とある競馬事情

@tabizo

とある競馬事情(Certain Horse Racing Situation)

とある外国で競馬の重賞レースが行われた。

私は今回初めて、海外競馬に挑戦する。

昨今はインターネットで海外の馬券も手軽に購入出来るようになっている。

それならちょっと買ってみようとなった訳だ。

でも、私はかなりの負けず嫌いであり、ゲン担ぎもするので、最初に購入する海外のレースで馬券を外したくなかった。悩んだ挙句、1番人気の馬から馬連で流して買うことにした。

1番人気は良血馬だが線が細い芦毛の馬だった。

この馬から10点、10頭立てのレースだからいわゆる総流しってやつだ。

馬連は1着と2着が選んだ馬の組み合わせであれば的中になるので1番人気のこの馬が2着までに入ってくれれば当たり!ってことだ。ただ相手の馬も人気の馬だったら、配当的に獲って損、競馬用語でトリガミという結果になる。

まぁ、今回は当てることに重きを置くので配当は気にしない。

運よく人気薄の馬を連れてきてくれたら儲かって笑いが止まらないかも、ヒモ穴ってやつやな。


無事馬券も購入出来たし、後はレースが始まるのを待つだけだ。

いよいよ時間となり、ゲートが開き一斉に馬たちが走り出す。

1番人気の馬は押し出されるように先頭へ。

私はテレビに向かって興奮して叫びながら観戦した。

結果は、1番人気の馬が最後は独走状態でゴールし、見事に勝利した。

勝利騎手インタビューの“冒頭”で、勝った騎手は複雑な笑顔で言った。

「今回は思いのほか楽勝でした。他の馬が勝つ気がないかのようにも感じるくらい。

ゴール前で振り返ったら追いかけてくる馬が何もいなかったのですから…」


レース後の調教師の“コメント”は次の通り。


A調教師「うちの馬の敗因は一言で“Fail”だったね、ゲートを出るのを失敗して出遅れた挙句、途中でレースをやめてしまうんですから」

B調教師「うちの馬の敗因は一言で“Idle”かな、うちの馬の怠け癖が出て最初からやる気なく走っていたかと思うと、途中でレースをやめてしまうんですから」

C調教師「うちの馬の敗因は一言で“Xenophobia”だろうね、レースに自国の馬以外の馬も出走していたけど、うちの馬は人間でいう外人恐怖症でね、パニックになり途中でレースをやめてしまったんですから」

D調教師「うちの馬の敗因は一言で“Easy”だ、もともと呑気な性格の馬だったんだけどゆっくり走りすぎてついていけず、やる気なくして途中でレースをやめてしまうんですから」

E調教師「うちの馬の敗因は一言で“Deceleration”だったね、3コーナーで上がっていこうとした時に、進路をふさがれて減速していまい、それでペースを崩してやけになり騎手を振り落としてしまったんですからね」

F調教師「うちの馬の敗因は一言で“Gasp”だね、前の馬についていこうとして飛ばしすぎたため、最後は息切れして、疲れてレースをやめて止まって休んじゃうんですから」

G調教師「うちの馬の敗因は一言で“Ache”だわ、調教の時にどこか痛めていたんですかね、途中で足元を気にして痛そうにしてたし、最後は騎手も大事をとって途中で下馬することになってしまったからなぁ」

H調教師「うちの馬の敗因は一言で“Mental”だろうね、うちの馬は精神的にモロい面があって、勝負所で勝ち馬のオーラに負けて萎縮して走るのをやめてしまうくらいだからね」

I調教師「うちの馬の勝因は一言で“Earnest”だろうね、うちの馬はスピードやパワーはまだまだだけど、とにかく真面目で最後まで一生懸命走ってくれるので今回の結果につながったんじゃないかな」


レース結果を表示する画面を見ていた私は、歯ぎしりしながら吐き捨てるように言った。

「なんて面白くないレースだ!」

そう、このレースでゴールしたのは一頭だけで他の馬は途中で競争中止してしまったために馬連の馬券は的中の対象外になっていたからだ。


<おわり>

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