電気の竜


「クフフフ。さすがのあの電撃竜もこれで死にましたかねぇ……」


 暴風竜王が放ったブレスはカルディアの盾では防ぐことは叶わず、直撃した。


 たとえカルディアがイレギュラーでも所詮は幼竜。竜王相手ではまだまだ役不足。


「それにこの二体の戦いで私の“闇”が昂るぅ!」


 国によっては守護竜として国を守る象徴とも呼べるドラゴン。他の魔物に比べて知能も高く、人間と共存している種も多い。


 しかし、このアルストール王国には守護竜という存在がいた経歴はなく、この国の民衆にとってドラゴンとは魔物であり、絶対的な力であり、魔物。というイメージのほうが高かった。

 実際、人間に敵対する種がいることも事実である。

 このアルストール王国では過去に暴走したドラゴンによって襲われたという記録も残っているのも拍車をかけていた。


 この王都の悪魔によって操られた魔物の襲撃という未曾有の出来事。

 外からは魔物が押し寄せ、王都内にも魔物が現れ始めた。戦う力のない民衆たちはこれだけでも激しい負の感情に襲われるだろう。


 そんなとき突然、力の象徴とも言えるドラゴン二体が戦い始めたら?ドラゴンは巨大故に良く目立つ。 

 それに、互いの戦闘力の高さ故に建物を破壊しながら戦うのだ。

 目の前で自分たちの暮らしていた王都が破壊されていく。それをなすのは自分達では絶対に敵うわけのない力の象徴ドラゴン。


 この状況に置かれた民衆の心は等しく、


 絶望に染まる。


「ハハハッ!すばらしいぃ! 素晴らしいですよぉ! まさかここまでの負の感情を得られることができるとはぁ!」


 暴風竜王から溢れ出す禍々しい魔力。それがアインモトスの体からも溢れ出す。


 アインモトスによって生み出された禍々しい闇の触手がリスアを空中に吊し上げる。

 

 アインモトスは禍々しい魔力が集中した手をリスアへと向ける。

 その悪魔の“眼”は怪しく、さっきまでの黒とは違う“紫”の光を宿していた。


「では、あなたの持つ“鍵”。渡してくださぁい」


 アインモトスの魔力がリスアを包み込む。


「さぁて。これでこっちは時間の問題ですねぇ」


 瞬間、ブレスによって巻き上がった粉塵の中からまさに閃光と呼ぶべき一筋の光が暴風竜王へ向けて突撃した。


『いい加減……!目を覚ましやがれぇ!』





++++++++++++++++++++++



 目が覚めた。……ああ、俺はブレスを受けて気を失っていたのか?

 クッソ、体全体が死ぬほど痛ぇ。


 だが、俺はまだ生きてる。ならまだ戦える。


 魔力はさっきのブレスを防ぐのにほぼ使ってすっからかんだが、ここで引き下がって父親も……リスアもあのデビ野郎に渡すわけにはいかねぇ。


 全ての魔力で脚を武式強化で強化し、ドラゴンに向かって跳躍する。

 

 威力のことは考えるな。あのドラゴンの目を覚ますことだけを考えろ。

 これから叩き込むのは、威力のこもった攻撃のこぶしじゃない。


 親の目を覚まさせるための、息子の拳だ。


『いい加減……! 目を覚ましやがれぇ!』


 強化もなにもしてない攻撃ではドラゴンにダメージを与えれるわけがなく。微動だにもしない。

 しかし、俺とドラゴンの目は確かに合い、俺の拳は確かに父親への心へと響いた。


『あ……が、ぁぁぁあ!!』


 ドラゴンは自分を縛るものを取っ払うようにして、声を上げる。


「なっ!? ……はぁ、貴方は本当に厄介ですねぇ」


 心底めんどくさい。といった様子はデビ野郎は言い、直後嘲笑うようにして手をドラゴンへと向ける。


「先程の私ならばこのまま黙って見過ごすしかなかったのかもしれませんがぁ!今のこの大量の負の感情によって強化された私の“暗黒魔法”なら無意味ですよぉ!」


 そういうと同時に、ドラゴンの瞳に取り戻しかけていた理性の光がまた暗く塗り潰ぶされた。


 ただ、その直前……確かに俺とあいつは目が合って。


 そこには確かに父親の持つ親愛を感じた。



《進化の条件を満たしました》


《【電撃耐性】を習得しました》

《【飛翔】を習得しました》

《【竜の覇気】を習得しました》

《【電撃補正】を習得しました》

《【閃光】を習得しました》

《【ユニーク】を習得しました》

《【竜王の卵】を習得しました》


《進化による魔力の質の向上。また、特殊条件を満たしたことによるスキルの進化を行います》


《【武式】を習得しました》

《【電装】を習得しました》

《【竜の咆哮】を習得しました》

《【電撃】を習得しました》

《【武の担い手】を習得しました》



 瞬間、俺は直視できないほどの光と電流に覆われる。


 バジィッ!!


 さらに激しい光に包まれ、爆発するようにして電撃が無差別に放たれる。


 やがて光と電撃がおさまった場所には——


 全長八メートルほどにもなった、白銀の鱗を全身に纏い、吸い込まれるような金眼と赤眼。

 圧倒的な魔力を放ち、電気を纏う——


 ——この世界で唯一ユニーク


 “電撃竜”の姿があった。



名前 カルディア

種族 電撃竜

Lv.1


スキル

【電撃】【電撃魔法】【電撃耐性】【身体強化】【武式強化】【武装】【電装】【超再生】【武式】【電撃補正】【竜の覇気】【飛翔】【竜王の卵】【閃光】【ユニーク】【武の担い手】【武ノ神】【武ノ神物庫】


 

 

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ドラゴンに転生!〜せっかくなのでドラゴンを謳歌する〜 エン @EN_narou

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