閉店 あとがき

「そろそろレジ締めお願い」


 マスターがヨリ子ちゃんにそう声をかける。客のいなくなったテーブルを拭いていたヨリ子ちゃんは「はぁい」と返事をして、カウンターへとやって来た。


「今日もそこそこでしたね」

「うん。抜群にちょうど良い混み具合だった」


 そんなことを言いながら、マスターはエスプレッソマシンやら何やらの清掃をする。いくら『カフェごっこ』と言っても、これに関しては『そこそこ』ではすまない。味は技術の問題だが、手入れに関しては義務だ。マスターはそう思っている。だから逆に言えば、味の方はもうどうにもならないと諦めている。そっちはそこそこで良いじゃないか、と。お客からもそれに関してのクレームはないので、まぁ、良いということなのだろう。



 

 さて、そんなこんなのカフェ小説である。

 例え、コーヒーに関する蘊蓄が0であっても、舞台がカフェならカフェ小説だし、登場人物がそのカフェの中であれこれやっていれば、もう間違いなくカフェ小説なのである。逆にこれがカフェ小説じゃなかったら何なのだ。


 章タイトルも『キリマンジャロの焦燥』と、駄目押しのようにコーヒー豆にちなんだものにしたので、これはもう360度どこから見てもカフェ小説なのである。ただ、こういうのが書きたかったのか? と尋ねられると、当初思い描いていたものとは若干違うかもしれません、となるわけだが、良いのである。小説はナマモノなのだ。


 そもそもこのカフェ小説、元々はTwitterでの雑談から生まれたようなものである。七夕に書籍化&ドラマ化、そんでそのドラマに、カフェの常連客Aとして出たい、というお願いをしようか、みたいな話から始まったのである。で、メインの2人を食うくらいのエキストラになろう、みたいなところまで盛り上がったまでは良かったのだが、そもそもの話として、私はそんな常連客が出て来るようなカフェの小説を書いたことがない、ということに気づいたのだった。


 そうなればもう書くっきゃねぇな、となるのが作家なのだ。作家なのだ、って言い切っちゃったけれども、全然アマチュアのWEB作家である。でも、このように書きたいと思ったものを何のしがらみもなく(つまり、絶対に売れねぇと思うやつでも)書けるのが、アマチュアの強みであり、楽しさでもあると思う。


 そんな経緯で書き始めたカフェ小説、いかがでしょうか。

 これがもし、私が人気アイドルグループのメンバーだったなら、間違いなくベストセラーになって発売と同時に重版が決定するやつなのだが、いかんせんこちとら一般人のアラフォーおばさんなもので、面白いか面白くないかがもう内容のみで語られちゃうのが辛いところ。いや、内容のみで判断されるのが当たり前ですからね? さもさもアイドルが書いた小説が『アイドルが書きました』という付加価値だけで売れてるみたいな底意地の悪いことを考えているから、このようにして底辺を這いずり回っているわけである。ええ、内容で判断していただければ、全然、もう。読んでもらえただけでね、はい、本当に、すみませんでした。


 ただ、作者視点で書くというのはなかなかに新鮮なもので、ネタがあったらまだ書きたいと思う。あとがきまで書いた癖に何を言うか、って?


 いやいや、これは第1章のあとがきですから、って逃げ道もあるんでね。こうやって好きに書けるのもまたアマチュアの強みというか、書籍化のお声がかからない底辺作家の負け惜しみというか、まぁそんなところである。ただ、この話を書くにあたって、章タイトルだけは色々思いついたので、せっかくだから、続きを書きたいつもりではある。あるけれども、まずはここでお休み、ということで。


 最後に一言。


 本当は、ラブコメのつもりで書き始めたんだ。

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