★『いつか、あなたと手をつないで ~脱落令嬢と貧乏領主の前途多難な結婚生活~』綾束 乙さん
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(尾崎ゆうじの)
『第5回小説の「続きが気になる度」を評価してみた』
評価シート
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作者さんへ……このたびは企画にご参加いただきありがとうございます。
読者さんへ……本ページにお越しいただきありがとうございます。
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1 作品タイトル『いつか、あなたと手をつないで ~脱落令嬢と貧乏領主の前途多難な結婚生活~』
作者名: 綾束 乙さん
作品リンク
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887506513
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2 本作のキャッチコピーとあらすじ引用(抜粋)
(キャッチコピー引用)
結婚したのに問題山積み⁉ 不器用な二人のじれじれ両片思いな恋物語♡
(あらすじ引用)
「わたしには、どうしても貴女が必要なのです。どうか、わたしと結婚していただけませんか?」
ネーデルラント(現在のオランダ辺り)でも富裕なロズウィック家の令嬢でありながら、「令嬢失格」の烙印を押され、一人の求婚者もいないフェリエナ。
ある夜、兄とともに出席した舞踏会で、フェリエナにダンスを申し込んだのは、金の髪に群青の瞳の美青年、アドルだった。
ダンスの後、二人で出たテラスで、真っ直ぐにフェリエナを見つめ、アドルは告げる。
「フェリエナ嬢。どうか、わたしと結婚してくださいませんか?」
お互いに事情を抱える青年領主と脱落令嬢の、すれ違い満載の、じれじれ両想いな結婚生活の行方は⁉
~作者の独断による五段階(?)評価~
(中略です)
カクヨム×魔法のiランドコンテスト、中間選考突破作品
(以上引用でした)
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3 尾崎が作品を最初に読んだ日:
2020年 10月 11日
4 各項目の評価・採点(各最高15ポイント(⑦のみ10ポイント)):
・評価モードはハード。作者さんによると、過去にとあるコンテストの最終選考で落ちてしまった作品なので、その理由がわかればいいなぁ……というお話でした。(2年前)
全部読まずに企画内でそれが判明するかはわかりませんが、期待しつつ評価していきたいと思います。
ハードモードなので、さほど言葉を選ばずに気になったことはバシバシ、という淡泊な書き方が増えると思います。読者のみなさんでさえも「なんか癇に障る……」と感じる部分があるかもですが、ご容赦ください。効率重視です。
女性向けの作品なので、そのへんも難しいところですね。あまり市場に詳しくないので、適切な答えを出せるかは微妙です。
時間内でするする読めるのがこの作者さんの特徴。わかりやすくて、読みやすい。
最初から5話の途中まで読めたので、そのまま頑張って5話の最後まで突っ切りました。結果的に、読めた範囲だけではこれといった明確な原因を見つけるには至りませんでした。
あるとすれば、スロースタート、ということでしょうか。
①[タイトルやあらすじなど……13pt/15pt]
サブタイトルわかりやすくていいと思います。メインの方は、可もなく不可もなく。とはいえ2年前の時点でPVは取れているだろうと思うので、そこまで気にしなくてよいかも。
キャッチコピーが最高ですね。両片思い、はいまいち状況がわからないけど、そこだけがわからないという部分が逆にそれなりの興味をそそります。結婚がゴールでなくてスタートですね。
あらすじはちょっと足りないかなーと思いました。今まで企画で読んだ綾束さんの作品の中では最も弱めですね。あらすじの段階で『主人公のキャラと相手役が誰か、そして結婚を申し込まれたこと』はわかるのだけど、結局結婚することも最初から判っているわけだし、私としては、その先の問題がどんな問題なのか、その例を1,2個ピックアップして「結婚したけどこんなんとそんなんがありまして大波乱、どうなっちゃうの!?」というような部分にむしろフォーカスしてほしいなーと思いました。
とはいえ、コンテストではそこまで重要視されなかったろうと判断します。
でも、無視はできなそう。他のライバル作品が自分よりも圧倒的に読者をひきつけていたら、そういった入口の部分にもいくらか差があるはず。それを審査員の方々が参考にしないはずはないから。
