生活綴方
秋野清瑞
第1話 ××山
「××山」に行った。
××山とは、山、といいつつも丘のようなもので、丘全体が公的に整備され一つの公園になっている。そこに叔母といとこ二人、それと妹と弟で遊びに行った。お目当ては動物だ。××山では動物が飼育されており、それらを無料でみることができるのだそうだ。実はこのメンバーの中でただ一人私だけが××山に行ったことがない。いや、小さなころに行ったことことはあるのだろうが、どうにも記憶がないのである。少しの緊張と期待を最年少の小4に悟られないようにすまして車内に乗り込んだ。
突然だが、私は動物にはレア度というものがあると思う。カードゲームでは遭遇する可能性が低いキャラのカードをレアカードと呼び、そのカードに当たればテンションがあがる。そして動物にも普段の生活で出会う確率が高いもの、低いものがいる。つまり、動物にも「レア度」なるものがあるということだ。例えば、レア度1の動物は犬や猫、ハムスターである。これがレア度2になるとウサギとかモルモット、鶏などが入ってくる。レア度とその動物の愛くるしさとは関わりはないし、レア度が低いものがいけないということでは決してない。しかし、レア度の高い動物を見るとテンションが上がるのが人間の性である。
さて、××山の入り口を通る。
入るとすぐ目の前に大きな池が広がっていた。そしてそこには、噛みつくことがあるので離れてください。という看板とともに白鳥がいた。ああ、やはり。まあ、こんなものかと思いながら、白鳥にこんにちは。と頭を下げる。
田舎であれば白鳥はレア度2である。
レア度が高い動物は、当たり前であるが日常では出会わない。そのため人々は金を払って動物園へ彼らを見に行く。レアな動物がいればいるほど、その動物園の入場料は高くなる。それが世の摂理なのである。一方、××山は無料なのだ。
世の中とはやはりそうなのである。無料の公園にレア度3以上はいない。むしろ、レア度1や2の動物でも彼らが生きていくにはいくらもか金がかかる。それらを無料で見せてくれることに感謝しなければ。ああ、なんだか白鳥も尊いものに見えてきた。レア度2でも1でも今の私ならすべてに感謝できる。むしろ、日常の動物を見つめ目直すいい機会なんじゃないか・・・鹿!!
鹿だ。日常的な動物に対する見方を考えながら池の横の坂道を上っていた私の前に、突如鹿が現れたのだ。いや、うっすらとは網の向こうに何かいるとは思っていた。しかし、そこは公園。犬だろうと思っていた。だが、鹿である。レア度3!テンションが上がる。
すごい。鹿を飼っているなんて、××山すごい、いいもの見れた。しかし、期待してはいけない。次の柵の向こうは多分ウサギである。レア度2。浮かれるな、浮かれるな、浮かれ・・・カンガルー!
あのカンガルーである。レア度5を誇るカンガルーである。レア度にも驚きだが、オーストラリアの動物が極寒の△△県で過ごせているのも驚きである。
その後も、豚、ロバ、ウサギ、ヤギ、ポニー、鶏などレア度の高いものから低いものまで、次々と私の目の前に現れた。もう一度言うがここは無料なのである。大丈夫か採算は合っているのか?かなり心配になる。
そんなわたしの心配をよそに上空からは人らしからぬ何かがこちらを覗いていた。「ヒトか。最近じゃめずらしいな。」「ええ、当園自慢の”同種にテンションの上がるヒト”という展示でございます。」「ふん、そんな狭い星に住んでんのに珍しいも何もあるかねえ。」「まあ、そこはヒトですから。」
といったことはなく、わたしがその後旅行で訪れた高知県の「ワンパーク高知」という入場無料の動物園にはライオン、シマウマ、チンパンジーなどなどが君臨しており、こういった場所は結構あるのかもしれないなと思った。
生活綴方 秋野清瑞 @rirontohouhou
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