『アリスドリームストーリー』K・Sメッセ

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第1回気になるどープロジェクト応募作品


1 作品タイトル『アリスドリームストーリー』

  作者名:K・Sメッセ


2 作品のリンクはこちら↓

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054893361917


3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 7月 16日


4 メモ(感じたこと、作品内容など):


 ※アメリカを舞台にドン、と自信を持って書けることは魅力の1つだ! そして、続きはけっこう気になった!


①(タイトル、キャッチコピー、あらすじで読者を掴める?)

  

 3要素すべてにおいて、掴めているとは言い難い。工夫する必要あり。


 根本となるテーマ(私が本文を読んで想像したテーマ)が、このどれにおいても触れられておらず、中身が無いように見える。まさかと思って本文を読んだらそんなことはなさそうだったので、改善をおすすめする。


 まるで、ぺらぺらの紙だと思って持ったら金箔だった、みたいな印象。だったら最初から金箔らしくしないと。


 じゃあどう工夫すればいいか、という話なんだけど、前回、オロボ46さんという作家さんの作品を評価した時と同様の改善を要する気がする。作者さんにとって負担が大きかろうなと想像する。


 それを理解したうえであえて言いますが、まあ話半分で、そんな見方があるのかという程度で聞いてもいいかも。最後の判断は作家さん次第なので。


 まず主人公の名前をアリスにすることのリスクは、予め承知しておきたいところ。


 ただ作中でアリスの名前の由来も紹介されていたので、それを変更するのは心が痛む。なので、その場合はタイトルとキャッチコピーに神経を集中させてほしい。


 どうしてそんな話になるのかを説明するので、それを全部聞いてから、トータルでどうするか判断してほしい。


 アリス、という名前は不思議の国のアリスを含めて、小説だけでなく漫画やゲームなど、国内に出回る多くのエンタメ作品に登場していて、ありふれ過ぎている。


 それがタイトルにどーんとついたところで、あまり目を引きつけるパワーは無いと思う。


 例をあげると、10年くらい前の電撃大賞で『アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム』という作品が大賞を堂々受賞した。


 (作者の茜屋まつりさん申し訳ない。他の例が思いつかず…)


 私は当時、バリバリにライトノベルの研究をして、夢中で読んでいた頃だったのだけど、その時ですら「なんか面白くなさそうだなあ…」と感じた。


 アリスにプラスして、銃に弾丸を詰め直す『リロード(リローデッド)』という言葉を足したことで、その対比によって読者の興味を引くことを狙ったタイトルといえる。


 それでも、受賞作品でなければ絶対手に取らないなあ、と思ったのは覚えてる。


 事実、それほどヒットした作品ではないと思う。中身はハイスピードアクションで、純粋なエンタメ小説として楽しめる内容にも関わらず。だからこそ、タイトル悪いよなあ、という印象が強く残った。


 この問題は、アリス+カタカナの組み合わせによるものだと思う。


 アリスとドリームストーリーは、どちらも『弱小ワード』であることを認識したほうがいい。


 『俺のドリームストーリー』の方が、まだタイトルとしてはマシ。(『私のドリームストーリー』だとたぶん弱いかな。不思議なことに)


 頑張って考えよう。


 例えば私が作品の内容に触れる前に、「なんか気になるなあ」と思ったカタカナがつくタイトルが以下の2つ。どちらもカタカナでメインキャラクターの名前が含まれている。


 『緋弾のアリア』『思い出のマーニー』


 何と名前が組み合わせられるかで、読者の反応は大きく変わる。


 この2つは作品の中身をまったく知らない状態で、どんな話なのだろうと気になっていた。私としては非常に珍しいことだった。


 当時はアリアという名前の主人公があまり市場になかったと私は記憶している。主人公の名前なのかどうかすらわからず、それを確かめたいという気持ちがあった。緋弾という言葉は、ぶっちゃけ本書を購入して読むまでだと勘違いしていて、糾弾のアリアって、どんな内容なんだよ…と、村八分系の小説を勝手に想像していた。実際は全然ちがってびっくりしたけど。


