エピローグ

 俺が魔物連戦で手に入れたステータスはこうなっていた。


 ----------------- 


 ハンター:フユマ Lv55


 職業:剣士


 属性:龍


    滅龍波


 スキル:なし


     鋼魔龍ファフニール 


     メタル斬り


     武器形態変化メタモルフォーゼウエポン


     エリアポイントテレポート


     武装錬金術


     迷宮制御


 -----------------


 まず驚きなのが、レベルが27から55まで上がっていたことだ。


 55だぞ!? 30近く上がるなんてチートもいいところだ! 最初ステータスカードで確認した時には目が飛び出そうだった。

 

 ファフニールの言った通り、あの制御装置は本当に特別だったようだ。それも人間が授かることがないと言われる龍属性魔法付きだ。

 それで災厄と言われている魔龍を倒せたなんて、もう嬉しいとしか言いようがない。やっぱりファフニールダンジョンを攻略してよかったよ。




 *********************************




 そのエレシュキガルの戦いから三日後が経った。


「……起きて、フユマ」

「……ん? ああもう朝?」


 俺が目を覚めると、視界にレイアの顔があった。

 

 ここはファフニールダンジョン内で作った部屋。そして俺はベッドの中で眠っていて、そこにレイアが部屋に入ってきたようである。

 俺はベッドの中で上体を起こしたあと、大きく背伸びをした。


「んん~。やっぱり布団があると格別だよなぁ……」

「確かに」


 以前にこの部屋を【迷宮制御】で作った際、ふかふかの布団までは再現できなかった。これは古城にいるワーウルフに用意させてもらったものだ。

 布団がないと寝られないという訳でもないが、やはりあるとないとでは快適さが全く違う。それに暖かいことはいいことだ。


「ところでリミオ、まだ帰って来てないんだ?」

「うん、多分古城でお酒飲んでいると思う」

「あの人らしいな。さて、川で顔を洗おうかな」


 リミオは昨日、ジンと一緒に古城に戻っていた。レイアの様子などを報告すると言っていたな。

 つまり今いるのは俺とレイアだけ。……ああ、ファフニールがいるんだった。ダンジョンそのものになっているからパッとしないけど。


「……ねぇ、フユマ。あれでよかったの?」

「あれって?」

「あれはあれ。エレキシュガルを倒した功績。フユマが倒したことになってないんだけど……」

「ああ、あれね」

 


『強大なスキルを持った正体不明のハンターがいる』



 エレシュキガルを倒したあと、サージア街を中心にこんな噂が広まっていた。もちろんその正体不明のハンターとは俺のことだ。


 主にハンターの間で「あのハンターは何だったのか?」と模索することもあったが、中々俺に辿り着けられなかったらしい。

 答えは至ってシンプル。俺はハンターじゃないし、ギルド側したら『いない人間』になっているのだ。だから俺に関する情報なんて少ない。

 

 ハンターはともかくとしてサージア街の人間は俺のことを知っているが、まさかフユマがそこまでの活躍するなんて……と片付けられているようだ。一部は薄々感づいているようだが、いずれもアンデッド事件で活躍したハンター=フユマだと断定された訳ではない。


