第24話 冒険者登録、そして偽装と抜け出し
「あの留学生の娘が気になるの?」
「気になると言えば気になるってくらいかな。今はそれよりも考えたいことがあるし」
お昼のカフェテリア、そこでラウラと2人で昼食を取りながら朝のことについて考えていた。
何故かはわからないが、誰もサラ・フォン・ランテンプルの事を覚えておらず彼女のことを遠い異国からやって来た留学生として歓迎していた。
何らかの魔法で認識阻害をかけているようだが、果たしてソレがいつかけられたものなのかが分からないのだ。
もしかしたら初対面時に既に認識阻害を行っており今は素の状態で我々と接しているのかもしれない。
現に今は大規模魔法の兆候は感じられないわけだし。
これ以上サラのことについて考えても何も得られるものはない。今の自分が考えるべきはどうやって学園を抜け出してダンジョンに採掘にいくか、ということだ。
マルの外見を私そっくりにして代わりに授業に出てもらう――というのは流石に無理だろう。
さらに資源採掘用のダンジョンに潜るには冒険者ギルドに登録する必要がある。
これが一研究者だったら冒険者登録なんて当たり前のように出来る事なのだが、貴族令嬢ともなれば難しい。
あー、どうしたものか。
「おとぎ話とかでさぁ、令嬢が身分を偽って庶民の男と街中を出歩いてたりするけど、あれどーやってんだろうね」
こういう時は新鮮な意見を取り入れてみよう。そう考えてフルーツサラダのバナナにフォークを刺そうとしていたラウラに話をふる。
「あの小説のこと? 私みたいな男爵家なら何とかなりそうだけど、公爵家だと難しいそうだよね」
「大衆に貴族の見分けってつくもんかな?」
「わかるものだよ。繰り返しになるけど私のような貧乏貴族だったら普通に紛れ込めるけど、公爵貴族ともなれば一目で住む世界が違うってわかるし、貴族ウォッチが趣味な人も結構いるから顔を覚えられてるからすぐにバレるだろうね」
はー、貴族ウォッチャーなんてものもあるのか。
が、それならアルマという貴族が街中を出歩いてもバレることなさそうだな。
これまで何ら外に存在を知らせることはしてこなかったし、事実リリウムは私の存在を知らなかった。
だったら問題となるのは、どうやって身内を誤魔化すかということか。
「貴族の顔ってそんな目立つものなのかな?」
「そりゃあ美男美女が多いからね。アルマはその中でも特に目立つだろうけど」
うーん、やっぱり見た目が目立ち過ぎっちゃってるかあ。
いやだったら、もしかして?
「やれないことはないのか?」
「?」
アイデアを思い付いたらすぐに実行したい気持ちを抑えられず、サンドイッチを無理矢理口に詰めて困惑しているラウラに手を振り私室へ戻る。
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