 思い出のマーニーは『マーニー』の響きが強すぎた。


 私はジブリ映画でこのタイトルを知ったのだけど、マーニーって何?? と得体の知れないものに触れる感覚を覚えている。何者だよ、みたいな。


 思い出のアリス、だとそれは絶対に起きない現象だし、たとえジブリ作品だろうと興味をそそられないと思う。事実『ハウルの動く城』は、当時子供だった私でもタイトルとして全然惹かれなかったのを覚えている。名前って微妙だ。


 ちょっと考えてみよう。仮にアリスを変えないとすれば、アリスドリームストーリーよりは、アリスタイムトラベル、の方がまだ魅力的だ。あくまでの話だが。


 それを前提に考えれば、キャッチコピーとあらすじもまた、そういった点で注意が必要だとわかるだろう。


 これは私の偏見だが、読者は基本的に不思議の国のアリスが強すぎて、そのイメージに引っ張られるし、その他のアリスは印象に残らない。


 仮に主人公の名前はアリスでいいとしても、それがタイトルやキャッチコピーで前面に出ることは、あまり効果がないと思う。無意識にスルーしそう。


 アリス12歳の冒険と、彼女がその過程で何を得たかについて、私は興味が湧かない。


 作者さんの想定している対象読者は誰だろう。私は全体を通して児童文学を意識しているように感じたのだけど……そう仮定したとしても、このタイトル〜あらすじはまずいんじゃないかな。


 誰が相手だとしても、1つ1つのワードがどれも弱い。大人はもとより、現代社会を生きる児童たちも興味を示さないと思う。大人が薦めなければ、彼らは『トムソーヤの冒険』すら手に取らない。


 ※これからあらすじの指摘をするけど、作者さんはいろいろ考える前に、本文の感想まで通して読んでから、判断してほしい。


 さて、このあらすじはストーリーの核心をほぼ突いていない。もったいない。


 一言でいうと、読んですぐに「つまんなそう」と思うあらすじだった。


 アリスに興味がない読者は、アリスおばあちゃんにも興味がないし、内容がぼかされている以上、彼女が見た奇妙な夢にも興味がない。


 そしてもっとも注意したいのは、アリスおばあちゃんが未完成の小説を完成させることができるか、という、そこに書かれた目的についてもまた興味が湧かない。


「オランダにジェーンというおばあさんがいるのだが、その人が変な夢を見たんだって。で、そのおばあさんには未完の詩があってね。完成できると思う??」


 作者さんは上の文章を読んで、ジェーンの詩に興味を抱くだろうか。「さあ、できるんじゃね?」と適当に答えざるを得ないのではないだろうか。


 せめてジェーンが何者か、という前情報があれば別だけど。世界で最初のタイムマシン開発者、とかね。


 というわけで、私はいち読者として、この作品をみたとき、本文を読もうとはまったく思わなかった。


 とりあえず、それが最初の段階での結論。


 頭を抱えるまえに、すぐ②を読んでくださいね↓



②(①を抜きに、第1話で読者を掴める? 続きは気になる? 止まったとしたら、どこで止まった? どうすれば作家さんの成長、改善に繋がりそう?)


 この作品の本文はプロローグから始まるけど、私はそのプロローグが不要だと思った。企画の趣旨を考えると、ここで判断して採点してもよかったのだけど、念のため第1話にも目を通した。


 意外と、魅力があった。結局1話目だけじゃ気持ち悪くて、アリス一家の判断が提示される4話目まで読んだ。総合するといろいろと突っ込みどころが気になって離れたけど、場合によってはそのまま文句を言いながらもずるずる連れていかれそうな気さえした。


