第45話 ど う か

 「ナナナナッンダッテンダァァー!?」

 ビリビリに感電して剣を落とした!


 「なぁぁぁぁぁぁー!」


  フシューーーーッ


 パチパチとはぜる音。松ヤニの焦げる

ような匂い。

 何よりこたえるのは体中這い回る痺れだ。

 いやな魔法を使いやがる。


 「ふッふふふ! 楽しんで頂けましたかぁ?

まだまだワン・フレーズ終わっただけ。もっとテンポを上げていきましょう」


 ポマードでカッチリ固めた髪を撫ぜつけて

マジシャンのように腕をゆっくり前に揃える。

 小指から折りたたんだ指をクルリとひるがし手のひらをこちらにかざすと指先から小さな光体が浮かび上がった。


 「ダブステップ!」

連続で打ち込まれる光体が地面に這い回り雷撃を突き上げてくる。


 パリパリ! パリ!

 パパパパーーン!

 パンパン! パンパン!


爆竹の爆ぜる音のような音と襲ってくる雷撃に感電し、操り人形のように体がくねる。


 はわわわわーッ 

 んつああーッ!


 意図せず頭がシャウトし意識が飛びかけた。


 ばたっとサラが倒れた。

 畜生! もう許さねぇーー!


 「集え。集え。わが盟友たちよ。

 その力を我が身と我が剣に与えたまえ。

 我が身は金剛!

 我が剣はイカズ......」


 バチーン!

 「んがッ!」

 詠唱を始めた途端、雷撃を喰らう。


 「おおっと! 危ない、危ない!

 その技は見せて頂きましたよ。風の民のお仲間と一緒だった時でしたぁ。

 視覚共有は魔人の特技でしてね。

 はははっ! 残念ですが通用しません」

 ガント・レットは一頻ひとしきりブレイク・ダンスを踊るとパチパチと放電を始めた。


 なんだそりぁ...... 。

 いい気になりやがって!


 『亀ー【縮地!】』


 甲羅が輝きだし足元の地面が歪んで波打った。

 絨毯を手繰り寄せるように押し寄せてくる。

 【閃光突破!】


 ブォン! 疾風を巻き上げてヤツの視界から消えた。


 「おや? 消えた?」

 ガント・レットが見回すが捕らえきれてないようだ。

 先ほどから200m後方に下がり岩陰に身を隠す。小脇にサラを抱えていた。気を失っているサラをそっと横たえる。


 装備を手早く探る。剣を落とした。何か武器になるものはないか?

 何かーーーー ⁉︎

 サラの冒険者用装備に結束用ワイヤーがあった。あと解体用のナイフ。

 ワイヤーの一端は輪っかになっており片方を輪に通し引っ張ると締め付ける構造になっている。

 ワイヤーのもう一端をナイフに結び付ける。

 心許ないが剣を拾うまでの

 時間稼ぎになれば良い。


 「んー。ふふふーーーおや? そんなところにいましたか? 勇者様」

 ニタニタ笑いながら近づいて来た。

 ベストのポケットから黒い塊りを引き出す。

 「勇者様たる者逃げちゃぁダメでしょ?」

 右手をゆっくり頭上に掲げる。

 ヤバそうだ。


 『亀ー【縮地!】』


 甲羅が輝きだし足元の地面が歪んで波打った。

 絨毯を手繰り寄せるように押し寄せてくる。

 【閃光突破!】

 高速でちかずくと結束用ワイヤーを投げつけた。

 シュ!

 振り上げた右手に絡まり黒い塊りが溢れ落ちた。

 ブワンッ!

 結界が広がる。

 閉じ込めて痛ぶるつもりだったのか?

 とことん気にくわねぇヤツだ!

 フン!

 結束用ワイヤーを思い切り引っ張る。

 「ぐわッ! 手、手が千切れる!」

 絡まったワイヤーの先端が引き絞られ右手を絞りあげていた。

 痛みに耐えかねて引き寄せられて来た。

 「なーんてね!」

 ガント・レットはニヤリと笑い左手を広げ雷撃の球体を出現させた!

 「じかに喰らいやがれッ」っと左手を押し付けようとして来た。

 「フン!」

 左手をくぐるとたわんだワイヤーを手早くガントに巻きつける。

 そのまま背中側に周りこむとついでに首にも巻き付けてやった。

 「ぐわッ く、苦し、かッ」


 魔石はここら辺に内臓されているんだったな?


 解体用ナイフを深々と差し込んだ。

 「ぐわーーッ」

 悲鳴を上げて雷撃をまき散らす。

 ヌヌヌヌヌヌッ!

 「さんざん痛ぶってくれたじゃねぇか。

 こいつはサラの分だ!」

 被弾しながら突き上げる!


 ワイヤーを伝って電流がガントに這いまわった。

 かかかかかぁー!

 ガントの体から煙が立ち昇る。


 パキッ!


 魔石が割れたようだ。

 「グホォッ」

 白目をむいて崩れ落ちた。落としたミスリルの剣を拾い上げガントにとって返す。


 「なぁ! まだ生きてるんだろ?

 さっきの魔人もそうだったもんな。同化協会ってなんだ?教えてくれたら助けてやる」

 ポーションストッカーから上級ポーション

を取り出して見せる。


 「ま、魔人と。に、人間の同化だ!

マスター、ま、マオ様が、ひとを導く......」


 パスッ!ガント・レットの首筋にナイフが突き立っていた。

 素早く飛び退いて周りを見回す。


「サラ? 大丈夫だったのか?!」

 サラが立っていた。

 「危なかったですね! コウヤ様!

こいつら生き返るから油断できない!」

 フンス!と胸を張って反り返る。

 ガントを見る。口から緑の血を吐いて絶命

していた。

 くそっ!ーーー聞きそびれた!

 んーーー?!

 なーんかタイミング良すぎねぇか?


 「それと! セキニンとって下さいね!」

 なんの?

 「乙女の体まさぐったでしょ!

 もうお嫁に行けない!セキニンとってくださいーーッ」


 はぁぁぁぁぁぁーっ?!


次回 ふ り だ し

俺は 慌てる!

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