『世界の角度を証明しよう。』ミヤシタ桜
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第1回気になるどープロジェクト応募作品
1 作品タイトル『世界の角度を証明しよう。』
作者名:ミヤシタ桜
2 作品のリンクはこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897395703
3 尾崎が作品を読んだ日:
2020年 7月 30日
4 メモ(感じたこと、作品内容など):
こちらの作者さん2作品目ですね。さっそく行ってみましょう!
① タイトルがユニークですね。どんな作品かはわかりませんが、興味あります。どこに興味が湧くかといえば、世界の角度とはなんぞ? というところですね。第1話をこのタイトルによる興味だけで読ませることができるとすれば、なんとお得なことか。
あとは中身でがっつり掴めれば、してやったり、ですね。
キャッチコピーもタイトル同様に良いと思います。
そもそも気になるタイトルがあり、キャッチでそれをほんの少し補足する、という流れは常套手段だと思います。
『いろんな方向に傾いてる。』とは、はたしてどういう意味か。数学的な内容か、天文学的な内容か。
そこまで期待していたのですが……あらすじを読んだあたりから嫌な予感がします。
かなり直感的な感覚なので表現するのが難しかったのですが、そう感じた理由を述べたいと思います。
② あらすじから感じたこと。
まず前提に、読者(多くの人間)は特定の価値観を他者から押しつけられることを反射的に嫌います。ものすごく尊敬している相手であったとしても、それが正論であったとしても、多くの場合は少なからず反発心が芽生えます。これは前回の評価で、誰かに説明した気がします(誰だったかな)。
とりあえずそれが結論と言ってもいいので、最初に上げました。あとは細かい補足だと思ってください。
では、このあらすじを読んだ時に私が感じたことを言語化してみます(書くのやだなあ……)。
(1)なんだか漠然と嫌だなあ……という嫌悪感があった。(おそらく直感的に、上記に係わる部分が刺激されたからでしょう。正義感的なものを押しつけられそう、という予感に対する防衛本能だと思う)
(2)「いい正義(良い正義)って何だよ」という突っ込みがしたくてしょうがなくなった。
(3)正義判断委員会がその「いい正義」を判断する物語か……しかもその委員会に所属している人間が一人称で語る物語らしい。絶対感情移入できないなあ。
頑張って言語化するとこんな感じでした。
非常に心苦しいのですが、正直なところ上記(1)を感じた時点で、いちいちその理由を言葉にするのもやだなあと思うほどの嫌悪感でした。
でも逆に自分の心を見つめる機会にもなりました。ありがとうございます。
過剰反応と言えばそうかもしれないのですが、例えば(2)について述べると……そもそも世の中って、作者さんが書いているとおり、人の数だけ正義がありますよね。イコール、人の数だけ悪があり、両者はつねに相反する関係にあるわけです。
この世界に絶対的な正義もなければ悪もない。
昨今の日本では、徐々にこれがスタンダードな考え方になってきたように感じます。そういう意味合いの言葉をメディアで発信する方が増えましたからだど考えますが、社会がダイバーシティなるものを受け入れる、その準備段階にあるのだと思います。
絶対的な価値基準がないということを前提に理解したうえで、私たちは法律を作り、それに自ら従い(勝手に決まっている法律もありますが)、行動し、生きていくことが必要になってきたわけです。
それはさて置き、絶対的な正義も悪もないのに、そこに「『良い正義』も『悪い正義』もないんじゃない?」、という反発心を抱きまして。
さらにそれを判断する委員会があって、主人公がそちら側の人間という設定なら、
「絶対に押しつけ系の物語じゃん、やだなあ……」
と、感情が先に表出して、後からその理由を頑張って言語化した次第です。
そういうわけですが、仕事だと思って、第1話を読んでいきます。
③ 第1話は短いですね。
うーん、ここまではまだ納得できる。いまのところ、それぞれの人に正義があるということと、それが攻撃性を持つこともある、ということを書いているだけですからね。正論です。
それでは第2話へ。
