☆『就職活動はままならない』あけがえる
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第1回気になるどープロジェクト応募作品
1 作品タイトル『就職活動はままならない』
作者名:あけがえる
2 作品のリンクはこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897898836
3 尾崎が作品を読んだ日:
2020年 7月 13日
4 メモ(感じたこと、作品内容など):
① ペンネームがなんかお洒落ですね……なんか感覚的で説明できないけど、センスがいい。
それはともかく、本文はすごく上手いのだけど、その前にタイトル、キャッチコピー、あらすじ、がどれも普通すぎる。
初見読者からすると、
「就職活動はほんと大変だよね、ままならないよね、うんうん、まあ大変だけど、それも青春っちゃ青春だよね・・…それで、何の話だっけ?」
という世間話のような印象を抱いてしまった。
この普通さは、カクヨムの中にあってとても不利だと思うし、おそらく書店に新刊として並んでいても不利だと思う。
これだけだと、その辺の就活生の話をじかに聞くのと変わらない感じを受ける。
② あらすじに関しては理路整然としていて、逆になんだか新鮮さがある。きれいに掃除された白塗りの部屋を見たような印象だった。
とはいってもいざ内容を読んでみると、やはり普通。厚生労働省で制作した求職者用の冊子を見ているような感じ。この時点で、本文を読む気にはならず、企画でなければ離れている。
③ 第1話を読んで、2話目も読んだ。本文がものすごく上手い。描写もすぱすぱ出てくるし、いわゆる純文学系でもそれなりのレベルを保った文章だと感じた。
しかし、だからこそタチが悪い気もする。歯に衣を着せずに読者としての感想を正直に述べるなら「文章だけは上手いんだけど……」という一番いやな言い方をしなければならない。2話目を読んだのも、物語がすすめば少し印象が変わるのでは……という願いからだった。引っ張られたわけではない。
作者さんの見ている理想がどこなのか、が重要だと思う。
純文学系の表現を極めたい、という場合は、私に指摘できることはあまりない。一つ言えることは、テーマと切り口がどちらも普通に感じてしまうので、どんなに文章を鍛えて語っても、そこを抜けて新鮮な読書体験を与えるのは難しいだろうということ。
(でもひとつだけ文章について、1話目をずばっと切り取って2話目から始めてくれた方が、むしろ読者としては引き込まれるだろうなとは感じたことだけは、言っておきます)
文章の芸術性に関しては、どうすればそれが実現するかを適格に応えられる人間はほぼいないでしょう。熟練した文豪であれば、たとえ作品のテーマが普通のことであろうとも、心地よさを感じさせ、読み進めてしまうこともあるかと思いますが、それが「なんでなの?」と問われれば、明確な答えは出ないと思います。その解明をするために大学で4年学ぶ人がいるような分野ですから。
お節介かもしれませんが、もしも売れたい、商業作品として評価されたい、という欲求があるのなら、いまのままでは叶いません。純文学にしろ、エンタメにしろ、読者が面白そうだと思わないものは、まったく目につきません。
就活を控えている人も、すでに就活を過去とした社会人も。対象としている読者たちは、この作品の掴みの段階で「1+1=2」という数式を見せられた程度にしか感じないように思います。
あらすじも、きっちりと本文の流れをなぞっていて律儀だなと舌を巻くほどですが、それゆえにあらすじを読んだ後で本文に入ると、なんかすべてが想像どおりに進むのだろうなあ、とワクワクできません。
まして第1章の1話目と2話目の段では、就活の就の字も出てこず、酒を飲んでどこかの駅で寝ていた若者が、ものすごい二日酔いの中で電車に乗ろうとするだけで3話目に向かおうとするだけ。確かにピンチではあるのだろうけど……たぶん、なんだかんだで普通に帰宅するよね? みたいな。
そういう意味では第1章に持ってくる設定としては適切ではないと感じました。どうするかは、作家さんに委ねるのみでしょう。
さて、思わず途中から私も無意識に敬語調になっていました。それほど文章に関してはレベルがひとつ抜きん出ており、つい敬意を持って丁寧に語らないと、と感じたのでしょう。作者さんはとても小説を愛しているし、言葉に注意を払ってきた人なのだろうなと、僭越ながら勝手に想像しました。
でもだからこそ本作を読んで残念だなと思ったわけです。
ここは作者視点で言わせてもらいますが……まるで良い業物を腰に差しながら、その刀で俎上の大根ばかり切っているような、そんな感じです。もったいない……。
すみません、また熱くなりました。そろそろ採点しないと。
5 この作品の続きが気になる度は……
…
……
…………
【30%】です。
40%~20%の間を取った感じです。
作者さんはとても常識人で、不器用と言っていいくらいに純粋な人なのでは? と想像しました。
そのキャラクターを作品上でも貫き通し、表現しつづけることに耐えられれば、作者さんの人間性だけでブランドになりそうなほど。でもそれだと、作品自体が高い評価を得るのは難しいと思います。とりあえず今の企画趣旨に照らすと、この結果になってしまいました。
6 読者のみなさまへ:
→本文読んでみてください。その後で、あらすじとか読んでください。願わくばこの作者さん──あけがえるさんをフォローしてほしいです。私は作品から滲み出る人間性を感じ、そんな気持ちにさせられました。
振り返ると、そういう読書体験もカクヨムの魅力なのかもしれない。
以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!
気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてくださいね!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897898836
では、次の作品紹介をお楽しみに!
尾崎ゆうじでした!
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