第4話 水色短髪少女

 この世界には約700年前、魔王という存在が人々を恐怖のどん底に落とした。老若男女、大人子供問わず命を奪われ、畑は燃やし、荒らされ、建物は壊され、酷い殺され方をした。全人類、絶望を感じ生きることを諦めていた。

 そんな中、一人の男が立ち上がる。彼の名前はケンタ-タナカ。この世界では珍しい、黒髪黒目という容姿を持つ男だ。

 彼は魔王とその配下、無数の軍隊を一人で撃破する。

 人々は彼を英雄と読んだ。彼は人格も優れており、人々だけでなく、各国の王達も彼のことを気に入り、自分の娘を嫁に出したそうだ。

 魔王を倒した後の彼の生活はどの書物にも記載されて居ない。だが、沢山の嫁達に囲まれて平和に暮らしたと伝えられている。


 「はああぁ…」


 本を閉じて思わず溜息がでた。


 まったく、長い歴史がある世界なのに、ありきたり過ぎて驚いた。しかも、英雄の名前がケンタ-タナカって!!田中健太じゃん!

思いっきり日本人じゃん!まあ、僕以外に転生者がいたのはわかった。今もいるかはわからないけど、英雄さんは日本人なんだね。


 「マルム、この本ありがとね」


 マルムから借りた本を返す。マルムも近くで本を読んでいた。

 

「うん。いいよ!どうだった?英雄ケンタの伝記!」


 「ま、まあスゴイね…」


 確かにすごい。魔王に立ち向かえる勇気は凄い。転生者か転移者ならもしかしたらチート能力持っていて楽だったかもだけど…

 

 「勇者は凄いよね!数え切れない程の魔王軍に突っ込んで行くところなんてカッコいい!」


 「そうだね…」


 「あ、あと…黒髪黒目っていう容姿は珍しい、というか一人もいないらしいから、その、とってもカッコいいよね…」


 「え、あっ!…うん。」


 そういえば、勇者以外に黒髪黒目は存在しないらしいから、僕はこの世界の人達の興味の対象になるみたい。なんと、どこかの新聞には理想の男性の特徴ランキング1位が黒髪黒目だったらしい。マルムが言うには。


 (黒髪黒目にして良かったぁ…)


 わざわざ金髪とかにしなくて正確だった。





 転生4日目。今日も宿の手伝いをする。もちろん、この世界の情報を掻き集めながら。

マルムがいちいち可愛らしいので手伝いもやっていて楽しい。僕の容姿はやはり目立つらしいのですべて裏方なのだが。



 そして今日も何事もなく1日を終える。早く出ていこうと思っていたがもう少しだけ居候させてもらおうと思う。





 (はああ…今日もカルマはカッコ良かったなあ…ほんとにあんな美男子会ったことないよ…でも、気になるのは黒髪黒目。カッコいいけど、勇者以外に一人も居ないって言われてる。それなのにあの特徴ってことは…勇者の末裔?にしても、やっぱりカルマはカッコいい…)


 誰も居ないところで水色の短髪を手で触りながら照れているマルムは父親に覗かれていることに気づかない。


 (そういえば、カルマ、渡されのステータス見たいって言ってたなあ……暫く見てないから、どんなレベルか忘れちゃった。)


 「ステータス」


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【名前】 マルム

【性別】 女性

【種族】 ヒューマン

【年齢】 16歳

【魔力】 3

【速力】 2

【筋力】 2

【魔法】 水属性魔法Level1

【異能】 ー

【職業】 宿屋手伝い

【称号】 ー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「特に面白いものでもないなあ…」


 魔法は一人1つだけ必ず適性があるし、Level1は、ほぼ何もできないし…


 そういえば、英雄さんは火属性だったかなあ。ってことはカルマも火属性かもね。



 そんなことを思いながら頬を赤らめて天井を見上げるマルムであった。




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業《カルマ》〜キャラつくって転生しました〜 望月夜兎 @ichijo_

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