うーーん。四行目あたりから、どちらがどちらなのか、よくわからなくなってくる。
25の私が『暴力を先にふるった方が悪いという意見がわからない』というのだけど……。この人、社会に出て大丈夫かな……と不安になった。
まあ、別にいいけど、読者が共感できないのは間違いないです。つまり読まれる可能性は低い。
うーん……。主人公の『私』にとって、担任の先生、被害者と加害者の生徒、上司、(まあ主人公は別にしても)は、なんかどうでもいい存在なのかなあ。
男か女かもわかんないし、外見もよくわかんないし……喋ることが幼稚に思えるから、小学生かな。
いろいろと突っ込みたいところが随所に見られたので、とりあえず一度、第2話を全部読むことにしました。
引っ張る仕掛けも無いし、次話も読みたくないなあと思ったので、とりあえず採点に入っちゃいます。
その後いろいろとコメントを書きます。
ちょっと私が思う私なりの『良い正義』の部分を振りかざすので、それが作者さんや、他の読者さんにとっての銃弾となる可能性も否定できません。一応お断りしておきます。
今回の続きが気になる度は「5%」です。残念です。
以下の文章は、この作品の第2話までを読んだ感想の続きになりますが、上記のリスクにより、読みたくないなと思った場合は読まなくて結構です。大事な話ではあると思っていますが、押しつけようとは決して思っていません。
++++++
(以下、感想のつづき)
第2話まで全体を通してみて、少し気を遣いつつも、伝えたいことをきちんと伝えられることを優先し感想を述べていきましょう。
上記の③でも書いたとおりですが、本作はなんというか、みんな登場人物が記号みたいというか、概念でしかない感じで、リアリティがない。
前回の自殺の物語であれば、主人公本人が精神的に参っていることもあるし、世界観がグレーになり他人は概念的でもそれはそれで成立したけど、今回のこれは世界観にも合っていないので、きちんとしてほしいと思った。
それに描写だけでなく、登場人物にもリアリティがない。『もしも世界がこうだったら』というパラレルな現実世界で、みんなそこに生きている人間でしょう?
「こんな人いそうだな」と納得するくらいでないと、読者は入り込めないし、当然読んでいて面白くない。
特に上司。
第2話でもっとも台詞の多い人物ですが、正義審査委員の人間として先生にこう告げます。
引用 上司の台詞
『「小学生というのはすこし勉強したぐらいで頭は悪いです。でも、ずる賢い。それが故に、このようなことはこれからも起きると思います。』
「あ、やっぱりこいつら小学生だったんだ」という気づきと共に、「こんな人に正義を審査されたくないなあ」と思った。
彼、主観的な意見を述べてるだけですよね。たとえば人間の(児童の)行動心理とか、その加害者がなぜ被害者をいじめたのか、被害者はなぜ今になって殴ったのか、そもそも先生はそのことに気づいていなかったのか、みたいな話には一切ふれない。
『子供は子供』で一括り。『勉強する・しない=頭が良い・悪い』で単純に処理。単細胞というか、幼稚というか……。よくこんな職場に入って部下を持つようなポストになれたもんだと、苦々しく思いました。
コネ入社かな?
引用 つづき
『 だからこそ、警告させていただきます。あなたのやさしさは、毒にしかなりません。暴力を振るのは確かに悪いです。でも、その子はその子なりに正義を振ったのです。その子の正義は正しい正義の振り方だと思います。ただ、振るものが悪かった。あなたたちの役目は、勉強を教えるのもそうですが、正義の振り方、そして、振るものを教えることです。よろしくお願いします。」』
よろしくお願いします、と言われましても。何をどうよろしくすればよいのか。具体的な説明とか、あるいは法解釈がどうとか、無いのか? そもそも世界設定に無理があるのは仕方ないとして、漠然としすぎだよ。それと何を言っているのか、意味がわかんないよ。ちゃんと理解できるように説明して。
それじゃああなた、先生も適当な返事でお茶にごすよ。「こいつ早く帰んねえかな」って、思うよ。
そしてその後、部下である『私』に、なんかえらそうに愚痴言ったりしてさ。講釈っぽいけど、内容は愚痴じゃんか。
お前の仕事はそれでいいのか? 仮にきちんとした説明ができたとしても、そうやって『ちょっと注意してさようなら』でいいのか?
なんのために君ら正義審査委員は存在するんだ?
