たまごのように

雨世界

1 弱さと優しさと未熟さと

 たまごのように


 プロローグ  


 弱さと優しさと未熟さと


 しっかりと私のことを受け止めて。……ちゃんと、私のことを抱きしめて。


 本編


 あなたは未熟なんだよ。


 そんなんじゃ、きっと、割れちゃうよ? いつか、必ず。どこかでね。


 真っ白な思い出


 あなたは私の手をぎゅっと握った。

 とても弱い力で。でも、とても強い意志を持って。


 私があなたに恋をしたのは、小学校五年生のころだった。

 あなたは、とても弱い人だった。


 ひとりじゃ絶対に行きていけないような、そんなすごく弱い人。泣き虫で、細くって、繊細で、心が弱くて、いつも人の目を気にしているような人だった。


 でも、あなたはとても優しかった。


 あなたはとても、真面目だった。すごく真面目な頑張り屋さんだった。(私は、そんなあなたのことが、本当に、すごいな、って、本当にかっこいいな、と思った。本当だよ)

 でも、(臆病者の)私は結局、あなたに告白できなかった。

 私の初恋は、片思いのままで、成熟はしなかった。


 私は高校生になった。

 

 十七歳になった今も、私はあなたのことが大好きなままだった。(だから、当時あなたに恋の告白をしなかったことを私は今、とても後悔していた)


 十七歳になった今も、私は子供のままだった。

 

 当時から、ずっとほかの誰よりも純粋に見えたあなたは、私と同じ十七歳になった今、どんな人になっているだろうって、そんなことを私はよく、学校に通学するとき、考えていた。


 あなたと再会したとき、あなたはやっぱり、子供のままだった。


 そのことを知って、私はなんだかすごく安心するのと同時に、とても不安な気持ちになった。

(成熟しないまま、ずっと子供のままで生きていけるほど、世界はみんなに優しくないことを、もう今の私は知識としても、経験的にも知っていたからだ)


 私は大人になろうと思った。


 ……そして、あなたにも大人になってもらいたいと思った。


 大好きなあなたに。


 成熟した私の姿を見てもらいたいと思った。(あなたの成熟した姿を、しっかりと、ちゃんと、この目でみたいとも思った)

 ……愛しているから。


 これからもずっと、あなたに、……生きていてほしいと、心から、私は今日、そう思った。


 たまごのように 終わり

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