第46話 ふ り だ し
「それとっ、セキニンとってくださいね」
「なんの?」
「乙女の体まさぐったでしょっ。もうお嫁に行けないからッ! セキニンとってくださいッ」
はぁぁぁぁぁぁーっ?!
◇◇
シュッ、カキンッ!
槍のように全身を硬化させ飛びかかって来る魔獣を叩き落した。蛇のようだが普通の蛇にここまで攻撃性はない。魔素もないのに魔獣化している。ますますこの
「コウヤさま」
俺は全身からサーチを放ち索敵する。
シュシュッ、カキンッ、カスッ!
今度は二匹来た。一匹は叩き落したがもう一匹は仕留め損ねた。ガサガサ逃げてゆく。
奥の方に何かいる!? 奥から緑色をした一つ目のバケモノが現れた。
「コウヤさま〜ッ」
でかい......。身長は2メートルはある。でっぷりと太って見えるが全身を筋肉の
「コ・ウ・ヤさまったら〜!」
でかい上に重さもある。こんなヤツには距離を取って削れる
俺は左手のバックラー(海亀)を前方に
「ねぇっ、コウヤったらぁ」
一瞬ヤツもたじろぐ。向こうからすれば
「こ・う・や ♡」
「うるさいんだよッ、さっきからさらっと呼び捨てにしやがってッ。この状況が見えねえのか?!」
「だってお返事しないんですもの!」
「グワァアガァア!」一つ目が襲いかかって来た。人の背丈ほどある棍棒に円錐の
ブンッ! 凄い風切り音だ。斜め後ろに飛び退った。
ブンッ、ブンッ、ブーンッと追いすがりながら棍棒を振り回す。こんなのを剣で受けては弾き飛ばされるだけだ。
(一瞬だ。一瞬の
「コウヤったらぁっ」
「グワァアガァア!」真っ赤な口を開けて耳をつん裂く咆哮を上げながら襲ってくる。
「フンッ!」
ナタで薪を叩き切る様に、棍棒を大きく振り上げ襲っていたソイツの土手っ腹を俺の剣先が穿った。 緑色の血を撒き散らしながら崩れてゆく。
やがて光を発しヤツは消えたーーー。
「ねぇっ、コウヤ!」
「危機一髪の状況でなんだよっ? それとさっきからなんなんだよッ、既成事実あるんです的な馴れ馴れしさわっ」
「コウ様から文書が届いています。それとこれが私たちの婚姻届けです。サインをお願いします」
俺はサラの婚姻届けをビリビリに破くとコウからの文書に目を通した。コウに以前頼んでおいた調査内容だ。
魔人の言い残した言葉「マオーーー」について。
それと魔人化された犠牲者の『魔人化』について。
やはりいずれも不明とあるが、文末に気になる文書が添えられていた。
『マオについて。
ってもなぁ......。部族長カイの手がかりだけでも欲しいところだ。ここまで来て手ぶらでは帰れない。
不意に甘い香りが漂ってきた。
キャンディ系かローズ系のコロンの香りに似ている。なんか変だ。ボーッとしてきた。
「いらっしゃい。勇者コウヤ。まだお会いはしたくなかったけれどーーー」
声のした方を見た。
「カイのことでいらしたのですね」
そこから甘い香りと鈴を震わせるような声がする。サラに危険を知らせる為に振り返ると既に居なくなっていた。
「あいつ俺が危なくなると消えやがるッ」
ブツクサ言いながら中を伺う。
「失礼するよ。聞きたい事があるんだ」
危険だッ、危険だーーーー本能が警告する。コイツは危険だ。ぼんやりとした明かりに目が慣れると、目の前には女が座っていた。
濡れたような黒髪に、吸い付くような白い肌憂いを帯びた目は黒目がちで俯くように俺を見ている。小振りの鼻の下には真っ赤な唇。やがて口角を上げて白い歯が溢れた。
白いレース地の裾を少し上げると椅子から立ち上がってきた。
透けて見える体の線は、肩からウエストに絞られてゆきまた臀部へと大きく膨らみ足下に向けて見事に細く収まってゆく。
「あんた。マオーーーマスターマオかい?」
女はふっと笑う。
「さぁ? どうでしょう。でも興味があるのはカイの方でしょう? カイはまだ生きています。『風の民』の方々も。今はそれしか話せません」
ッと手を伸ばす。
突き飛ばされた。ゆっくり後ろに倒れ込む。地面に頭がぶつけるかと思った刹那◎と+の模様が展開し転送されてしまった。
慌ててあたりを見渡すとそこが風の民の集落とわかった。サラも一緒だ。
(これでまた
頭の中でカンカンと音がする。
いい女だったがありゃあ......危険球だ。当たれば一髪で退場するクラス。
そしてまた俺は振り出しに戻った。
次回 な ぞ
俺は一つの答えに行き着く!
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