土と岩のゴーレム
「コウッ、シールドを張れッ、敵は両岸だっ」
オキナが声を上げると両脇の崖が盛り上がって、大きな
コウが両腕を振って火属性の魔法をキャンセルし、シールドを展開しようとするが間に合わない。
バシャーーンッと大きな水飛沫が上がり、軽自動車ほどもある巨岩が両脇の崖から降ってきた。一つ二つどころではない。
ゴン、ゴロンッ、と音がするたびにバシャーーンッと水
「ロック・ゴーレムじゃっ」
サラメが口髭を震わせて叫ぶ。「
一斉に伏せると頭上をピュンッ、ピュンッ、と空を切って頭上を
パンッ、パンッとライオットシールドに弾かれて転がってきた
「当たれば死んでたな……」
「シールドを張るっ」
コウが両腕を突き出すと左右に大きく展開する。白い薄い膜が俺たちのパーティーを包み込んだ。
機関銃の様に撃ち込まれる
「ノサダさん、サラメさんよっ。どうやってあんなの倒すんだい?!」
「倒す? 馬鹿を言っちゃいかん。爆薬で足元を壊すんじゃ。倒れたところで逃げるのじゃ」
ノサダが導火線に火縄を近づけてコウへ叫ぶ。
「ワシが合図したら、シールドを退けてくれっ。奴らの足元を吹き飛ばすっ。破片が飛ぶからライオットシールドは支えて置いてくれよっ」
軽自動車ほどもある巨岩が人型に化けた連中だ。
「大丈夫だろうなッ?」
俺が念押しする。シールドを外した途端にさっきの
「そんなもん、神様に祈るしかあるまいてっ」
サラメがもう一体爆薬の筒を口に加えて、連続で投げ込む気の様だ。
ノサダとサラメが顔を見合わせて頷く。
「今じゃッ」
ノサダの声に合わせてコウがシールドを解除する。
ジジジッ、と音を立てて火縄の火は導火線に乗り移った。
「ホレッ!」
手にした爆薬をロックゴーレムの足元に投げつける。
口に咥えた爆薬にも素早く火を移すと同じ要領で次々に火を移しては投げ込んでいく。
「四、三、……」口をモゴモゴ動かすと「伏せろぉッ」
と地に這いつくばった。
ドドーーンッ、と爆音が響くと河原の石が吹き飛び、ライオットシールドがバチンッ、パチンッと音を立てた。
「「「やったか?」」」
そろりとライオットシールドからノサダが外を伺う。
吹き飛ばされたロックゴーレムたちが見える。
「「「オオッ」」」
歓声をあげようとしたその時、吹き飛ばされたその体が分裂し、あたりの岩をゴロンゴロンッと取り込んで復活して行く。
さっきが十体くらいだったのが、倍の二十は軽く超えている。おまけに両脇から岩が転がり落ちてきて人型を形成し始めた。
「さ、三倍になりやがった……」
モンがゴクリと生唾を飲み込んだ。
「ブォォォォォッ!」
ロックゴーレムの咆哮が響き渡ると、ダダダッと口から機関銃のように
「ダメじゃねぇかっ!」
リョウがさっきの威勢は影を潜め必死に
「だから言ったじゃろッ。神に祈るしかないって」
ブライドが少し傷ついたのかサラメが言い返してきた。
「リョウ、サラメさんよッ。言い合いしてる場合じゃないだろっ。ともかく盾に出来る物陰を探してくれっ」
俺が這いつくばりながらナナミにじり寄る。
ナナミの体を庇いながら全方位に索敵を展開した。
(どこかナナミだけでも身を隠せる場所はないか?)
飛び回る
ピュン、ピュンと空を切って押し寄せる
「クッ!」
押し殺した悲鳴が上がる。
見るとオキナの腕が血に染まっている。
「オキナッ!」
コウが悲鳴を上げてオキナににじり寄る。
「私は良い。早くシールドをっ」
オキナの声に我に帰ったコウが両手を展開した。白い膜がかかり、
「こんな……。こんな初期魔法ごときに……」
コウの顔色が変わった。
まずいぞ。切れたなこりゃ……。
コウがすっくと立ち上がるとロックゴーレムを睨みつけた。
「消し炭にしてあげる」
そう言うと両手を下に向けて、ゆっくり上へ手を伸ばして行く。
ズズズッ、と地の底から魔力が吸い込まれて行くのがわかった。
「コウッ、渓流ごと吹き飛ばす気かッ?! 両脇は崖だそッ。生き埋めになっちまうぞ……」
って言っても耳に入っていない気がする。
「ボルケーノッ!」
地響きが始まった。
グラッ、と足元が揺れる。先ほどまで押し寄せようとしていたロックゴーレムがゴロンと転がると立ち上がれずにもがいている。
ジジジッと鉄が焦げる匂いがした。
と、ロックゴーレムのいる足元の地面がひび割れて行く。
「グォォーーーッ!」
死の絶叫を上げて、地割れに飲み込まれるロックゴーレムたち。それでも割れた地面の両脇に必死に逃げている。
「ブローアップッ、
コウが勢いよく手を振り上げた。
割れた地面から焼け爛れた火山弾が、ミサイルの様に吹き上がってきた。
バンッ、バンッ……パァァァァンッ。
無数の火山弾が打ち上がりロックゴーレムたちを宙に舞い上げた。
一面がオレンジ色の光に包まれ、連続で響き渡る音で鼓膜が破れそうになる。
目で追える範囲でもロックゴーレムたちは、木の葉の様に舞い上がったかと思うと粉々に千切れ飛んでいた。
俺たちを覆うシールド以外の全てが業火に飲み込まれジュウジュウと音を立てて崩れ去っていく。
「あっ、熱っ!」
「お、俺らも死ぬ……」
「アイスシールドッ」コウが一声すると青白い光が天に伸びて行き、あたりを照らし始めた。
ボ……ッ、ボボ……ッとか細い音を立てて、あちこちで燃え盛っていた火が収まって行く。
気温にして五十度は越えていたあたりの気温も下がっていった。
残された景色は吹き出したマグマで真っ黒になった元渓流の跡。
「なんとも……。なんとも……ハァ」
ノサダとサラメが口をアングリと開けたまま、ペタンッと座り込んだ。
俺を除く全員が同じように口を開けて、目の前の光景に見入っている。
「オキナッ、今ポーションをつけてあげるっ。痛かった? オキナッ」
コウはオキナに寄り添って甲斐甲斐しく世話を始めた。
「(コウさんを怒らせちゃダメ……)」
小声で囁く誰かの声に全員が頷いた。
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