「今日は、冒険者の基本となる薬草取りと簡単な魔物の討伐をやるよ~。そういえばお兄さんの名前聞いてなかったね~」
「そうでしたね。僕の名前は柴久遠です」
「そっか~なら、シバだね。ミアの名前はミアだよ~。改めてよろしく」
自己紹介を終えた後、ミアさんに連れられ冒険者として基本的な準備について教えられた。
「今回みたいに一人か二人で依頼を受ける場合はあまり遠くに行かないこと、それと携帯食料を持っておいて半日以内で終わる依頼を受けるのが基本だよ~。あとは解毒薬とか消毒薬とか応急手当ができる道具を常に用意しておくといいよ~。そういえばシバの武器は何?」
僕の武器か……そういえば森で戦った時に使っていた剣は失くしてしまっていたんだった。
「基本的には剣を使っています」
「なら、ギルドで借りよっか~」
どうやら新人で手持ちがほとんどなく武器のない冒険者にギルドが武器をレンタルしているようだった。レンタル料を依頼達成料から差し引かれるものの、今の僕にはありがたい制度だ。
応急手当のための道具と武器をそろえた後、僕とミアさんは依頼達成のために森に向かうのだった。
***
「これが一般的な薬草に使われるキュアット草だよ~。こっちのプリティ草はキュアット草と組み合わせると美容液を作ることが出来るんだ~」
「へー、何かその美容液使うとプリティでキュアキュアになれそうですね」
「何言ってるの~。プリティ草は高く売れるからできるだけ見つけたら取るといいよ~」
森の中でミアさんから植物に関する説明を受けながら薬草を集める。
薬草は最初にやる依頼ということもあり簡単に集めることが出来た。
「シバは中々手際が良いね~。伝説の薬草スレイヤーを思い出したよ~」
「え?薬草スレイヤー?薬草を殺す奴が伝説になってるんですか?」
いや、薬草ハンターじゃないの?と思っている僕を無視してミアさんは森の中へ入っていく。
「うるさいな~。それより次は魔物を討伐するよ~」
ミアさんに着いて暫く歩くと、森の奥に一匹のイノシシの姿が見えた。
「じゃあ、シバあそこにいる
「え?うわあああ!!」
ミアさんに蹴り飛ばされて猪の前に僕が転がっていく。
「ミアさん!何するんですか!?」
「ごめんね~。それより、早く構えないと来ちゃうよ~」
ミアさんに言われ後ろを振り返ると、そこには鼻息を荒くして僕を襲おうとしている猪の姿があった。
「く、くそ!!」
腰にさしてある剣を構えて、猪の突進に備える。
ブルアアア!!
落ち着け、猪は確かに速いが動きは基本的に真っすぐだ。
真っすぐと猪の動きを見て最小限の動きで躱す。躱された猪は急ブレーキして、再び僕に突進してこようとする。僕は猪が急ブレーキしている間に木の前に移動する。
ブルアアアア!!
一度避けられたことに怒っているのか、再び猪が雄たけびを上げて僕に突進してくる。それを先ほどと同様に避ける。猪は止まることが出来ずに木にぶつかった。木はメキメキと音を立てて倒れる。しかし、猪の身体は木と衝突したことで一瞬動きが止まった。
「貰ったあああ!!」
その隙をつき、僕は猪の頭部目掛けて剣を振り下ろした。
プギャアアア!!
猪は剣を避けることも出来ず断末魔を上げて動かなくなった。
おお、倒せた。王城での訓練もあったから多少動けるとは思っていたけれど、一人でも魔物を倒せるとは思っていなかった。
「ミアさん!僕やりましたよ!!」
嬉しくなってミアさんに声を掛ける。
「うんうん。シバは凄いね~。でも、さっきの声で他の暴食猪にシンの居場所がばれちゃったみたい~」
「え……?」
ミアさんに言われ周りを見ると、三匹の猪が僕に向けて突進しようとしていた。
「ひょええええ!!」
三連続で何とか猪を躱す。
「ちょ、ちょっとミアさん!助けてくださーい!!」
「冒険者になるならそれくらいは捌けるようにならないとね~」
どうやらミアさんの手助けは期待できないみたいだ。なら、さっきと同じように一匹ずつ倒してやる!
