第4話 思い違い
「お前さ、もっと動いて打てよ。」
体調が悪かったあの日に決まったバレーボールのチーム。
クラスの友好を深めるためにと男女混合で組まれた中には、うちの苦手な柳田もいる。チームによって戦略は違うけれど、運動神経が比較的良い男子になるべく打たせようとするチームと、その能力を生かして球拾いを任せる2つのチームが多く、うちのチームは後者だ。
「俺ら拾ってもお前が打たないんじゃ意味ねーじゃん。」
図星過ぎて何も言い返せない。
「お前が」...ね...
私以外の女子、杏夾と凛ちゃんは打ててるし、男子3人のカットやパスも連携があっているのに私だけ打てていないのだ。
目の前に来たボールしか取りに行くことができない。少し距離が離れるだけで、ボールに対して体が動かなくなってしまう。
練習するのは今日が初めてではなくて、最初はパスからだったのだが、今はほとんどのチームがスパイクとブロックの練習をしている。
自分の動きが悪いことはわかっているから練習を頑張っているのに、
そこを言われてしまうと涙さえ出てきそうになる。
「...ない。バレーボールできない。」
「...梨央?ちょっと休憩してくるね!練習続けててもらっていいから!」
半泣きで辞めたいと言っている私を見た梨央に助け舟を出され、
なんとか体育館から抜けてきた。一気に体が重くなる。
「梨央ぉ。かえりたい。もうやだ。」
「頑張ってるよ。大丈夫。」
優しく声をかけてくれる杏夾に安心感を覚える。
少しだけ落ち着いたけど、
「そんなに打ててないかな。」
もうやりたくないけど、迷惑をかけるのも嫌だ。できるもんならやってやりたい。
どうしたらいいのかわからなくて、モヤモヤと湧いているこの気持ちをポツリと口にすると、
「打てるのに目の前の球しか拾わないからじゃない?
打てるんだからもっとどんどん決めればいいのに。なんで打たないの?」
私って打ててるの?
意外だった。もっと打てばいいなんて。
もし、うちが行って落としてしまったら。2人の邪魔になってしまったら。
出しゃばりで目立ちたがる迷惑なやつにはなりたくない。そう思っていたから、
杏夾がそんな風に思っているなんて考えもしなかった。
「そんなこと考えてたの?杏夾のこと迷惑なんてうちも凛ちゃんも思ってないよ〜」
けらけらと無邪気そうに笑う杏夾につられて笑うと、少しだけ体が軽くなったような気がする。
「杏夾なら大丈夫だよ。練習戻れる?」
全く迷惑だと思ってないなんてことはないと思うけど、それでも杏夾が行ったことが完全な嘘ではないと思いたい。
応援してくれている杏夾の気持ちに答えたい。
すぐにできるようにはならないと思うけど、少しでも良くなることを期待して、
もう一度体育館へと戻った。
私の居場所 泉 瀬奈 @hello_luna
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