第37話 ま も の

 突然目の前の空間が歪んだ。

 ◎と+の組合せた魔法陣が浮かび上がる。

「魔人だ! 散開しろ!」

 ナナミが声を上げる!


 たちまち五騎が魔法陣から距離をとり

弓をつがえる。

 ナナミが魔法詠唱を始めた。

 ふーん!

 この子が頭を張れるのは火力持ちだからか。


 「コウヤ! ここはオレたちが引き受ける!

 北へ走れ!! 身を隠す岩場がある。そこで落ち合おう!」

 ナナミがバスケットボール大のファイヤ・ボールを中空に発生させて叫んだ!


 魔法陣の中から黒い塊りが現れた。


 フシュー!

 フシュー!


 ガスマスクを被ったソイツは両腕に大きなナタをぶら下げていた。


 フシュー!

 フシュー!

 息をするたびに耳障りな呼吸音を漏らす。


 なんだ? コイツ?


 両手をパッと広げてナタを投げつけて来た。

 グルグルと旋回しナタが飛んでくる!

 俺はミスリルの剣を抜き放ち叩き落とした。


 が、叩き落とした筈のナタがヤツの手元に吸い寄せられるように戻ってゆく。


 「何をしている?! 弓を放て!」

 ナナミが仲間たちに声を張り上げた。

 我に帰った仲間たちは矢をつがえ一斉に魔人に向けて放たれた。


 シュッ! シュタタタタンッ!


 全ての矢が命中したーーー筈だった。

 魔人の目の前で矢は空中で止まっている。

 シュゴー!

 シュゴー!

 不気味な呼吸音が響く。


 「くらえ! 【ファイヤ・ボール】!」

 ナナミが投げつけたバスケットボール大の火の玉が大きく広がり魔人を包んだ!


 ブォン!


 魔人がナタを一振りする。


 ーーーえ?


 取り囲む炎が弾け飛んだ!


 「バケモノだ!」

 ハンとコビンが騎馬に鞭を当て逃げ始める。


 バッ!

 ナタを持つ両手を広げると魔人は手にしたナタをハンとコビンに投げつけた。


 シュ!シュ!シュ!


 ガン! カキーン!


 俺は二人の前に立ち塞がりハンを襲ったナタを叩き落とし、コビンにはシールドを展開しナタを弾き返していた。


 ふぅー!

 あっぶねぇ!!


 ゾロリ......ゾロリ。

 地に落ちたナタはまたヤツの手元に戻ってゆく。


 「どうする?」

 ナナミを見る。

 顔色は青ざめ唇は微かに震えていた。

 「に、逃げろ! みんな殺される! 逃げろーーー!」


 ヤツが身体をマリのように縮め両手のナタを上空に高く放り投げた。

 シュ シュ !

 シュル シュルルルルーッ!!


 巨大なナタが旋回しながら逃げる影を追い込んでゆく。


 「間に合え!」


 足元には魔力を集中したのか砂埃が立ち始める。


 『亀ー【縮地!】』

 甲羅が輝きだし足元の地面が歪んで波打った。

絨毯を手繰り寄せるように押し寄せてくる。

【閃光突破!】


 ガン! ガン!


 俺はナタに追いつき叩き落す!!


ゾロリ......ゾロリ。

ナタがヤツの手元に戻ろう動き始めた。


 もう、頭に来た!

 容赦はしねえ!


 「集え。集え。わが盟友たちよ。

 その力を我が身と我が剣に与えたまえ。

 我が身は金剛!

 我が剣はイカズチ。

 我が名はーーー軍神アトラス!」


 体は金色の光に包まれる。

 我が身を媒介にして勇者の力と

 軍神アトラスを憑依させる究極の魔術だ。


 【神速! フラッシュソード】


 ズッガガガッーーーーン!!


 魔人は賽の目切りに切り刻まれ地面に倒れ伏していた。


 ドクドクと緑色の血が流れ出る。

 ガスマスクを蹴飛ばした。


 息があるのか?


 ガスマスクの下からは髭だらけの男の顔が現れた。

「 マスター、マオの世界が、やがて世界を

覆い尽くすーーーマオの世界、が......」

 謎の言葉を残して息絶えた。


 なんだってんだ?!

 不気味なヤツだった。


◇◇


 集落に着いた。

 想像以上に広い。

 遊牧民族にありがちなゲル(テントの大きな

ヤツ)が二十戸ほど。

 遊牧民集落にしては大所帯だ。


 ちょっと待たされ一番立派なゲルに案内された。


 「ナナミが助けていただいたようですね」

 しっとりとした雰囲気が当たりを包んだ。


 「ナナミの母キタエ・ムラド・ルイです。」

 和服の似合いそうな古風な顔立ち。

 色白な肌にスゥと書いたような細い眉。

 睫毛が長いせいなのか瞳には影が差す。


 形の良い小鼻の下にはいつも微笑みを浮かべた薄い唇が微かに溢れる白い歯を恥ずかしげに隠していた。


 から〜ん♪ から〜ん♪

 ストライーーク! ストライーーク!

 ド・ストライーーーーク‼︎

 ノック アウト‼︎


 またしても謎の判定が脳内に響き渡りポカンとした俺をナナミとサラが不思議な顔で見つめていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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