素早く木の前に移動し猪を待ち構える。すると、早速一匹の猪が突っ込んできた。
猪を躱し、木に衝突した猪を斬ろうとしたその時、他の猪が僕に向かって突進してくる姿が見えた。
「あ……ぶなっ!!!」
横っ飛びでギリギリで躱す。しかし、その躱した先にはもう一匹の猪が突進してきていた。
「がはっ……!!」
避けきることができず吹き飛ばされる。かろうじて剣でガードをしたもののそのダメージは軽くはなかった。
剣を支えにして立ち上げる。猪たちは追撃を加えようと既にこっちに突進する準備を整えていた。
どうする……?一対一なら勝てるけど……どうやって一対一にもっていけばいい?
困っているところにミアさんから助言をもらった。
「シバ~。シバの武器はその手に持っている剣だけじゃないでしょ~。持っている手は全部使って立ち回るんだよ~」
なるほど……なら、こいつを使ってみるか。
腰に掛けてある短剣に手をかける。
ブルアアアア!!
そして、ついに一匹の猪が突進してきた。
先ほどと同様に木の前に移動して猪を待ち構える。一匹目の猪を躱した後、こっちに突進しようとしている猪に短剣を放つ。その短剣は猪の足に刺さったようで、その猪はその場に崩れ落ちる。その隙に木に衝突した猪を斬り、残る一匹の猪の突進に備える。
残る一匹の猪は既に突進してきていたが、さっきと違い二匹目の突進が無かった分僕には余裕が残っていた。その突進を躱し、一対一の状況を作る。そこで猪は自分の不利を悟ったのかその場から逃げていった。
「シバ~そこで倒れている猪にしっかりととどめをさしなよ~」
ミアさんに言われ、地面でもがいている猪にとどめを刺し足に刺さっている短剣を回収する。すると、ミアさんが僕のもとにやってきて労いの言葉をかけてくれた。
「お疲れ様~いい動きだったよ。シバはどこかで魔物を討伐したことがあるの~?」
「あー、はい。村では魔物が出ることもあったので……」
「ふ~ん。じゃあ、最後に魔物の討伐証明部位について説明するね~」
その後、ミアさんから魔物を討伐した証を持って帰る必要があることや討伐した魔物の皮や肉などはギルドで買い取ってもらえることを教えてもらった。
村育ちなのに魔物の解体方法を知らない僕にミアさんが疑いの目を向けてきたときは冷や冷やしたものの、特にミアさんからの追及はなかった。
「よ~し。これで今日の依頼は終わりだよ~。もうお昼過ぎだし帰ろっか~」
「はい!」
暴食猪の素材をできるだけ集めた後、僕らは森を街に帰った。
***
「シバさん、ミアさん!お疲れさまでした!!」
ギルドの受付に向かうと昨日と同じ受付嬢がいた。
「それでは、シバさん。ギルドカードと今回の活動について教えてください!」
受付嬢にギルドカードを渡し、今日の活動について簡単に説明する。
「おお!暴食猪を狩ったんですか!?それは凄いですね!では、こちらの薬草と暴食猪の素材は全てギルド買取でよろしいですか?」
「はい。お願いします」
「はい!かしこまりました!それでは、武器のレンタル料を差し引いたこちらの金額を受け取りください」
そう言ってギルドの職員さんからは金額を受け取る。思ったよりもその金額は多く、三日は何とか生きていけるくらいのお金はあった。
「それでは、次回以降の依頼もお願いします!」
受付嬢さんにお辞儀をして、僕はミアさんのもとに向かった。
「ミアさん!昨日と今日でお世話になったのでよかったらご飯をごちそうさせてください」
「いいの~じゃあ、早速ご飯を食べにいこっか~」
後に僕はこの選択を後悔することになるが、今はまだそのことを知ることが出来るわけもなかった。
最強、最大にして最高の一撃を求めて わだち @cbaseball7
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