第6話 「14」
「7」の声……良かった。無事で、本当に。
「「31」さん! 治してくれて本当にありがとうございます」
「否定――メンテナンスに重きを置く当機が、「7」を補助するのは当然。第一、君は人形を破壊するのに協力してくれた。勇気ある行動に感謝こそしろ、感謝されることは何も無い」
別に電車の中に何か現れたわけではないんだけれども。普通に歩いて人形を破壊しただけだ。俺以上に「7」と「31」の方が凄いと思う。あんなでっかいのを機能停止まで追い込んだのだ。
「あと、これは追記だが私達に敬称は必要ない。もう君は私達の仲間だ。かしこまる必要はどこにもない」
「あぁ、私が機能停止した後、君が消去にとどめを刺してくれたのか。ありがとう、感謝する」
「7」まで……そんな凄いことはしてないのに。
「大したことはありませんよ。それに……「7」に命まで助けてもらって。感謝の言葉はこっちが言うべき言葉です」
「私は見ての通りアンドロイドだ。記憶メモリーさえ残っていればこんな感じで復活できる。代替の効かない君の方を優先するのは当然だ」
でも、あれだけの大型機械が倒れてきて、一歩間違えればその記憶メモリーも破壊されていたかもしれない。きっとこの人は誰にでも手を差し伸べる事ができる良い人なんだろう。
多分、それでも色々理由を付けると照れるだろうから、俺は一言。
「……でも、ありがとう」
とだけ言った。すると、先程まで点滅していた「7」のライトが付いたまま止まる。
「あれ? 「7」? 様子が……「31」? これ何か機械の異常とかじゃ」
「否定――機械の異常はない。単純に照れているだけだと推測」
「言うな、ばかっ!」
スピーカーの形をしているせいで表情は見えないが……見てみたかった。一体どんな表情を浮かべていたんだろう。
「……話を変えましょう。私の身体っていつになったら戻りそう?」
恥ずかしい気持ちもあるのか、単純に知りたいのか、彼女はそう言った。
「不明――材料さえ揃えば三日もあれば修復可能」
「材料が足りないの? 私の元の身体は?」
「電車に潰され、使えない部品ばかりだったのを確認。最善手として「
「確かにあの人は色々な部品を集めてはいるけれど……」
そこで言葉が詰まる。
「何か問題でもあるのか? その……「14」って奴に」
「まぁ、一癖あるやつなのは間違いない。ただ……「31」一人で行かせるのは。君は行けそうか?」
「俺?」
戦いなら俺がいても足手まといになるだけな気がするけれど。
「別に……戦いに行く訳じゃないんだよな?」
「あぁ。交渉をしてくれればそれでいい」
まぁ、それなら……それに、「7」の頼みだ。
「分かった。やるだけやってみるよ」
俺はそう言った。
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