②[掴み……15pt/15pt]
ばっちりだと思う。情景がしっかりわかりやすく描写され、主人公がそれを冷めた感じで眺め、そんな彼女にくすくすと陰口をささやかれているという状況。それを聞いて怒りを覚えながらも、凛として強気に無視する主人公。で、その主人公には「修道女殺し」なる嫌疑がかけられていて(?)、彼女自身はそれに何か反論したいけどできない内輪も事情を抱えている──
こんなん、ばっちりですやん。
だから例の原因は、第1話には無い、と考えられますね。
③[文章……14pt/15pt]
上手いです。今までは1人称作品のものを読んできた気がしますが、3人称ならではの落ち着きもあるし、良いですね。
第1話の陰口のところは、ちょっと情景がすぐにつかめなかったので、女性陣がこちらを見ながらささやき合っている、という描写が入っていると良いかなと私は思いました。細かい話ですので、そこまで重要じゃないですけどね。
きちんと必要な情報を適切に出していけるあたりが、さすがです。
1人称作の時よりエネルギー感は低めかも。
④[ストーリー……12pt/15pt]
問題はここからでしょうね。
5話まで読んだ段階だと、1話分くらい冗長な気がしました。
切り取り方が問題というか。
結婚までしちゃうのだから、細やかな心理描写とかは必要ですが、フォーカスするのはその部分だけで良かったのかも。メリハリが必要かな。
たぶんストーリーに必要なシーンと、読者サービスシーンの割合のバランスが取れていなくて、取捨選択ができてない感じかもしれません。
2年前の市場がどうだったのか、読者の好みがどうだったのか、当時既存の人気作品として上がっていたものがどんな作品だったのか……私にはわからないのですが、当時の時点で『結婚からのスタート』で問題ありつつもなんだかんだでラブラブ?な作品はどれくらいあったのでしょうか。
もし当時の時点で、既存のメジャー作品があり、それに追随するような(二番煎じ的な)作品も登場しており、すでにそれらからリードされていたような状況であれば、このストーリー展開ではスローだと判断される可能性が高いです。
女性向けの令嬢もので結婚スタートならば、最近私が読んだのは『誰かこの状況を説明してください!』という作品。
本作とは逆パターンかな。お互い事情があって政略結婚→そこからのストーリー、という点では同ジャンルに属するかと思います。
そちらの作品では、出会いはA4の1ページ半くらい。改行もあるので、字数にすれば1000字ちょっとかもしれない。で、次はもう結婚式、そのあとで何で結婚したのか……という展開になっていて、すごくスピーディ。
きっと、すでにいくつかの人気作が市場にある状況で書かれた作品かなと思います。メインは結婚してからのストーリーだから、結婚までに時間を割いていると、読者の「はいはい、わかったから早く結婚したあとの話を聞かせてよ」と焦れてイライラしそう。
私は3年ほど前に異世界転生ものを書こうと思った時に、現実での悲惨さ→神様と出会い、すったもんだ→そこから異世界へ、という流れを丁寧にこれでもかと書いて、知人から「はやく異世界行けよ」と突っ込まれたことがあります。
ページにしたらA4で2、3枚。大体3000字で、当時売れまくっていた『このすば』だとか、あのあたりと同程度の長さだったと思うのですが……すでに既存のものがあり、そのハンディがある状況では、メインストーリー以外の導入部分はなるべく省く方向で工夫していくべき。
これは読者のためですね。
『乙女ゲームの破滅フラグ~~~』っていう作品、あるじゃないですか。
あの導入を最近読んだ時、「ああ、やろうと思えばここまで省略できるんだ」と感心しましたね。
コンテスト落選の可能性のひとつとして上げられるのはそこでしょうかね。他の作品がどんなものかわかりませんけど、気になるどーでそこまでやると大変なので、これ以上は突っ込まないことにします。
⑤[キャラクター……12pt/15pt]
フェリエナ、アドル、ともにキャラクターに不自然なところはなく、上手く描けていますね。
特に3人称ならでは、主人公の身の上だとかが徐々に明かされつつ、それを行動として明らかにしていくところは(手袋のくだりとかね)、おおお、という感じです。
本作だって十分人気を集めていると言ってよいので、読者の共感は間違いなく得ることができてます。
ギズの徹底した感じが一番グッドです。工夫したところだと思います。素晴らしい。
アドルに対しても、きっと読者は好感を持ってるはず。
キャラクターはそんなに悪くないと思いますね。抜群かと言えば、そうではないかもしれないけど、ストーリーからかけ離れるわけにもいかないので、その辺の按配はちょうどいいと思います。
