一年越し

尾八原ジュージ

一年越し

 私の通っていた小学校では、毎年7月になると、校舎内を解放した七夕祭りが開催される。夕方から各教室にちょっとした出店やミニゲームが並び、夏のひとときを賑やかに過ごすのだ。


 私がこの小学校に転校して初めての七夕祭りの日、綾ちゃんという子が真面目な顔でこう言った。


「もし赤い浴衣の女の子を見たら、名札をつけてるかどうか確認してね。もしつけてなかったら、ついてっちゃダメだからね」


「なんで?」


「その子は七夕の日にしか出ない幽霊なの」


 前についてった子がいるんだよ、と綾ちゃんは言う。その子は色とりどりの七夕飾りが飾り付けられた校舎内を、赤い浴衣を追って駆け回ったが、なかなか捕まえることができなかった。そのうち、いつの間にか元の場所に戻ってきてしまった。


 諦めて皆のいるところに行くと、大騒ぎになった。


「一年経ってたんだって。その間、その子はずっと行方不明だったの」


 ほんとだよ、と付け加えた綾ちゃんは、4年生の夏に突然いなくなって以来、行方がわからないままだ。

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一年越し 尾八原ジュージ @zi-yon

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