テレビの前で『また不倫かよ、こいつクズだな』って言ってるだけのおっさんと一緒じゃんか。現地を訪問して他人にそれをぶつける分、もっとたちが悪い。ただの迷惑な奴らだよね。
もし万が一、設定上『不真面目で適当な社会人』だとしても、こいつはリアルな社会人じゃない。
なぜこんなことになるのか。
作者さんは、そもそもなんでこの作品を書いたのでしょうか。そしてなぜ私に読ませたのでしょうか。他の作品もいっぱいあるじゃないですか。
間違っていたらすみませんが……上司は作者さんの意見を代弁させられているようにしか見えません。あなたの怒りや不満、正義感を、ただ言わされているという感じ。
もし違うのならすみませんが、それならそれで、違うのだということを読者に納得させるような書き方をしなければなりません。
作者さんが感じているものは、そりゃ私だって共感しますよ。
弱者を攻撃して悦に浸っている人間はもちろん、自己の利益を守るために他者を陥れたりするような人間なんかは特に、さっさと天に召されて、搾取されてきた人たちに全て返還せよ! なんて思いますけど……。
その感情を外に出すだけなら、何も物語(っぽい)形式をわざわざ採る必要は無いじゃないですか。ツイッターとかで主張したっていいじゃないですか。わざわざ時間もかかるし読む人も少ない媒体を選ぶ必要なんてないし、架空のキャラに言わせる必要も無い。
ツイッターのつぶやきが世論として扱われるような時代に、そんなの非効率的じゃないですか。設定考えたり人物の台詞考えたり、タイトルやら何やら考えて、読ませるためにいろいろやって……。それでごちゃごちゃお節介な感想言われて……。
なぜそんなことをするのでしょう。ぜひこの機会に考えてみてください。
作者さんの気持ちは尊いものだと思います。誰かが傷つくことに対して自分の心が反応しているのでしょうから、それは一人の人間として大事なことです。あるいは、ご自分の体験を重ねたりしているのかもしれませんが、それはそれで社会的に価値があると思います。
理由は何なのでしょうね。
ノートを開いて、見開きで自分の気持ちを乱雑に、自由に書き込んでいくことをお勧めします。何に対して自分の心が動いたのか、怒りを感じたのかを書いて、うまくまとまらなくても、とにかく書きまくってください。
それだけでもまず心がすっきりします。夜も寝やすくなりますよ。
そのうえで、じゃあ自分はその問題に対して、どうしたいのか。今何ができるのか。そういう質問を投げかけていきます。そして、その思考過程もノートに記します。
次の作品のネタや、新しくはじめたいことのアイディアなんかが浮かんでくると思います。あとはそれを実行に移すかどうか、という選択をするだけです。
行動に移すのが一番大変ですけどね。その前に、自分の本当の気持ちに気づいたりできるので、いろんな方にお勧めできます。
ノートの取り方に関しては、前田裕二さんという方の『メモの魔力』という書籍を参考にするといいでしょう。
あと、自分の気持ちを探った結果として、「どうしても社会に対する不満を小説にしたい」という気持ちが消えないとすれば、ちゃんと読者に読ませるような趣向を凝らさないといけない。
私がその理想形だと感じたのは、小説家の朝井リョウさんの『何者』ですね。参考になると思います。
就職が決まらなくて悩む大学生の物語ですが、後にどんでん返しがあります。作者さんが就活経験のある年齢かどうかは不明ですが、とにかく私はこの本に吐き気を催すほどの衝撃を与えられました。
何か主張があって、それを物語に忍ばせてがつんとぶつけたい時には、参考になると思います。
いろいろ余計なお世話だという話をだらだらと書いてきましたが、最後に作品のことについて。
前回読んだ作品では、単に『一人の少年が自殺に踏み出そうとしている』という危うい舞台設定に対し、『結局どちらを選択するのか』という究極の引きがあったので、『最後どういうオチにするのかな」と、確認したくて読了するに至ったわけですが。今回は、そういう劇薬のような引きも無かったので、続きが気になることもなく、残念でした。
読者に小説を読ませるって大変なことですね。ひとつ気づきになりました。ありがとうございます。
6 読者のみなさまへ:
→ おすすめしませんが、もしも正義審査委員になってみたいという方は、自己責任で覗いてみてください。
以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!
気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてくださいね!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897395703
1作品目はこちら↓ 『風すらも後押しするというのか』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897756365
尾崎の評価はこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054914254604/episodes/1177354054917499960
では、次の作品紹介をお楽しみに!
尾崎ゆうじでした!
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