第2話
統合暦 3016 11月26日 フロステラ
「サラ様! 危ないのでおやめ下さい!」
私と同じ服を来たメイド2人がサラ様と呼ばれている女の子を追いかけている。女の子は猫を抱えている。
「今猫を抱えているのが、この御屋敷のお嬢様のサラ様です。旦那様と奥様は外出中で、来月帰ってくる予定です」
「元気なお嬢様ですね」
「元気すぎます。少しは落ち着きを持って欲しいです」
「それは大変な」
広い御屋敷は3人で鬼ごっこをしても全然問題がない。
「髪の毛の長い方がマヤ。髪の毛の短い方がリリーよ」
「マヤさんに、リリーさんか……」
「さん付けはいらないわ。私のことも呼び捨てでいいから」
「わかりました」
呆れた表情で鬼ごっこをしている3人のことを見ているエリカ。
「いい加減にしなさい。新しいメイドを紹介します」
大きな、とても良く通る声で3人はその場に止まった。サラ様は猫を抱えたままエリカの目をみている。マヤとリリーは下を俯いていた。
「新しく入ったマリーです。新人さんなので色々なことを教えてあげてください」
「「はい!」」
「サラ様。間違ってもマリーをいじめないでくださいよ。」
「わかってるわよ!」
「それでは私は今から外へ買い物へ行ってくるので、マヤ、リリー、マリーに教えてあげてね」
「「かしこまりました」」
エリカを見送ったあと、マヤとリリーはこの屋敷の案内をしてくれた。部屋の数が沢山あり、御屋敷も広いので覚えるのが大変だ。
サラ様は自室に戻り、家庭教師と一緒に勉強をしている。
「やっぱり、サラ様のメイドは大変だ」
ぐちゃぐちゃになった髪の毛を整えるマヤ。
「ほんとそれ。私もう辞めようかな」
洋服を整えるリリー。
2人はサラ様に不満があるようだ。
「マリーは知らないから教えてあげるけど、あのお嬢様はわがままで大変だよ」
真剣な眼差しで私のことを見つめるマヤはとても怒っている感じがした。
「他のメイドはいらっしゃらないのですか?」
「旦那様と奥様に着いて行ったメイドと、あとはバイトのメイドがいるよ」
「私たちは住み込みね。他は全員バイト。バイトの子はサラ様のわがままに疲れてやめちゃうんだよね」
どれだけサラ様はわがままでわんぱくな子なのか分かった。
私、大丈夫かな?
午前中の仕事や午後の仕事を口頭で教えてもらい、最後にサラ様のお部屋の前に来た。
勉強の時間が終わるとティータイムになるらしい。リリーと一緒にお茶とクッキーを運ぶ。
「失礼致します」
リリーの後に部屋に入ると、The・お嬢様という部屋が広がっていた。
「お茶をお持ち致しました」
リリーに教えてもらったとおりにクッキーをテーブルに置く。誰でもできるこの作業に緊張して手が震えているがクリアできた。
お皿から手を離した瞬間、サラ様に手を捕まれた。
「お姉さん、後で遊びましょ?」
サラ様は満面の笑みを浮かべながら私に言った。
「喜んで!」
部屋を後にした私たち。リリーは顔を真っ青にしながら、
「頑張ってね」
と言った。
◆◆◆
「失礼致します」
ロックをしてからドアを開けると待ってましたと言わんばかりの顔で出迎えてくれたサラ様。
「マリーはなんの魔法が得意?」
魔法と聞いてクエスチョンマークを頭に浮べる私。魔法って空飛んだり、時間を巻き戻したりするやつ? ままままさか、この世界にも魔法が?
「魔法って……?」
「治癒魔法とか、攻撃魔法とかなんでもいいわ。見せてちょうだい?」
「あの、魔法ってどう使うのか分からないのですが」
「何言ってるのか分からないだけど。みんな簡単な魔法だったら使えるのよ?」
そう言われて、私はクエスチョンマークがまたひとつ増えた。
ド天然メイドのゆるふわ戦記 瑞音 @mizune-neko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ド天然メイドのゆるふわ戦記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます