僕は光より速い風

作者 古川 奏

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★★★ Excellent!!!

 何にでもなれる力をもらった主人公が、美々ちゃんを陰ながら手助けする物語。
 恋のお話です。おそらくは毎朝繰り返されているのだろう、日々の習慣をそのまま切り取って活写したような内容で、とどのつまりは恋する少年のほのぼの日常ものです。なのかな。ほのぼのどころか明らかに大冒険してるような面もありますけど、でもこの程度の大冒険は実質ほのぼのの内というか、恋してる人の毎日なんて冒険してるようなものだとも思います。
 もう本当、読んでてとっても気持ちがいいです。「うっ」てなったり、引っかかったりするような感じがまったくない。なんでしょうこの優しさ……文章が柔らかくて読みやすくて、書かれていることが前向きで勢いがあって、登場人物の言動が瑞々しいのは間違いないんですけど、それにしたってここまで心地いいものでしょうか? なんだか『物語の内容』というよりも『主人公の体験』をそのまま浴びたような気分で、するすると一気に最後まで読んでしまいました。
 作中に出てくる文章を引用しますが、
『それは美々ちゃんがくれた力だった。つまり僕は、美々ちゃんを好きになったのだ。』
 ここが好きです。このお話の内容をそのまんま表したかのような。力をもらうことが「つまり」で好きになったことにつながる、この考え方とこの世界が本当に好き。うまく説明できないのが悔しいんですけど、ぐいぐい前に拓けていくエネルギーと優しさに満ちた、とても気持ちの良い物語でした。あとテーマというかタグにもある『擬態』的には結びの一文が最高に好きです。

★★★ Excellent!!!

食パンをくわえながら走る伝統的ヒロインの姿は数多描かれども、コッペパンを履いたヒロインというものは見たことがなかったのです。

食パンをくわえて遅刻遅刻と走るだけでもなかなかにうっかりお寝坊さんなのだからして、コッペパンを履いてしまうほどのうっかりとあれば、それはもう、いかなる惨事に巻き込まれてもおかしくないレベルのうっかりなのです。


そんなヒロインの平和な登校時間を守るために、彼女のためなら何にでもなれてしまう彼は、まさに擬態するのです。

彼は彼女の家の外壁になり、光より速き風になり、彼女のうっかりをひとつひとつ修正していくのです。


さて、そんな彼が、最後に自らやらかす『うっかり』は……。


恋は、力である。うむ。尊い。

★★★ Excellent!!!

僕は大好きな君のためなら、文字通り何にだってなれるし、何だってできるんだ。

そんな彼の一日は、美々ちゃんの家の外壁になるところから始まる。
おっちょこちょいで優しくて笑顔が素敵なあの子のために、風野くんの青春が現実を飛び越えていく。

光よりも早い風が吹き抜ける怒涛の通学路で巻き起こる、奥手な男子の奮闘をご堪能あれ。

★★★ Excellent!!!

常識を遥かに超えるような純粋さを持つドジっ子な美々。
そして彼女を見守り、そのドジをフォローする彼。
美々ちゃんの見ている世界はとても美しく、
そこに彼は『存在してはいけない』。
だから彼は、美々ちゃんが見る世界よりも速く動く。
これは、彼が人知れず彼女を見、守るだけのおはなし。