男と女 男性と女性



 「男・女は嫌いだ」と言い放てば、何だか粗野な印象があります。これを「男性・女性は嫌いだ」とすれば、意味はともかく少なくとも言葉の乱暴さは軽減されますね。男・女というより、男性・女性と言ったほうが直接的でなく丁寧だ、一般的にはそういった解釈がなされます。でもちょっと待って。なぜわざわざ「性別:SEX」であることを付け加えた男性女性の方が丁寧で、間接的なんでしょうか?



 〈大和言葉と漢語〉

 大和言葉をいくらか挙げてみますと、「おとこ、おんな、やま、かわ、そら、つち、かぜ、みず」と、どれも音声的には固有であるか、同音異義語があってもそれはごく一部です(花、鼻、端)。

 対する漢語はどうでしょう。「だんせい:男性・男声・弾性」「じょせい:女性・女声・助成・助勢」と、同音異義語がたくさんありますね。つまり、大和言葉と漢語の大きな差というのは同音異義語の多寡、とも言えます。



〈音声と意味〉

 そんなわけで私は、男女と男性女性の意識の差というのは「音声」にあると思っています。上記のように、大和言葉には同音異義語がほぼありません。おとこ、おんなといえば、MAN、WOMANにしかなりません。でも、男性女性といえば、音声面では男性・男声・弾性・女性・女声・助成・助勢と様々な意味の可能性があります。使用頻度や文脈で、例え「だんせい・じょせい」といっても結局はすぐわかってしまうわけですが――換言すれば漢語にあるという性質が、男性女性をおとこおんなよりも丁寧な言い方という意識を作っているのでしょう。



〈まとめ〉

 漢語には音声的不明瞭さがあり、男性女性もその性質によって「丁寧な表現」となっていると考えられます。

 ……と、ここは「間違いな日本語」でしたね。この表記に間違いはありません。では何が間違いか。私は、日本民族が慣れ親しんできた大和言葉(おとこおんな)を、「聞こえが悪い」という理由だけで言えなくなってしまう、その認識を含めて「やりすぎ(間違い)」じゃないの? と言いたかったんです。過剰すぎやしませんか、と。

 いくら言い方が粗野であったとしても、内容がきちんとしてれば私は受け入れられます。むしろ、言い方が丁寧であったとしても、内容がイケナイことだったらもちろん気にさわります。じゃあ男性女性という言い方なら何言ってもいいのかといわれれば、そんなことはありませんよね。


 つまるところ、言葉をもう少し公平な目で見てほしい、ということです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る