肌色は差別語か


 近年はメーカーがこぞって肌色を肌色とは言わず、ペールオレンジやうすだいだいといった長ったらしい名前で呼んでいます。今回はこの語について深く考えてみましょう。


 〈肌色と差別〉

 事をさかのぼれば、1999年にぺんてるが国際事情に配慮して肌色をペールオレンジと変更し、また2000年にはサクラクレパスをはじめとした大手三大鉛筆メーカーが、肌色をうすだいだいと改名しました。肌色にまつわる問題はかなり古くからあったようですが、果たしてこの改名は正しいものだったのでしょうか? 肌色は差別語なのでしょうか? また私たちはもはや「肌色」という言葉を使うことは無いのでしょうか?

 はっきり申しますと、特定の色を肌色と称すだけでは特定の人種の肌の色を侮蔑するような意味合いは無いので、全く(悪意のある)差別語ではありません。ただ、特定の色を肌色として示し続けるのは、確かにこの色と自身の肌色が異なる児童などにとって厄介な問題になるでしょう。だからこそそうしたメーカーは、この多様性の時代を生き抜くためにも早々と名称変更をしたのであって、肌色自体は決して差別ではありません。

 ただ、今になって人種差別云々といった話題が白熱してきて、肌色と人種を結び付け、それを差別だという人がでてきたというだけなのです。



 〈日本語としての肌色〉

 果たしてペールオレンジとかうすだいだいと言われて、どれくらいの人がぱっとその色味を頭の中で想像できるでしょうか? それがわからないという人でも、肌色と言われればピンとくるでしょうね。何となれば、それは江戸時代から親しまれてきた名称だからです。つまり肌色は未だに情報伝達性が高く、前の二つはその伝達性が低いということになります。そもそも言語というものは情報伝達を第一の目的としたツールなので、伝わらなければ本末転倒というものです。ツイッターでこの三つの名称を検索すればわかることですが、いまだに肌色が圧倒的に多く使用されています。

 また、肌色は黄色人種たる「日本人の大体の肌の色」を平均化したうえで抽象化された、大体の日本人の肌の色です。世界には様々な人種がいて、様々な肌色があるのはわかりますが、日本だけを見ればまだまだ日本人が大多数で、日本に於いての肌色はやはり大抵の場合肌色なのです。そう考えれば肌色が白でも赤でも黒でも青でもなく、この色味になったのは当たり前としか言いようがありません。当然の結果だったのです。

 


 〈肌色は使わないべきか?〉

 さて、ここまでの話をまとめると、

①肌色は差別語ではない 

②肌色は日本語に根差している

 という二つの事実が見て取れます。ただ、別に私は肌色に関して肯定的でも否定的でもありません。現代日本社会においてはまだまだ知名度が高い肌色ですが、とはいえこれからどんどん日本の国際化が進むにつれ、民衆や学校の児童の肌の色はますます多様化していくでしょう。そうした中でいつまでも剛直に肌色を使い続けるのは、差別意識を助長することにつながるかもしれません。

 そうしたあらゆることを考えるに、肌色に関して私はこう考えています。

「普段使いする分にはいいが、教育現場や公的な場所では別の名称を用いる方が適切かもしれない」

 ただこの場合、ペールオレンジとかうすだいだいといった名称はあまりに長すぎます。個人的にはもっと短く覚えやすい名称を取り入れるべきですね。昔はしし色と言われていたらしいですが、これなら人種に限らずあらゆる人間の肉の色は肌色なので、波風立たないでしょう。



 ちなみに余談ですが、私が小さいころ使っていたクレヨンを確認したところ、すでにペールオレンジと表記されていました。ただ、私は依然として肌色を肌色と言いますし、そう理解しています。これはおそらく先生や保育士が依然として肌色と言い続けていたからで、また家族など回りも肌色と言っていたためです。残念ながら名称一つでは何も変わらないということが、この一件でもわかってしまいます。

 ただ誤解しないでいただきたいのは、私が肌色という語を使っているからといって人種差別的であるということではありません。全部が全部わかっているわけでもありませんが、少なくとも生まれや肌の色によって侮蔑をしたりなどはしませんので、やはり肌色と差別が絶対的に結びつくということはありえないのです。

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