「間違いやすい日本語」か「間違えやすい日本語」か 


 この二つって妙にややこしいんですよね。こうして連体形になるとたった一語しか違いませんもの。今回は「間違う」「間違える」の違いについてです。



 〈二語の違い〉

 ズバっと言い切れば、「間違う」は自動詞、「間違える」は他動詞という違いがあります。そして普通、自動詞と他動詞はかなり簡単に分けることができます。他動詞は「~を」がつくもので、自動詞は目的語が無くても成立しますからね(自:~が開く、他:~を開ける)。


 ただ、間違える・間違うの二つはかなり微妙でして……他動詞形~を「仕事を間違う/(*)仕事を間違える」といった場合、実はどちらも条件次第で言えてしまいます。自動詞形も同様で「答えが間違っている/答えが間違えている」というのは正しい意味の文となります。というのも、「間違う:あるべき状態から外れていること」「間違える:あるものとあるものを取り違えること」という意味があるため(1)(詳しい話は省略しますが)とにかく自動詞・他動詞という枠組みが曖昧です。

 とはいえやはり意味・形に違いがある以上、完全に同じということはありません。例えば名詞形になると「間違い」の方がよく使われる傾向にあります。間違い探しとは言いますが、なかなか“間違え探し”とは言わないですよね(2)また、欲しかったゲームと違うゲームをうっかり取り違えて買った場合、「欲しかったゲームと間違えて(間違って)別のを買った」となり、「間違う」が意味的にも優勢です。もう一つ、「間違った回答」とは言えますが、間違えて買ったそのゲームを「間違ったゲーム」とは言えないことも、違いの一つでしょう。


 ……でも、ここに書いたことも人によって共感度合いが様々でしょうから、ハッキリとした違いは申し上げられません。



 〈間違えやすい日本語? 間違いやすい日本語?〉

 本題です。このままではわかりにくいので、こういう時はすこし形を変えてみましょ。「*間違えた日本語/間違った日本語」とすればわかりやすいですね? 後者の方がしっくりきます。「間違えるは、取り違える」、「間違うは、理想と違うこと」。まとめると

・「間違えやすい日本語」とは「似たような言葉をまぜこぜに使ってしまいやすい日本語」

・「間違いやすい日本語」がこの作品に出てくるような「従来の形ではない日本語」

 です! だから、どちらが正しい・間違っているということはないんですよね。「間違えやすい日本語」は少ないとはいえ「延いては」と「強いては」がごちゃごちゃになる誤用など、きちんとありますからね。


 

 〈まとめ〉

 今回も曲者でした。一つ言えるのは、近頃「間違える・間違う」の二つの差が徐々に狭まっていて、日本語話者でも正確に使い分けるのは難しくなっているということです。ただ意味の違いがある間は、とりあえず「間違えやすい日本語」よりも「間違いやすい日本語」と言っておいた方が波風は立たないでしょうし、「間違い探し」の方が優勢です。

(そういえば、「間違いな日本語」とは言いますが、「間違えな日本語」とは言いませんね。自動詞「間違う」は、形容詞形がある、というのも一つの大きな違いでした)



(1)https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/057.html

「間違う? 間違える?」NHK放送文化研究所


(2)調べたところ、この「間違〇探し」でさえ、色々と個人で分かれるそうです。

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