 しかしあの街に何度も運べば、いずれはバレるだろう。同じように活躍していたレイアもリミオも例外ではない。


 それについては朗報があった。ユウナさんがサージア街から別の街に異動したらしい。

 ギルドマスターがその街に人手が足りないと、ユウナさんに頼んでいた。ユウナさんも街に対して思うところがあったのか、二つ返事で了承したとか。


 一回その街に行ったことがあったが、そこには俺たちの噂なんて流れていなかった。

 つまり安全は保障されているのだ。


「俺はそういった名声の為に戦った訳じゃないからね。ただユウナさんやレイアたちを守りたかった、それだけだよ」

「……フユマらしいね、そういうところ好き」

「またまた、そんなこと言っちゃって」


 なんて冗談っぽく言った。


 ただレイアは笑みを崩さないまま、俺の隣に座る。

 じっと見つけてくる彼女。俺も思わず見つめ返すだけじゃなく、そっと彼女と密着する。


「レイア……」


 無性に……と言うべきか。そのままレイアを抱いて、布団の中に潜った。

 布団の中だとなおさらレイアの温もりが感じられるし、密着していると彼女の肌と吐息が当たる。それがまた気持ちいい……。


「レイア……好きだよ……」

「……うん」


 レイアを強く引き寄せてから、その薄い唇を塞いだ。

 唇をそっといじるように舐めて、その間に舌を入れてかき回す。レイアも俺の舌を触って、ゆっくりと絡めてくれた。


「ん……」


 目を閉じるレイア……愛おしいよ。

 長い長いキスを味わったあと、彼女からそっと離れた。こんなにも顔真っ赤にしちゃって……。


「どんなことをされたい?」

「……とにかく気持ちよくさせて……」

「了解」


 俺はレイアを仰向けにしてから、その片足を持ち上げた。

 色白でツヤツヤ……思わず舐めたくなってしまう。そっと口付ければレイアが恥ずかしそうによじる。


 そんなに感じてくれるなんて、俺はとっても嬉しいよ……。







「フフっ、こんなにも夢中になるなんてね。ユウナ、どう思う?」

「……えっ? えっと……ええ……」

「……ん?」


 おっと、リミオとユウナさんがいたのか。気付くの遅れてしまった。

 この場合慌てふためくのがお約束だが、俺は意外と冷静であった。だからかユウナさんが真っ赤になりながらも不審に思う。


「フ、フユマさん……もうちょっと慌ててもいいのでは……?」

「ああ……こういうことになるだろうなってのは予測できてましたし、そもそもファフニール見てますしね。そうだろファフニール?」

『ああ。一体を何をしているのかは分からなかったが』

「ファフニール様……それはちょっと……」


 ユウナさんはあれ以来ファフニールと知り合いになっていて、さらにこのダンジョンの詳細も把握するようになった。

 彼女も魔龍がダンジョンになっていたことに驚きを隠せなかったようだが、今となっては慣れている様子だ。


「魔龍ってそういうことやらなさそうだもんなぁ。……あっ、レイアは大丈夫だったかな?」

「前にワーウルフに見られたし、もう慣れている」

「君もかぁ」


 ますます親近感が湧くなぁ。

 そんな俺たちに呆れたのか、ユウナさんが首を振りつつも、


「えっとフユマさん、リミオさんとジンさんがギルドにやってきたので、ついでにこれを渡そうと。完売したポーションの金貨です」

「おっ、ポーション完売したんですね! すいません、ありがとうございます!」

「いえいえ、こちらとしてもポーションが販売できて嬉しいです。どうか受け取ってください」


 渡された袋の中を確認してみると、大量の金貨が入っていた。数十枚はあるぞ!

 内容にもよるが、ハンタークエストの報酬金が銀貨数枚前後となると、これは大金中の大金! こんなにも受け取られるなんて絶頂もんだ!


「わぁすごい……フユマやったね」

「ああ! これで祝杯でもあげようかな! ユウナさんの新しい街でやるのもいいかも!」

 

 朝っぱらから有頂天になっていたその時、

 ドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。それからほぼ同時に【人化】中のジンがやってきたのだが、どこか尋常ない雰囲気だ。


「ジン、どうしたんだ?」

「た、大変です叔父貴!! ダンジョン前に魔物の群れが押し寄せてきました! ボスは見る限り『デュラハン』です!!」

「デュラハン……首無しの鎧騎士だったな。それも上級の……」

 

 デュラハンとは、重装甲の鎧に邪悪な気が入り込んで動き出した魔人だ。

 その強さは、以前戦ったデリアと同程度かそれ以上らしい。


「ここに来たってことはダンジョンを乗っ取る為か……よし、追い払ってやるか」

「追い払うって……大丈夫なんですかフユマさん!?」

「ええ、俺にはこれがありますからね。すぐに終わりますよ」


 掲げたロングソードには【メタル斬り】の効果がある。そしてデュラハンは鎧をまとっている。

 どう考えても、負ける要素が見当たらない。


「行こうか皆。これが終わったら祝杯。それからダンジョン攻略だな」

「お供しますよ、叔父貴!!」

「分かったわ!」

「うん……!」


 捨て駒にされた俺だったが、今こうして仲間がたくさんいる。

 それに心強い魔龍もいる。


「ファフニール、今回も手伝ってくれよな」

『ああ、今回もお前の活躍に期待しているぞ』

「どうも。さてと……!」


 俺は止まる訳にはいかない。

 この命が尽きるまで、俺は新たな力を手に入れ続けるんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スキルゼロ剣士、捨て駒された後に魔龍が進化したダンジョン攻略 ―そして魔龍由来の特殊スキルで成り上がる― ミレニあん @yaranaikasan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