第7話 道すがら街を見る
「14」という人の家は今いる住宅街エリアから離れた山の中にあるらしい。そこまでの道は当然、徒歩である。話によれば距離にして五キロ。機械ならそんなに苦行でもないのかもしれないが、人間である俺にとっては辛いことこの上ない。
それにしても暑い。「31」はそういうのは関係ないのだろうか。オーバーヒートとか、機械だったら起こるイメージがあるのだが。どうやら大丈夫そうだ。まぁ、俺は全然大丈夫じゃないけれど。
「自転車とか車とかは使えないの?」
「機械にとって必要ない、故に存在しない。――必要なら、私が乗って送っても構わないが……」
「何か問題でもあるのか?」
「私も電気で動く。無駄なエネルギーを消費して、途中で「消去」に出会った時、間違いなくエネルギー切れを起こす。死んでも良いなら私は止めないが」
じゃあ死んでも良いから乗せてくれ、とは当然言えない。
「でも、片道五キロだぞ? これじゃあ帰るのは遅くなるし、置いていった「7」も心配だし」
「帰りは「14」に任せてエネルギーを多めに貰って乗って帰ればいい。貰えるかどうかの確証はないが。貰えなかったら帰りも徒歩だが」
帰りもこれとか勘弁して欲しい。 まぁ、こればかりは仕方がないか。
「その「14」って何者なんだ? 変な人っていうのは聞いているけれど」
「人間の時の職業は――「発明家」と聞く。分野は知らないが、今はガラクタを組み合わせて色々なものを作っていると聞く」
森に住んでいる発明家か……確かに風変わりな感じはする。
でも、風変わりと言えばこの街も大概だ。バグだらけの世界――言うだけあって、あちこちおかしい。座標が狂っているのか宙に浮いている家が建っていたり、木が鳥のように飛んでいる。
俺の知っている常識からはやはりかけ離れている……。まぁ今更か。
街を歩いていると色々な人とすれ違う。それもどれも人間の形ではない。犬の顔をしていたり、翼が生えていたり、青い猫型ロボットみたいなやつもいた。人間の形をしているアンドロイドも珍しくは無く、俺もその一人だと思われているのだろう。
誰も何の疑いもなくすれ違う。
道も半ば、三キロくらいを歩いた時だった。立派な神社が目に留まる。こんな機械が溢れている所でも、神社なんて繁栄しているらしい。見た目は機械とは言え、中身は人間。不安に思っている人も多いのだろう。
しかし、丁度いい。神社の中には椅子とかも置いてある。休むには絶好の場所だ。
「神社で少し休憩していかないか? 疲れたよ、流石に」
「了解」
そんな流れで、神社の中に俺たちは足を踏み入れた。
バグだらけの世界でもこの恋だけは真実でありますように Melt @melt1122
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