第4話 雷人里襲撃編2

「助けて!」


逃げ惑う女性の声

その中に混じる子どもの泣き声


今、戦える大人の男が出払った隙を突いて、雷人の里は襲撃されていた


国際条約で製造が禁止された対雷人を想定した兵器__対雷人戦闘鎧アンチサンダーマンアーマー__によるものだ


その製作者怨寺博士は、燃える森を眺めながら高笑いしていた。


「そうだ、殺せ!対雷人戦闘鎧アンチサンダーマンアーマー!!

通称雷人、学名ホモ・ライトニクス共を一人残らず!!」


愉快そうに笑みを浮かべていた。

地獄のような惨状の中で、その男はそれが楽しいことであるかのように。


「お前だな!里をこんなにしてくれたのは!!」


そこに現れたのは二人の少年

戸籍を認められない、ホモ・サピエンスとは違う知性持つ類人猿

権と正一である。


「出たな、ホモ・ライトニクス

あやつらを縊り殺してしまえ!!」


怨寺博士はあらん限りの声で叫び、自らの下僕に命令を下す


2体の大男が上空から現れて、権と正一を掴まえにかかる。

2人は俊敏な動作で躱してから敵を蹴り飛ばす。


対雷人戦闘鎧の持つ皮膚の弾性に、2人の攻撃は敢え無く弾かれた。


自身の攻撃の威力で吹き飛びながらも、受け身を取り電撃を飛ばすが、一向に効いた様子がない


「お前たちの強みは、人類の持ち得ぬ俊敏性、そしてあらゆる機械を破壊する磁力、自然界の雷に匹敵する発電能力!」


博士は語りだす

まるで、子供がおもちゃの性能を喜んで親に語り聞かせるかのように


「お前たちの性能は学習した、あの日妻と息子を奪われたその時に!

だから対策した、お前たちの電撃と打撃に耐えられるゴムの皮膚!

お前たちを上回る圧倒的パワーを持つ筋肉!!

遺伝子工学を用いて、後天的に付与してやってな」


身長2mを超す大男が、14歳の少年2人にのそりと近付く。


逃げて振り切る事はできる。

だが、それでは里を守れない。

女子供が、まだ逃げ遅れている。


だから2人の少年は、戦う肚をもう一度括った。

これ以上、目の前の悲劇を広げぬ為に。


「ウォォォ!」


権が対雷人戦闘鎧と殴り合う

一撃一撃弾性に弾き飛ばされるが、少しでもゴムの皮膚の装甲が薄い場所を探すために


正一は雷撃を再度繰り出す。

電気の通りが良い場所がないか?

それを探すために。


だが、現実は虚しく、2人の攻撃は有効打にならない。

対雷人戦闘鎧も動く、咄嗟に防御に腕を交差させる2人。


大振りだが、想定外の速さと重さに、木々をぶち折りながら身体が大きく吹き飛ばされる。

ゴムのような皮膚の弾性が、筋肉による加速を押し上げたのだ。


「対雷人戦闘鎧が、ホモ・ライトロニクスに対して、メスのみならず、それなりに戦闘訓練を積んだオスにも有効というデータが取れた!

お前達には例を言うぞ!!」


「お前はなんだ! 

ホモ・ライトロニクスだ、メスだオスだと、俺達を動物のように言いやがって!!」


体勢を立て直して権が吠える


「そうだ、お前達は動物だ、ホモ・サピエンスとは違う類人猿だ!

南米大陸を発祥とし、収斂進化で姿が似ただけの、遺伝子の違いにして5%もの有意な差が見られる類人猿!

お前達は私が絶滅させてやる!!」


暴走した復讐鬼は止まらない。

博士は指先で指示を出すと、対雷人戦闘鎧アンチサンダーマンアーマーに追撃させる。


躱すのも容易ではない、だが防ぐだけでは一方的にダメージが蓄積する。


だから逃げるように、全力で躱す。

反撃した所で、有効打を与えられる訳では無いのだから、回避に全精力を傾ける。


ただし、それでは時間稼ぎにしかならない。


策はある。

雷撃で、打撃で、有効打になりそうな場所には目星をつけてある。

そこに自分たちの持てる最大火力を注ぎ込み倒す。


僅かな勝機を掴むため、少年達は足に力を込める


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