取材不足でも、筆を止めない

 よく、

「徹底的に取材しないと、そのジャンルの作品を書いてはいけない」

 という声を耳にする。


 書く資格がないと。



 だが、そんな資格は誰が決めるのだろう。


 オレ自身も、歴史に明るくなかった。

 が、

「アンヌ・ド・ブルターニュ」

 の話を聞いて、彼女が活躍する話を書きたいから、書いたことがある。


 アンヌ王妃は王族でありながら、街にふらついては塩パンを食っていたらしい。


 このエピソードから、

「この王妃様が暴れん坊将軍だったら、面白くねえか?」

 と思い、当時のフランス知識ゼロからちょちょっと調べ始め、書き始める。


・アンヌ王妃は、ダヴィンチに家を貸していたらしい。

  ↓

 配下に添えよう。魔術師!


・「愛洲移香斎あいす いこうさい」というサムライが、新陰流の源流の開祖であること。

 現在フランスに、移香斎の子孫が現存なさるという話など、色々学ぶことが出来た。

  ↓

 配下に添えよう。妖刀ムラマサもたせる!(当時村正は無名のガキ)


・子沢山だったが、生き残ったのは娘二人だけ。

  ↓

 かわいそう! 娘二人は「必殺シリーズ」の「せんとりつ」ポジションにしよう!



・ラスボスは「ノストラダムスの曽祖父」に!


 など、かなりハッスルしてかきあげた。


 こんなものでいいのだ。


 当然、賞なんて取れなかった。が、すごく充実していたのを覚えている。


 あれこれ考えるの楽しい。



 それに、取材不足でもドラマを生んだエピソードで一番有名なのは、

・「あしたのジョー」に出てくる「力石徹」

 だろう。


 当時、梶原一騎氏はジョーのライバル力石を「巨漢」として描いた。

 それは、

「階級違う者同士は、リングに上がれない」

 という基本中の基本ルールを知らなかったから。


 それで、「減量」というドラマが生まれた。


 これでいいのだ。


 もし、ツッコまれても

「はいそうですか。じゃあ、こうしましょ」

 と、頭を切り替えて指摘ポイントからドラマを生み出せばいい。


 何事も、勉強しながら作ればいい。

 結局は

「そのドラマの中で、主人公が何をなし得たのか」

 が重要だ。

 それを、プロ作家はSNSなりブログなりでさんざん答えている。


「取材やりながら」書く。その上で、面白くなるなら指摘も甘んじて受ける。


「きっと面白くなるぞ!」

 と思って書いていれば、考証を指摘されたって怖くない。

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