☆『異世界裏稼業 ウルチシェンス・ドミヌス(4)「復讐屋 vs 殺し屋」』烏川 ハル
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第1回気になるどープロジェクト応募作品
1 作品タイトル『異世界裏稼業 ウルチシェンス・ドミヌス(4)「復讐屋 vs 殺し屋」』
作者名:烏川 ハル
2 作品のリンクはこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895318402
3 尾崎が作品を読んだ日:
2020年 7月 31日
こちらの作者さんも2作品目の評価になります。下記に前回評価したリンク貼りますね!
4 メモ(感じたこと、作品内容など):
① タイトルに関する感想は、前回とほぼ変わりませんが、『復讐屋VS殺し屋』は、面白そうですね。
キャッチコピーもなかなか。復讐屋と殺し屋が確実に登場するという認識のもと、この『彼』は、「どちらに対して、どんな心境でそのセリフを発したのか、気になるところです。
あらすじも良いのではないでしょうか。「うわあ読みたい!」という感じではありませんが、異世界ファンタジー好きに興味を抱かせることはできそうです。
ただいかんせん、タイトルの半分が読みづらい名前で占められているのは、このシリーズの不利な点ですよね……。おそらくスマホとかで読む際に、『異世界ファンタジー』の項目に並べられたとしても、引っかかりにくそう。
それでもとりあえず、全体的に今回の3要素は引っ張られそうな感じがしました。
② では本文に入ります。コンテスト応募用のあらすじがあるので、そちらは外して見ていきましょう。
第1話『闇夜の襲撃』ですね。出だし、スムーズです。シリーズ初見だとピペタの性別すらわからないのですが、前作の記憶も手伝ってか、あまり気になりませんでした。
これでは純粋な評価にならないのですが、どうしようもないですね。思った以上に記憶しているようです。
もしも本気で初見読者でも楽しめるようにと配慮する気があるのであれば、『中年の男二人で、こんな夜中に何をしているのか』みたいな台詞や描写を挟んでもらえると、さりげなく紹介できると思います。ちょっとした自虐にもなるし、もしかしたら多少笑いになるかも。
下記の書き方、ちょっと違和感でした。
引用
『それでも完全な真っ暗闇にならないのは、通りの両側にある街灯のおかげなのだろう。街路樹と交互に並ぶ形で、魔法灯が設置されているのだ。』
ここでは『~~だろう』という形式を使う必要はないと思います。読者目線では明確な光源がどこかにあるとイメージできているので「それ以外に何かあるの?」という疑問が浮かぶと同時、「魔法灯だってことまでわかっとるやんか!」と突っ込みたくなります。
『~~だろう』という形を使うなら、そのあとも『確かあれは魔法灯と言うんだっけ』みたいな『不確か×不確か』にする方がよい。あるいは前をまるっと削って『街路樹と交互に並ぶ形で、魔法灯が設置されているのだ。』だけでよい。
でも第1話の導入は、前回より圧倒的に良いですね。ちゃんとした『出来事』が起きている真っ最中からのスタートで、しかもそれが『泥酔して吐き気すら催している上司の護衛』という、経験ある読者なら共感できるエピソードなのが良いです。
会合の席でのピペタへの批難の目だったり、彼が警護任務に失敗した経験があるというエピソードが加わることで「くっそー」みたいな地味なストレスが与えられるのも良いですね。ミスをして批難されたりするような経験をしたことのある方は多いと思うので、読み進めるための力になります。素晴らしい。
それに加え、今作は第1話の流れが良い。現在の描写から少し回想してすぐにアクションシーンに。
構成が良いのに加え、なんと言ってもちょっと渋めのこのアクションシーンが魅力。上手いです。強い中年騎士の戦い方という感じで、それでいてかっこいい。やるじゃんピペタ、という感想がつい漏れます。
第1話は読了でした。最後の『チラッと思い浮かべる』が少し緊張感に欠く表現ですが、とりあえず続きをよみたいなと思いました。
③ 第1話の様子だけで、だいぶ今回のポイントはアップしていると思います。せっかくなので、第2話がどうなるのかなあと期待を込めて、続きを読んでいこうと思います。
第2話『朝の騎士団詰所にて』は、ピペタがチラッと思い浮かべた回想からのスタートです。オーソドックスですけど、現代のファンタジー作品では必然的にこういう構成を取るのがベストだなと、今回の企画を通じてわかりましたね。
『第1話の危機的状況に至った経緯などを説明しないと読者は納得できない』にも係わらず、『きっかけや経緯から順を追って説明すると退屈だ』というジレンマがありますからね。
いまごろ「昔は良かったなあ」と、キャリアの長い作家さんたちはしみじみ思ってるでしょう。スロースタートの物語では、どんなに面白くても時間に追われる現代人に付き合ってもらえないですからね。
それはともかく、ピペタはやっぱり中年騎士でしたね。この位置での紹介でも、そんなに違和感ないです。
ラヴィの挨拶に対しての『ああ、おはよう』って応えるのは、ちょっと変な感じにも受け取れますね。なんか、ぞんざいに流しているような印象を受けます。
この『ああ』はきっと『うん』とか『うむ』みたいなのと同じ用途で用いられていると思うのだけど、平時の彼らの人間関係がまだわからない状況だからか、誤解しました。あとになって「ん? なんか違うな」と認識の訂正をしないといけなくなるので、できれば違う書き方をしてほしいです。
頷きながら「おはよう」と応じる、とかね。
