「課長」


「お、おま、おまえら」


「なんすか」


「さっき芽塚のことを名前で呼んでたな。まさかふたりとも付き合って、付き合ってるのかあああうわあああ」


「ええ。さっき藤凪くんとはお別れさせていただきました」


「うわあああ、あ、え?」


「ね。本当だったでしょ?」


「ああ。本当だな。こんな反応してたのか課長は。いやあ、顔見てないから全然分からなかった。ありがとう百合」


「課長のほうが美人でしょ」


「いや、それはなんともいえん。お前も美人だし」


「うわあああもうやめて。課長の前でノロケないで。課長しんじゃうからうわあああ」


「課長。条件があります」


「ちょっと藤凪くん、なにを」


「籍は、百合のほうに入れます。さっき俺は百合に駄目元でプロポーズするはずだったし」


「だめよ藤凪くん。私とは友達に」


「友達みたいな夫婦ってことでいいだろ」


「それはだめよ。動画で言ってたもん。友達みたいな夫婦はだめだって」


「俺の目と夢よりも動画を信じるのか?」


「でも」


「俺は、お前を追っても二度と追いつけないところに逃がしたくない」


「ねえごめんなさい。課長ぜんぜん意味わかんないよ。課長ぜんぜん、なにが、え?」


「あ、報告書。もう出来上がってるんで、いま出します」


「えっありがとう。もうよくわかんない」


「藤凪くん。籍は」


「課長には報告書を出す。お前には婚姻届を出す。嫌とは言わせねえぞ」


「うわあああやっぱりもうだめ。課長もうむり。仕事やめるっ」


「待って課長。大丈夫。藤凪くんは共用にするから。お風呂付きで」


「うわあああ共用。えっ共用。わたしも、いいの?」


「人を安い賃貸みたいに言うんじゃねぇよ。あれ、ちょっと待てよ」


「どうしたの藤凪くん」


「報告書のデータがない。予備も消えてる」


「えっ」


「追っても二度と追いつけないって、もしかして、このデータのことか?」


「こらあああ。藤凪。今すぐデータ取り直してこいいい」


「いや無理です。予知夢的に」





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予知夢と観察眼 春嵐 @aiot3110

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