うつ病は脳の疾患
うつ病の朝はつらい。毎朝目が覚めると「ああ、今日も一日が始まるのか……」と、ずっしりと重いおっくう感に襲われる 。それは、デイケアがある日もそうでない日も同じだ。
重い気分のまま、起き上がり、服を着替え、顔を洗い、洗濯機を回し、そうして一日が始まっていく。時間が経つにつれそれが薄れていくかというと、そうではない。重い気分は重いまま、身体を引きずるようにして、デイケアに行ったり、休みの日なら、ウォーキングに出かけたりする。
うつは気分の病気だから、この、重いおっくう感に振り回されて、一日中ベッドから起き上がれないという人もいる。だから、起き上がって、動けるだけ、私はそれでも随分と回復したということになる。ただ、おっくう感はそのままつきまとう。掃除や料理をするのはまだおっくうだし、洗濯物をたたむのもおっくうだ。
楽しいとかわくわくするとかいった感情が、湧いてこない。DVDを観たり、お茶を飲みに行ったりすると、少し気晴らしになる。でも、それ以外、これといって、何もかも忘れて夢中になることがない。敢えて言えば、今こうして文章を書いている間は楽しい。
理屈で考えれば、うつ病は脳の病気なのだから、脳の動きが正常になれば、自然と楽になり、元気になるはずだ。脳から「セロトニン」という物質がたくさん出ればうつは治るはずだ。うつ病の人はこの「セロトニン」不足で、脳内の働きがうまくいかなくなり、マイナス思考(ぐるぐる思考)ばかりするようになり、それにより脳が疲れてしまって、精神エネルギーが空になり、気力がなくなり、何もできなくなる。
だから、薬によって、この「セロトニン」を補うような治療を進めていく。これが薬を飲めばすぐよくなるかというと、そうはいかない。薬が効くまでに二週間は最低かかる。だから、その間、セロトニン不足の脳に苦しむことになる。この時期が一番危険な時期だ。あまりの苦しさのために自殺を考えるからである。だから、うつ病と診断されて、初めて薬が処方されてから、1か月くらいが一番つらい時期である。
この時期をどうやって乗り越えたか、正直あまりにつらくて思い出したくもないが、とにかく、どんなにつらく苦しくても、絶対「死なない」ということだけである。私はこの時期を入院もせず、一人で何とか乗り切ったが、デイケアで出会った人はほとんどが入院を経験していた。
私はよく、入院せずに乗り切ったと思う。奇跡だ。「死にたい」気持ちと、闘いながら、何とかあの時期を乗り切った。苦しかった。あの頃、毎日、父に電話したが、文句も言わずに受け止めてくれた父には本当に感謝している。あの時、父との電話がなかったら、入院するしかなくなっていただろうと思う。そして陰ながら心配してくれた母にも感謝している。いろいろあった、私たち親子だったが、このうつをきっかけに、長い間の確執は消え、感謝だけが残った。
実は私がうつになるのはこれで三度目だ。二度目になった時は、二度とならないように、気を付けてきたのに、まさか三度もなるとは……。神様を恨んだ。でも、なぜ、うつ病になってしまったかは、自分でもよくわかっている。ちょうど、今くらいの状態で、仕事を始めてしまったから、身体も心もついていかず、気が付いたらうつ病になっていた。今だったらもっとこうしていたのに、と悔やまれてならない。
だから、次は万全の態勢で仕事に臨みたい。だから、主治医の先生も、就労の許可をなかなか出してくれない。自分もそれがわかっている。
こうしていろいろ書いているうちに、一つわかったことがある。それは、娘の言うように、一人暮らしはやめて、実家の両親の元に戻る方がいいのか、それとも、バリバリ働いて、この一人暮らしを続けていきたいのか、少し迷っているということだ。迷うから、ぐるぐる思考がとまらない。今は、バリバリ働いて一人暮らしを続けていきたいという気持ちが強い。だったら、とりあずそういう方向で行こう。就労許可が出たら、少しずつ、仕事を増やして、何とか自分で生計を立てられるように、しよう。もし、それで、だめだったら、その時考えよう。
こうして方向性が決まると、マイナス思考(ぐるぐる思考)が止まる。そうすると、気持ちが落ち着く。
無理かどうかはやってみなければわからない。先のことでくよくよするのはやめよう。こうして書くことで、少しは割り切れる。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
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