あと、この一連の流れで、ピペタに『驚いている様子』が無いのに、途中で『ここまでならば驚くには値しない』という一文が出てくると、唐突な感じがする。ここについては初見かどうかはあまり関係なさそう。
それに次の『この世界には~~~慣例になっている』という一連の文章にも違和感のある箇所が。
とはいえ内容には問題ないんだけれど、『レベル』という表現が良くないと思う。
異世界系のファンタジーを読む人にとって、レベルといえば経験値を伴うアレ、という認識が強い。それを地の文で、『程度・度合い』を示す意味合いで使用するのは、判断ミスだと思う。地味だけど、けっこう響くかも。文章の品位が下がるというか。ここまではかっこいいのにね、という感想が漏れる。
例えばタイガみたいな軽薄な奴が「そういうレベルの話っすか!?」みたいな感じで台詞に使うなら違和感はないが、地の文で使用するのは控えたほうがいいと思う。
第2話も全部読んでみた。
こちらは途中で離れることにした。今回の企画による評価にはあんまり影響しないけど、一応お知らせ。
具体的には、ピペタが4人で詰め所を後にしようとして、モデスタ中隊長に会ったところからが問題ですね。
退屈&嫌悪です。
まず、ピペタの立場をなんとか社会的に引き上げようという判断で階級やその他のあれこれを書いたのかもしれないけれど、私は失敗だと感じました。
『モデスタ中隊長は階級的にはピペタより格上だけど、形式上格上なだけで、実質小隊長と大差ない』という設定に対する説明が長く、回りくどいと感じたのと、
ピペタがその存在を軽んじていると読み取れるモデスタ中隊長(実質同等にあたる形式上の上司・同僚)のキャラクターが、『普通に良識のある少し老けた感じの女性中隊長』というだけで特にその理由が見当たらないので、逆にピペタが小物に見える、ということが理由です。
いろいろ組織のあれこれを言い訳にして結局格下に留まっている男が、やっかみでその上司を説明しているようにしか感じられない。負け犬根性みたいな。
まあ、この問題の本質はたぶんそこにはないんだけど、それは置いといて。
この問題を解決する手段としては、モデスタ中隊長を『形式上の格上でしかないくせに偉そうに!』というくらい嫌な女(男でもいいけど)にする必要があったと思う。
それと詰まるところここは『モデスタ中隊長よりピペタの方が騎士として戦闘能力は高いから、そういう理由で大隊長の護衛をその夜だけ交換してほしい』ということを伝えるのが目的のシークエンスなので、こんなに長々と丸1話を使う意味が感じられない。
あとモデスタのキャラクターも問題なのだけど、それを含め、最後の方で彼女が『戯言』という発言をするのは論理的におかしい。
今までの話の流れだと、モデスタがピペタに護衛を頼むのは、結論として大隊長が命を狙われている可能性があるから、万が一のために、ということだと考えられる。それなのに戯言ということは、彼女が大隊長の話を杞憂だとし、まともに受け取っていないことを意味する。そういう理屈なら、ピペタに交代を依頼するのはおかしいだろうと思う。行間でどこか抜けているのだろうか、矛盾しているように読める。
そういったことを考慮すると、読み手としてはモデスタの性格をムカつく上司にして、
「もう大隊長には伝えて了承を得ているわ。剣術くらいしか取り柄のない小隊長にチャンスを与えてあげるのよ。感謝しなさい」
と一方的に言って立ち去るくらいのほうが、わかりやすい。
「中隊長め、もっともらしく言っておいて、けっきょく面倒だから部下に丸投げしただけじゃねえのか、くっそー!」
というムカつき度合が増せば増すほど、読者を引っ張る力も強くなりますし、第1話のリアルピンチとのコントラストが生まれると思います。「逆にピペタが護衛についていて良かったな、大隊長!」という感情が読者に芽生え、一気に味方が増えるでしょう。
第2話は次話へ引っ張る力が弱いので、工夫した方が良かったかなあと思います。
あともう一つ、このモデスタのくだりでお伝えしておきたいことがありますが、作品とは直接関係ないし、ここに上げる必要は無いかと思ったので、3つ目の作品の採点のあとで、こっそりお伝えしますね。
それでは採点に移りましょう。
5 この作品の続きが気になる度は……
…
……
…………
【80%】です!
掴みの部分はけっこう良いと思ったので、第2話は切り離して評価しました。それが企画趣旨ですからね。
コンクールの審査はもう始まってますかね。だとすればちょっとリライトはできないかもしれないですね、残念。
6 読者のみなさまへ:
→ 第2話がちょっと中年太りのような感じでたるんでしまうのですが、ざっと流して3話まで行くとよいでしょう。面白い可能性あり!
以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!
気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてくださいね!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895318402
1作品目はこちら↓(シリーズ2作目ですけど)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889540724
尾崎の評価はこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054914254604/episodes/1177354054917578258
では、次の作品紹介をお楽しみに!
尾崎ゆうじでした!
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