⑥[オリジナリティ、本作特有の魅力など……9pt/15pt]
というわけで、私が想像するに、本作における課題はストーリー展開とオリジナリティだと思います。
綾束さんの作品はクオリティは高いんだけど、どうしても後追い感があるので、一定のファンがついてもそれ以上の伸びが出ないんじゃないかなと思います。
上手いし、読者に対するサービス精神もあるし、台詞もそこそこウィットに富んでいて、「およ?」と思わせるような驚きの展開もある。
が、いかんせん驚きの展開は、ごく小さい部分で、大きなストーリーラインや設定上は、他作と明確に差別化できるほどの武器が無い。
先行者利益はすでにがっちりライバルたちに握られていて、そこで戦うには少し不利。向こうはもうファンを抱え込んでいて、おかげで国力あり、それに釣られて兵士たちも集まる。正の相乗効果が生まれつづけている。相手の主要武器は剣。
そんな敵に向かって、ほどよく斬れる剣を持った数名の軍隊で突っ込んでいくような感じですね。武器はそれなりに良いし、剣術も優れているけど、いかんせん同じ剣VS剣では数には勝てない。
たとえば魔法剣や、銃になる剣、あるいは魔剣を敵の手に渡して内部から崩壊させていく……そんなゲリラ的な戦い方でなければ、ほぼ間違いなく負け戦です。
とはいえ作品全体を読んでいないので明確にはわかりません。でも前半5話を読んだだけでもその辺りの匂いを感じ始めていたので、もっと市場に詳しいであろう審査員の方々の目も、その部分にはシビアになっていたのではないかと想像します。
綾束さんより下手くそだけれど、既存品よりも明確に差別化できていて、それを早い段階でメインストーリー上に乗せられている作品の方が、少なくとも勝ち戦に転じる可能性はある──そういう判断かもしれません。あくまで想像ですけどね。
※ptの数値はあまり参考にしないでください。既存作品のデータが少ないので、あくまで想像するに、という話です。
⑦[続きが気になる度……8pt/10pt]
実はあんまり気になってないです。
これについては、前述のスロースタートに問題がありますね。「これぞ本作の一番見せたいところ!」という部分がほぼ見えていないので、続きが読みたくなるよう引っ張られた感じはしなかったんですよね。
クオリティは高いのに、やっぱりちょっと惜しいんですよねえ…。
[おさらい]
・タイトルやあらすじなど……13pt
・掴み……15pt
・文章……15pt
・ストーリー……12pt
・キャラクター……12pt
・オリジナリティ、本作特有の魅力など……9pt
・続きが気になる度……7pt
5 総合得点は──
(83)pt!
【最後に一言】
いま一歩届かなかった原因を探るには、ほかの作品も調べて、当時の市場も調べて、そのうえで本作を全部読んだうえで、ようやくそれなりの答えが出ると思いますけど、もし綾束さんにピンとくるものがあるなら、それに従うとよいでしょう。
商品化されている作品でも、出版社やレーベルによっては、あまりよろしくない作品もあるので、それに比べたら綾束さんの方が上手いし、引っ張る力はあると思います。とはいえ同テーマで作品を出すタイミングだとか、そういうもので評価は左右されるので、ちょっと現在の出版業界の状況を広く見て、そのうえで少し先にみんなが興味を持ってくれそうなもので、自分が一番興味を持って書けるものはどんなんかなーと考えるとよいと思います。
筆も早い方なので、ちゃんとした池さえ見つければ、大漁大漁のチャンスは巡ってくると思いますよ。
6 読者のみなさまへ:
→ 人気な作者さんです。もし興味があれば、本評価に書いてあることが正しいのか、はたまた別の何かが潜んでいるのか、確かめていただきたいです。
以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!
気になった方は、ぜひ↓のリンクからこの作品を読んでみてくださいね!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887506513
では、次の作品紹介をお楽しみに!
創作コーチ
尾崎ゆうじ
(note) https://note.com/ozaki_yuji
(youtube) https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber
※初級者向けの『ゼロから講座』は、主にyoutubeとカクヨムにて実施します! お楽しみに!
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