第2話

しばらくはがんばって続けていたけれど、だんだんと毎日たくさんの字を書くのがめんどうになったぼくは、教科書は「き」ノートは「の」と短くして書くようになった。

それでも忘れ物はしなくなった。ちょっぴり自信がついたぼくは、おかあさんにたのまれるおつかいのメモも、自分で書くようになった。

 

おかあさんが「砂糖」とか「たまご」というのを聞いて「さ1kg」とか「た1パック」と書いていくのだ。だけど、たのまれるものはいつもほとんど同じなので、そのうちにkgとかパックも書かないようになってしまっていた。

 

ある日、おかあさんがぼくにおつかいを頼んできた。

ぼくが、ここのところずっと忘れ物をしてないから、ごほうびにビーフカレーを作ってくれるというのだ。

いつもはポークカレーだからすごくうれしい。

ぼくはさっそくメモを書いた。

頼まれたのは「牛肉300g・にんじん2本・たまねぎ3個・じゃがいも2個・カレールー1箱」だったので、メモにいつもどおり書いていった。

 

ぎ300

に2

た3

じ3

か1

 

そうして小雨が降っていたので、メモとお金ををポケットに入れて、カサを持って玄関をでた。

玄関のドアがとじる前に、おかあさんが「カサを忘れて帰っちゃだめよ」といっているのが聞こえたので「は~い」と返事をした。

 

スーパーについたぼくは入口にカサをたたんで立て、レジかごを持って店内をまわった。

「牛肉…300gと、に…にんじんは2本。た…はたまねぎだから3個で、じ…じゃがいもだった…は3個。お肉・・・もっと入れてほしいんだけどな。あとは「か」・・・なんだったっけ。か・か・か…あ!カサ忘れないでって言われてたんだ」

そうしてぼくは、レジで支払いをすませて買ったものを袋に入れてもらい、入口に立てていたカサをもって家に帰った。

 

「ただいま~。今日はカサ忘れなかったよ。」

おつりとレシートと買ってきたものを台所にいるおかあさんに報告した。

おかあさんはビニール袋の中身を出しながら、ほめてくれた。 

「おかえりなさい。カサ忘れなかったのね。えらかったわね。って、あなたカレールーは?」

 

 

 

!!!忘れた!

 

 

 

その日の夕ご飯は肉じゃがになった。

 

 

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カレーライス 奈那美(=^x^=)猫部 @mike7691

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