始まりへ

 夏休み最終日。特にやることもなくここまできてしまった。

 一応何回かは遊びの誘いがあったのだが、全て断っている。そうすることでクラスから距離を取り、関わりを減らそうとしたのだ。

 そういう意味では、この夏休みは良いタイミングで訪れたと言えるだろう。


 長い期間合わなくなれば、自然と距離はできる。そのまま有耶無耶な関係になっていくことなんて、人間関係ではよくあることだろう。


 ただ、約束である愛里との料理はさすがに続けていた。約束をしたのは今後の保険のためでもあるので、続けることはさほどデメリットにはならない。



 夏休み最終日まで、特に何もすることなく過ごしてしまったが、こういう時間も俺にとっては新鮮なものだった。

 自由というものは良いものだと、改めて実感する。


 とは言え、本当にやることがないので一眠りでもしようかと思っていたところに、大きな呼び出し音が鳴り響いた。


 どうやら来客が来たらしく、インターホンの音が玄関の方から聞こえてくる。

 特に何も考えずにドアを開けると、そこには柊峰が立っていた。


「中に入っても良いかしら?」


「あのな柊、突然押し掛けてきてそういうことを言うのは非常識すぎないか?連絡の一本くらい寄越してくれよ」


「それについては謝るわ。でも、今はそれどころじゃないのよ。とりあえず中に入れて頂戴」


 そう言った柊は、入り口に立つ俺を力ずくで押し込んで中に入ってきた。

 俺はその行動に戸惑いつつも、柊の様子からただ事ではない何かが起こったのだと察する。

 関わらないと決めていた手前、助けるのは得策ではないかもしれない。ただ、ここで手を打たずに手遅れになることだけは避けたかった。




 とりあえず柊をリビングへ案内し、お茶の準備をする。柊が落ち着きを取り戻す時間を作った後、俺は状況の把握をすることにした。


「一体何があったんだ?」


「今朝、私の郵便受けこんなものが入っていたの」


 そう言って柊が鞄から取り出したのは、真っ白な封筒だった。俺はそれを受け取り、中身を確認する。中には一通の手紙のようなものが入っており、そこには丁寧な文字で「先日の戦いはお見事でした。お会いできることを楽しみにしております。西園寺」と書かれていた。


「やられたな」


 俺は一人でにそう呟いてしまう。どうやら、思わぬところで俺の正体がバレてしまったらしい。


「…どういうこと?」


 柊は俺の反応に違和感を感じたのか、そう尋ねてきた。俺はその質問に答えるため、その紙を見せる。


「この手紙、誰に向けてのものだと思う?」


「当然、あなた宛じゃないかしら。Aクラスからしたら、あなた1人にやられたようなものでしょう?」


「そうだな。だが、Aクラスの奴らは俺の正体は知らないはずだ。だからお前の郵便受けにこの手紙を入れたんだろうな。俺の正体を知るために」


「…まさか」


「ま、後をつけられていたはずだ。多分俺の正体はAクラスにバレている」


 これについては確信がない。ただ、西園寺という女がかなりの切れ者ということは把握している。何の意味もなしにこんな手紙を送るとは思えない。


 この一通の手紙は、俺たちに新たな戦いが始まるのだと教えてくれた。この学校の日常が、明日からもう始まろうとしている。


 いや、もうすでに始まっているのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。







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お久しぶりの投稿になります。かさたです。


今回は投稿がかなり遅れてしまったこと、大変申し訳なく思っております。すみませんでした。


なんらかのバグにより、カクヨムにログインができず、執筆活動ができずにいました。


これからは頑張って執筆していきます!…と言いたいところなのですが、長らく書いていなかったもので、少し話を整理するお時間をいただきたいです。


楽しみにしていただいている方がいらっしゃいましたら、本当にごめんなさい。


より良い作品を制作するためにも、ご理解の方よろしくお願いします。


代わりにと言っては何ですが、昔趣味で書いていた小説の方を投稿するかもしれません。もし良ければ、そちらの方を読んでいただけたら嬉しいです。



かさた


 

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将来を約束された学校に入れたのに、無難に過ごすのってダメなんですか? かさた @1572kasata

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