 感情移入のパワーというか、作品が持っているメイン軸のテーマがわかりやすく、私にとって入りこみやすい内容だったからだと思う。


 キャッチコピーにあるような『冒険譚」とは全然ちがうところが主となる魅力なので、作者さんはこの作品のどこが魅力的で、自分がどういう読者をターゲットにしているかをここで明確に意識してほしい。


 私が思うには、この作品は児童小説で、テーマは自分のやりたいことと人生における選択、みたいな感じかなあ。


 そのあたりのことが本文から垣間見えたときに、ようやく興味が湧いた。


 具体的には、父の研究を手伝えることに喜んでいる12歳のアリスに、母親がふと「本当にいいの?」と尋ねるところから「おおう??」と気になった。


 すごく無邪気に誕生日を喜んでいる少女と、その少女を愛しているのだろうなぁと感じさせる母親。


 なのに、急に「本当にいいの?」なんて言う。何がだよ!? と気になった。


 2人の対比が強いので、なんだか妙に惹かれた。


 逆に言うと、そこにいたるまでは本当に興味が湧かなかった。全然掴まれてない。


 そういう魅力を感じたからこそ、私も前半の評価でここまで時間を割いたのだった。


 書きすぎたきらいもあるので、本文についてはさらっといこう。


 まずプロローグは不要だと思う。ごっそりと。あらすじをほとんどさらっているだけの感じなので、少なくともカクヨム上では要らないと思う。


 それと、私が心を掴まれたのは12歳のアリスの境遇で、(いや、正確には母親かもしれないけど)アリスおばあちゃんではない。なので読者をつかもうと思ったら、おばあちゃんのアリスからスタートさせることはやはり適切じゃない。


 12歳のアリスと、彼女の書いた小説と、父の研究が互いに絡み合いますよ━━という土台が出来上がってから、落ち着いたタイミングでその描写を挿入してあげると、今度は狙ったとおりに引っ張る力が生まれると思う。


 カクヨムではリアルなアメリカからの出だしはけっこう珍しいので、へえ、という感じで私はその後の文章を追ったんだけど、それからが問題。


 いわゆるクドイ、と言われる状態の典型。


 多くの読者は、アリスが慌てていること、誕生日になったから父親の研究を手伝うこと、それに対して喜んで(張り切って、かも)いることさえわかればそれでよい。白衣さがしはさっさと終わらせて、


「分かったのならいいの……。お父さんには少し遅れるからって、言っておいたから」


 から数行の、母とアリスの一連の流れを読ませてほしい。


 そして母と別れた後は、できればそのままの足で研究所に向かってほしい。まるでおうちの設計を説明して回るかのように、アリスたちの日常をきっちり紹介してそれから研究所へ、という流れは冗長。まして約束の時間が迫って焦っていたし、そのまま行かせてしまえばいいと思う。


 残された母が、写真を眺めてため息をつくくだりはとても良い。1話目の終わりで、一見するととても無邪気な少女アリスなのに「友達もいなくなってどうのこうのって……彼女の身に何があったのだろう。母は何を知っているのだろう、8歳の誕生日に何があったのだろう?」と気になった。


 前半で全然興味なかったのに、章の締めで引っ張られる感じで腹立たしかった。


 半分褒めて半分怒っている感じ。


③ 以上をふまえると、この作品の問題点(企画上、掴みの部分のみだけど)は、


 ・後で必要になった時に説明すればいいような情報を、一気に読者に描写して見せておかなければならないと思ってはいないか。これについての解決策は頭の中で細かく記憶しておくか、設定をどこまで説明したかというチェックシートなどを用意しておくといいかも。(プロの作家さん方はどう管理しているのか、なんにせよ改めてすごいよなあと思う)


 ・おばあちゃんアリスが振り返る、という感じの演出で全体が構成されているからか、回想風に物語が進んでいく感じだけど、作者さんは何か焦っているのだろうか。なんか無機質すぎる。

 

 たとえダイジェストにぽんぽん情報を提示しても、その情報が読者の欲していないものであれば、重ねるほどストレスになるだけ。テンポよく物語を進めていることにはならない。


