第2話~謎の焼死体編~ 後半


「そういうことだ。

 てめえら下等種族かとうしゅぞくとは、出来が違うのさ! 」


 突如として、雷鳴が鳴る。

 警部二人の前に、少年達は腕を交差し立っている。


「あんたが、連続殺人の犯人だな? 」


「そうだ、俺様はサトシ

 下等種族に、俺達おれたち雷人らいじんの力を見せつけるのは、快感だろ?

 なんでそれが分からない? 」


 権が一歩前に進み、襲撃者に問い掛け。

 襲撃者は、それに胸を張って答える。


「分からないな

 弱いものを苛めて、何が楽しいんだ? 」


 ごんは、嫌悪の表情をあらわにして答える。


「ソイツは勿体無いね、まあ良いんだけどさ

 山中やまなか 深明しんめいの弟子二人、殺してはくをつけるには丁度良い相手だ 」


 サトシは舌舐めずりをして、掌を突き出す。

 そして、そこから放電が生じ、権達を襲う。

 少年達は、腕を交差して防御する。


「正ちゃんは、刑事さん達の護衛だよ。

 あくまで、あんたの相手をするのは俺だ 」


 権は、深く腰を落とし構えた。


雷人らいじんに、放電の効果は薄い。

 常識だろ、さっさとかかってきな 」


 サトシのいた地点から、土煙が上がる。

 一瞬にして権の正面に接近し、拳を振り上げている。


 ごんは、サトシの拳を身体を振ってかわし、カウンターで顔面に掌底を入れた。


「痛っ! 」


 サトシは、飛び退いて距離を取る。

 けれども権は、敵の後退に合わせて踏み込み、休むことを許さない。


 左前手の喉突き、ついで鳩尾への右正拳、二連続の攻撃に、サトシは苦しそうな声を上げる。


「ま、参った!

 悪かった、許してくれ!! 」


 サトシはたまらず、降参する。


「あんたに殺された被害者の苦しみは、こんな物じゃ無かった筈だ

 罪は償ってもらうぞ 」


 直接頭部に電気を流して、サトシを気絶させる。

 放電に耐性がある雷人といえど、至近距離で頭に流せば、気絶するのだ。


「ば、化け物め!

 喰らえ!! 」


 柏木が、銃を発砲する。

 けれども、権は何のアクションも示さない。


「柏木、何をやっとるんだ貴様! 」


 警部が、柏木の頭をどつく。

 柏木は、衝撃で銃を落として、取り乱す。


「申し訳ない、私の指導不足です」


 警部は、権達に頭を下げる。


「良いんだよ、その人も"雷人らいじん"を初めて見て、動揺したんだろ。

 そういう反応には、慣れてるよ 」


 権は口ではそう言いつつも、どこか寂しげな表情をしていた。



「……警部。

 殴りかかろうとしたことと、発砲した事。

 すみませんでした 」


 帰りの車の中で、柏木は警部に謝っていた。


「気にするな。

 俺にも、お前みたいな時期があった 」


「あれは、何なんですか? 」


 警部は、少し悩んでから声を出す。


「正直、俺にもよく分からん

 成り立ちから我々とは違う存在らしい、という事だけは聞いている 」


 柏木は身体を縮めて、ブルブルと震わせている。


「ヒーローの強さに脅えるとか、アニメや漫画の中だけの話と思ってました。

 今日初めて、思い知りましたよ。

 強大な"力"を目にすると、こんなにも怖いんですね 」


「蛇に睨まれたカエルってのは、案外そういう気分なのかもな。

 相手の敵意や殺意に関係無く、根元的な恐怖が沸いてくるんだろう 」


 車の中は、ヒーターがつけられ蒸し暑くすらあったが、柏木の震えが止まる様子はない。


「今すぐ克服しろ、とは言わない。

 今日の事を無かったことにしてもいい、彼らの存在を受け入れようとするのもいい。

 何を選ぶかは、お前の自由だ 」


 警部は、柏木の頭にポンポンと軽く触れる。

 けれどな、と一呼吸置いて警部が話す。


「権と正一君は、罪無き人々を傷付けた悪に怒り、我々人類を対等の存在と認めてくれる、心根の優しい少年達だ。

 そしてそれは、我々警察官にも求められる資質なんだよ 」


「分かっているんです

いえ、分かっているつもりなんです……」


 柏木はそれ以降、押し黙ってしまう。


 人類と、雷人の間にある"みぞ"。

 それはとても深く、埋めるのは容易では無いようだ。










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