 ストーリーを進め、読者を引っ張って先を気にならせている状態で、かつ冗長にならない程度に情報を提示しなければ、寝落ちする原因となってしまう。


 私にとってはその大きなアメリカンサイズの家の間取りよりも、アリスたちの性格や置かれた状況、抱えている問題などの方が、重要だ。直接ストーリーに関わらないものは、作者さんによほどこだわりがない限りは、読者に配慮し、控えめにしてあげる方が良いとおもう。


 ・あと文中のところどころで違和感を覚える。通常の学校教育を受け、何冊か小説を読んだことのある読者なら、おそらく同じ感想を抱くだろう。そういう文章のクセが、作者さんにはある。


 もし故意に、というか何かこだわりがあってそうしているなら構わないが、句読点の付け方がおかしいというか、それとも体言止めを勘違いしているのか、なぜそういう書き方になるのか、よくわからず。下記に例をあげます。


以下引用。【】内は、私が加えた訂正案です。


『アリスが8歳時、父親が記念にと、父親自ら作ったカメラで撮り。【普通なら「撮った、撮ったもの、撮影した写真だ。」のような形になる】母親は、その写真を見ながら紅茶を一口飲み。【、を使うこと】ため息を一つつき。【普通は「つく」あるいは「ついた」体言止めなら「一つ」で切る】その写真を撮るきっかけになった前日の事を思い出し。【す。!!】』


 こういうのが随所に見られる。「うまし!」みたいな。


 こだわりがあってそうしているなら何も言わないし、確かに個性的で他に類をみない文体と呼べなくもないけど…あまり受け入れられないと思う。


 もし、もしわからないという時のために、言葉の使い方をざっと教えておくと、


 『Aさんは写真をカメラで撮り、そのAさんをBさんは眺め、ため息を一つつく』


 のように、文の途中で「〇〇をし」と動詞を変形させたら、次に何か言葉が続くことを意味すると捉えるのが一般的なので『。』で一文を終わらせるのでなく 『、』で区切りをつけて次へ繋ぐこと。

 

 表現としては例外もあるが、一般的な使い方はそれ。それが馴染んでいるから、すぐに違和感に気づき、気持ち悪くなり。直してほしいと思い。


 もしや作者さんはアメリカ帰りか。


 アメリカの文化を迷いなく書けるのは武器だ。少なくとも、地元どころか自宅からもほとんど出ないで小説を書いているライバルたちより差別化ができる。


 自信のなさから、好きで情熱のあるものから逃げ、そして大人が求めているものを自分の求めているものと勘違いして人生を送るアリスのような人は多い、と思う。それに気づいていないことすらあるし、気づくと怖いので、無視する場合もある。


 そんな経験のある人には、思うところのある作品になるかもしれない。子供が読むなら、今まさに、そういう悩みを抱えている最中かもしれない。


 どう転がるか見もの。作者さんはどういう結末を描いているのか。


 また1から評価するので、ぜひその答えを作品で見せつけてほしい。今回指摘したところ以外にも、2話から4話まで、気になるところはけっこうあった。そちらは別の機会に。あるいは別の人に指摘してもらうといい。


 では、そろそろ採点です。



5 この作品の続きが気になる度は……

 

 …


 ……


 …………


 【45%】です!


 読めば思いのほか気になる…という結果で、私としては良い意味で裏切られました。初めから気になる…という形に改善してほしいですが、ちょっと改善してほしい箇所が多かったので、少しだけ甘く減点しました。



6 読者のみなさまへ:


 → 上記③のとおりでして、今後かなり良質な児童文学に化ける可能性があります。化ける前の姿を知ってしまったあなたはラッキー! 作者さんがどうするかはわかりませんが、そのリライトの過程も楽しみながら、イジりながら、見守っていきませんか?


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!


 気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読み!


https://kakuyomu.jp/works/1177354054893361917


 では、次の作品紹介をお楽しみに!


 尾崎ゆうじでした!


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